財政難図書館、不要本に埋まる 寄贈募るが多くは廃棄(朝日新聞)
公立図書館がジレンマに陥っている。財政難のため最近は、貸し出し希望が多いベストセラー本も多数は購入できない。そこで市民から寄贈を募っているが、持ち込まれるのは引っ越しなどで不要になった本が多く、そのまま廃棄されるケースが多いのだ。関係者からは「図書館が本の処分場になっている」との嘆きも聞かれる。
「引き取りは遠慮させてもらうかもしれません」 甲府市の市立図書館の男性職員は、80代の女性宅を訪ねてそう説明した。本棚には、亡き夫の「形見」の本が200冊以上。「もったいなくて捨てられない」と寄贈の申し出を受けたが、引き取ったのは50冊だけだった。「専門的な教育本などが多く、図書館向きでなかった」という。
同図書館が本の寄贈を広く市民に呼びかけ始めたのは、昨年7月。この1年間に数千冊の寄贈の申し出があったが、蔵書になったのは約千冊にとどまった。千葉県の市川市中央図書館には昨年度、約3万冊が持ち込まれた。そのうち蔵書になったのは約6千冊。その他の2万4千冊の大半はリサイクル市に提供し、一部は廃棄した。「寄贈のピークは3〜5月。引っ越しシーズンなんです」と担当者は話す。処分されるのは、汚れや傷みが目立つ本。専門書や事典、マンガも多いという。
公立図書館が本の寄贈を募る背景には、自治体の財政難がある。日本図書館協会によると、公立図書館1館あたりの本などの購入費は、ピークだった93年度の1617万円から07年度は1020万円に。「予算が減って、5、6年前から寄贈を募る図書館が増えた」(事務局)という。特に集めたいのが、貸し出し希望の多いベストセラー本。経営の効率化が進む図書館では購入図書も厳しく精査され、同じ本は何十冊も買えないからだ。
神奈川県秦野市の市立図書館は「貸し出し予約が集中している本を寄贈いただけると助かります」と昨年12月からホームページで呼びかけている。07年度の本・CDなどの購入予算は2162万円で、03年度の3463万円から4割近く減少。ここ数年は、「どんなに人気がある本でも、同じ本の購入は10冊程度まで」と徹底されている。
同図書館の「予約ベスト10」(11日現在)をみると、「ホームレス中学生」(田村裕著)は、所蔵11冊に対し予約137人。「流星の絆(きずな)」(東野圭吾著)は、所蔵10冊に予約130人。借りるまでに半年かかる本もあるという。だが、こうした人気がある本の寄贈は「残念ながら少ない」と担当者はいう。
なぜなのか。ある図書館の職員は「本を寄贈する人は本が好き。捨てることに罪悪感があるから、読まない本を図書館に持ってくる」とみる。別の図書館職員も「図書館が本を捨てるのを代行しているようなもの」と嘆く。ただ、寄贈された本を蔵書にするには、分類や表紙のカバー加工が1冊ずつ必要になる。公立図書館は職員減も進んで「これ以上、業務は増やせない」(ある図書館職員)ため、蔵書にする作業が追いつかず、倉庫に山積みにしたままの本も多いという。(