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東京も寒くなってきました。
今回はシリアスなお話をお読みいただきたいと思います。
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【こまクリレター】
配信:こまえクリニック
http://www.koma-cli.jp/
━━━ 04号 2008.10.31 ━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆医療の壁-AIDとIVFの間には
医療の限界というより、医療の矛盾ということを考えます。そういうケースに最近も出会いました。
39歳女性の不妊に関する相談です。私は、これまでに2万通を越えるメール相談や、4、500名以上の女性が当院に見え、不妊相談に応じて来ました。しかし、今回のような相談は、初めてのケースです。その女性は、これまでに20数回の人工授精を行ってきましたが、妊娠に至っていません。しかし、彼女には体外受精を行うことのできない、日本の医療システムの壁が立ちはだかっているのです。
彼女がこれまで受けてきた人工授精は、AIHではありません。人工授精=AIHではないのです。AIHのHの意味するものは、「ハズバンド」つまり、配偶者というパートナーです。しかし、彼女のパートナーであるご主人は、非閉塞性無精子症です。
無精子症は、大きく「閉塞性」と「非閉塞性」に区別できます。閉塞性無精子症とは造精機能は問題なく、精子が産生されるにもかかわらず、外に出てくることができない、そういうタイプの無精子症です。こうしたケースでは、最近の医学をもってすれば、直接、睾丸にアプローチして、そこから精子を採取、そして、体外受精(当然、顕微授精になるわけですが)を行えば、妊娠は可能です。実際、私はこれまでに何例か、パートナーが閉塞性無精子症というケースの相談を受けました。信頼できる医療機関を紹介し、顕微授精をおこない、4名の方が母親になっています。
しかし、彼女のご主人の非閉塞性無精子症は、精子を造る機能そのものに問題があり、精子が産生されないのです。パートナーに、精子そのものが存在しない以上、二人の間の子どもを持つということは、不可能です。そしてこれまで、彼女が受けてきた、人工授精というのは、AIDと呼ばれるものです。AIDのDは「ドナー」、すなわち、精子を提供する第三者がいるわけです。そしてこれまで、提供精子を用いてのAIDをこれまでに行ってきたのです。
我が国には、数多くの不妊治療の医療機関が存在していますが、AIDを行っている医療機関は、数カ所しかありません。これまで彼女に繰り返しAIDを行ってきた医師は、誠実であると思います。まず、AIDをおこなうためには、その医療機関に数多くの男性の精子を凍結したストックを準備しなければなりません。しかしながら、人工授精そのものの、妊娠率が低いことに加え、一旦、凍らせた精子を解凍して人工授精を行うと、その妊娠率はさらに低いものとなります。
彼女の年齢、これまでの経過を考えれば、現状の治療をつづけても、妊娠は期待しづらいと思います。ですから、体外受精などの高度生殖医療に移行したいわけです。しかし、残念ながら、人工授精に対しては、提供精子の使用が認められているのに、高度生殖医療に対しては、いまだ認められていないのです。
このようなことになってしまった背景には、次のような事情があるようです。AIDは慶応大学が50年以上も前から実施してきて、相当数の子どもが生まれてきており、いまさらそれを禁止することはできない。また、日本の民法は、妊娠・分娩をする母親を法律的な母親としているそうですから、問題ないわけです。その一方で、日本産科婦人科学会は、「体外受精は夫婦間の卵子、精子に限る」という前提を崩したくないようなのです。
提供精子の使用が、人工授精はOKで、体外受精はダメというのは、どのように考えても、合理的な説明はできません。法律にせよ、ガイドラインにせよ、きちんとした整備がなされていないと、その隙間に落ちてしまったひとは、クレバスからはい上がることができません。
なんらかのブレークスルーを提供できないか、苦悩する日々でもあります。
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