前回、花粉症のことを書いていて、昔の研究生活のことが
フラッシュバックしてきました。
それで、「免疫寛容」ということを解説してみます。
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【こまクリレター】
配信:こまえクリニック
http://www.koma-cli.jp/
━━━ 35号 2009.03.03. ━━━━━━━━━━━━━━━━
◆免疫寛容
生物は外敵から身を守るため、様々なシステムが存在しています。免疫システムもそのひとつです。免疫というシステムが機能するためには、自分と他人の区別が明確にされる必要があります。そして、この免疫システムは、動物がより高等になるにつれて、より高度に発達しています。
例えば、インフルエンザウィルスが侵入してきた時、人はそのウィルスをよそ者と認識して、これを身体から排除しようとします。そして、免疫システムv.s. インフルエンザウィルスの闘いに人が負けてしまうと、インフルエンザにかかってしまうわけです。
人は生まれおちて初めて、色々な抗原と接するわけですから、新生児の免疫システムは、未熟な段階にあるといえます。すると次のような疑問も出てくるでしょう。真冬のインフルエンザのシーズンに産まれた子供が、なぜインフルエンザにかかって、バタバタと死んでしまわないのか?
これに対する答えは、子どもは胎生期に母親から母子免疫という、いわば母親の免疫のおすそわけをもらって生まれてくるのです。この母子免疫は、時間とともに急速に低下していきますが、それと入れ替わるように、本人自らの免疫システムが発達してくるわけです。生物とは、かくも上手くできているのです。
私は大学院時代にエプスタイン=バー・ウイルス(以下、EBウィルス)というウイルスを研究していました(正確には、ほんの少しかじりました)。このEBウィルスは、大変賢い、含蓄のあるウィルスです。実はわれわれ成人のほとんどが、このウィルスを身体の中に保有しています。しかし、ほとんどの人は、そのウィルスの存在を知ることなしに一生を終えるのです。なぜこうなるのかというと、このウィルスは、生後間もなく、だ液などを通して感染するため、免疫システムが、このEBウィルスを他人と認識することなしに、自分の身体の一部のように思ってしまうのです。そして、免疫系が発達してくると、ウィルスはじっとしたまま、宿主の人間と共存した関係で過ごすのです。
人になんら危害を及ぼさないウィルスというのであれば、誰もこのウィルスを研究するはずがありません。しかしこのEBウィルスは、時にその存在を示すのです。このウィルスは、ほとんどの人間が持っているわけですが、もし仮にその人がHIVに感染して、エイズを発症したとしましょう。エイズは後天的免疫不全症と訳されるように、その人の免疫システムを破壊してしまいます。そうなるとEBウィルスは、免疫の監視下から逃れ、自由に暴れまわることができるのです。そして、EBウィルスは、その人に悪性リンパ腫というガンを発生させるのです。
また、最近日本でも、色々な臓器移植がおこなわれていますが、移植された臓器は、それは自分ではない非自己なので、身体はその臓器を拒絶しようとします。これを防ぐために、免疫抑制剤が大量に使用されるわけです。その副作用として、やはりその人の免疫システムが抑えられ、時に悪性リンパ種が生ずるのです。
かつて日本人は、成人した時点で、このEBウィルスの保有率は98%と言われていました。しかし、衛生状態が良くなるにつれて、年々その保有率は低下しています。このことによって、このEBウィルスが起こす新たなる病気が増えています。
それは、伝染性単核症と呼ばれる病気です。例えば、EBウィルスを持っているA男さんと、このウィルスを持っていないB子さんが仲良くなったとします。最初にキスした時点で、このウィルスはB子さんに感染すると考えられます。B子さんは大人ですから、免疫系が発達しています。B子さんの身体は、このウィルスを他人と認識して記憶します。そして、再びキスをした場合に、1回目の侵入者に対して強烈な免疫反応を示し、B子さんの体内は、免疫システムv.s. EBウィルスの戦場と化します。その結果、B子さんは肝臓が腫れ、高熱が出る伝染性単核症という病気におそわれるのです。伝染性単核症が、別名”Kissing Disease”といわれるゆえんです。しかし、この場合、時間の経過とともに、EBウィルスは、B子さんから排除され、ほとんどの場合、伝染性単核症は治癒に向かいます。

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