日経新聞の9月11日夕刊に「新株予約権消却の不思議」というコラムが掲載されていましたので、紹介します。
「ブルドックソースは8月9日現在の全株主に新株予約権を交付し、そのうちスティール・パートナーズに割り当てた534万個は1個396円で強制的に買い取った。買い取り総額は21億1464万円。ほかに財務アドバイザー報酬と弁護士費用を加えて約28億円というのが、今回の買収防衛策の総費用である。」
「疑問に感じるのは、なぜブルドックが赤字回避策を講じなかったかだ。日本の現行会計基準では、スティールから買い取った「自己新株予約権」をそのまま消却すれば21億円強の損失が発生する。しかし、例えば財務アドバイザーの野村証券にいったん売却し、権利行使をして株式に換えてもらったうえで再び買い取り、自己株として消却すれば損失は発生しない。」
「関係者によると、どちらも経済的効果は同じだから、損失を発生させた方が法人税の節約になるという。実効税率を40%とすれば約8億500万円の節税になる。」
「ちなみに欧米の会計基準では、自己新株予約権を消却しても損失を計上できないそうだ。」
本当に節税効果があるのだとしたら、これと同様の(というより基本的には同じ)スキームを使って、自己株式の取得を損金化できるのではないかと考えました。
まず全株主に新株予約権を無償で割り当てます。新株予約権の内容は、行使価格1円で新株を取得できるというものです。無償発行ですから純資産は変わりません。
そこで、会社はこの新株予約権を時価で株主から取得します。取得する権利の個数は会社が決めます。取得した新株予約権は直ちに消却し、その金額だけ会計上損失を計上するとともに、(コラム記事が正しいとすれば)法人税上損金にすることができます。
会社に新株予約権を売却しなかった(あるいは一部しか売却しなかった)株主は、権利行使し、1株1円で新しい株式を取得します。権利行使しないと株式が希薄化されるので、権利行使されることでしょう。買い取り価格が低すぎると、だれも予約権の売却に応じないかもしれませんが、その場合は全株主が予約権を行使して、株式数が増えるだけの話です。また、単純な自己株取得の場合より、株主には手間がかかりますが、節税効果はまわりまわって株主の利益ですから、無駄にはなりません。
一連の取引の結果、株主に資本の払い戻しを行い、自己資本をスリム化するという、自己株式取得の目的が達成されるだけでなく、多額の節税効果も得られます。短所は新株予約権の時価の算定が難しく、株主は会社から提示された価格が適正かどうかを判断できずに、損失を被る可能性があるという点です。
しかし、優秀な日本の国税庁が、こんな抜け道を見逃すはずはないので、こうしたスキームはおそらく成り立たないのだと思いますが、少なくとも、会計基準に欠陥があるのではないかということはいえます。
そもそも、自己新株予約権を資産として扱うのであれば、消却し権利がなくなったときに損失計上するのもわかりますが、現行基準では取得のときに純資産からマイナスしているわけですから、資産とみているわけではありません。それが消却されても、純資産の中で相殺されるだけです。損益処理はおかしいのではないでしょうか。
自己新株予約権の会計処理の解説(新日本監査法人のサイトより)
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