「アトリウム:社長が自社から20億円借金 引当金11億円」
企業会計
アトリウム:社長が自社から20億円借金 引当金11億円 - 毎日jp(毎日新聞)
東証1部上場の不動産会社「アトリウム」の社長が、自社から約20億円の融資を受けて所得税の支払いなどに充てていたという記事。自社株が担保になっていますが、株価低迷で貸倒引当金11億円を計上したそうです。
「ア社によると、高橋社長は事前に定めた価格(権利行使価格)で自社株を取得できるストックオプションの権利を04年1、12月に会社から付与され、06年4月と07年3月に権利行使し計108万株を取得した。株価は当時3310〜3933円で、売却すれば権利行使価格(1株約200円、総額約2億円)との差額約39億円の利益を手にできた計算になる。しかし、うち105万株は売却せず、含み益に対する所得税と住民税計約20億4000万円を課税された。
高橋社長はいったん自己資金と
金融機関からの借入金で税金を支払った。しかし、08年4月ごろに
借入金の返済期限を迎えたため、売却しなかった
自社株105万株を担保に、
自社からの融資に借り換えた。」
記事によれば関連当事者取引の開示はしているようですが、(またおそらく法的な手続きは踏んでいるのだと思いますが)、取引自体、不適切なものだったといえそうです。青山学院大の八田教授がコメントしています。
それにしても融資を肩代わりさせた金融機関の立場はどうなのでしょうか。
平成21年2月期中間業績予想との差異に関するお知らせ(2008年10月14日)(PDFファイル)
会社が08年10月に発表したプレスリリースでは、たしかに引当金のことにふれてはいますが、「社内融資制度に基づく貸付金の担保評価額の減少により営業外費用としての貸倒引当金繰入額が当初見込みより増加した」という説明しかしていません。社長への融資であることと、担保が自社株であることについては意図的にふれなかったようにも読めます。
2008年8月中間期の半期報告書のPL注記では以下のような注記がなされています。
「営業外費用の貸倒引当金繰入額1,100百万円は、当社代表取締役社長 煖エ 剛毅への貸付金に対する貸倒引当金繰入額であり、残債権額から担保の処分見込額を減額し、その残額を貸倒見積額としております。
貸付金の中間連結会計期間末残高は1,982百万円であります。
なお、貸付金は、ストックオプション権利行使に伴う所得税、住民税、権利行使費用の支払に充当しております。」
これを読めば取引の実態がわかりますが、いまごろ毎日新聞が取り上げたということは、半期報告書提出時点ではこの注記まで読む人がほとんどいなかったということでしょう。