2000年5月8日更新   ホームページへ戻る   国際会計基準と米国基準の比較

減 損 会 計


 現在、企業会計審議会では固定資産会計を審議していますが、減損会計がその中心テーマのひとつであると報じられています。減損会計については、米国基準と国際会計基準がわが国に先行して基準化しているので、それらの概要をご紹介したいと思います。


1.減損会計の目的

 米国基準(FAS121号)は、資産の帳簿価額を完全には回収できない可能性が高くなった場合に減損が生じているとして、このような場合には、公正評価額(時価)を新しい取得原価とするとしています。国際会計基準(IAS36号)は、帳簿価額が回収可能価額を超えないようにすることが減損会計の目的であるとしています。

 つまり、減損会計とは、減価償却のように費用の配分という見地から行われるものではなく、資産の帳簿価額に回収可能性があるかどうかという点に着目した処理であるということです。

 また、いずれの基準によっても取得原価基準で算定されている帳簿価額の範囲内で行われる会計処理ですから、時価主義の考え方による処理というよりは、棚卸資産の評価減と同様に取得原価主義の枠内の処理であると考えられます。

 ただし、国際会計基準では、減損会計とは別に、固定資産の再評価が代替処理として認められており、また、投資不動産についても時価評価と取得原価主義による処理との選択を認めている点には注意が必要です。


2.減損の兆候

 減損会計の対象となる資産は、主として有形固定資産や無形固定資産(のれんを含む)などの長期の費用性資産ですが、すべての対象資産について毎期回収可能性を調査することは、企業にとってたいへんな負担となり非現実的です。そこで資産に減損が生じている可能性を示すような兆候があるときに限って、回収可能性を調査することになっています。例えば、資産の市場価格が著しく低下したり、対象となる資産に関連して営業損失やキャッシュフロー損失が生じているといった事象が減損の兆候とされています。


3.減損の認識と測定

 米国基準では、資産から生じる将来キャッシュ・フローを見積もって、それが帳簿価額を下回る場合に減損を認識します。この場合のキャッシュ・フローは割引前のキャッシュ・フローです。割引前の数値を用いることによって、帳簿価額を回収できない可能性が低い場合を足切りしているといわれています。

 減損が認識された場合には、公正評価額(時価)まで帳簿価額を切り下げます。ただし固定資産については金融資産などと異なり、市場価格が入手できないことが多く、その場合には類似資産の価格やさまざまな評価技法の結果(その代表例が見積将来キャッシュ・フローの現在価値)を考慮します。

 国際会計基準では回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合に減損を認識し、回収可能価額まで帳簿価額を引き下げます。ここで回収可能価額とは、正味売却価格使用価値(見積将来キャッシュフローの現在価値)のどちらか高い金額です。

 つまり、資産の帳簿価額を回収するためには、いま売却してキャッシュを得るか、資産の使用とその後の処分からキャッシュを得るかしかありませんが、そのどちらか高い金額で回収できると考えるわけです。また資産を継続して使用する場合には長期にわたっての回収になりますので、金利要素やリスクを反映させた現在価値を用います。

 いずれの基準によっても、引き下げ額は損益計算書上で費用となります(再評価された資産の減損を除く)。

 また、減損が認識されないとしても、減価償却において耐用年数や残存価額の修正が必要となることがあるとされています。


4.キャッシュ・フローの予測・割引率

 将来キャッシュ・フローの見積は、「合理的で立証可能な仮定及び予測に基づく最善の見積り」(FAS121号)でなければなりません(国際会計基準も同様)。また、法人所得税や利息を控除する前の数値を使います。

 現在価値を算定する際の割引率は、「貨幣の時間価値と当該資産に固有なリスクについての現在の市場評価を反映した税引前の利率」(IAS36号)です。

 キャッシュ・フローの見積も割引率の決定も、企業が判断する要素が強く、実務上非常に難しい問題となるでしょう。


5.資産のグルーピングとのれんの償却

 資産の回収可能性は個別の資産で検討することが原則ですが、実際には、資産をグルーピングしなければキャッシュ・フローを見積もれないことが多いと考えられます。このため、「他の資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したものとして識別可能なキャッシュ・フローをもたらす最小単位にグループ化」(FAS121号)することが必要となります。国際会計基準ではこのような単位を「現金生成単位」と呼んでいます。

 「のれん」はそれ自体ではキャッシュ・フローを産み出さないので、関連する資産と合算して減損を検討します。のれんを含む資産グループに減損が生じた場合には、まずのれんの帳簿価額を引き下げて、その後にのれん以外の資産の帳簿価額を引き下げます。

 わが国では「連結調整勘定」がのれんに含まれると考えられますが、これについては会計士協会の実務指針で、子会社の業績が悪化した場合などは、相当の減額を行うとされており、減損会計的な処理がすでに定められています(会計制度委員会報告第7号第33項)。


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