2000年4月7日開設
2006年9月10日更新
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企  業 財 務 記 事  ウ ォ ッ チ ャ ー
− 新 聞 に だ ま さ れ な い た め に −

お知らせ:現在更新を停止しております。「 会計ニュース・コレクター 」は比較的頻繁に更新しているので、読んでみて下さい。

 新聞の企業財務記事の中から、「おかしいな」「理屈があっていないな」と思われるものを抽出して解説します。主に日本経済新聞を使います。経理の専門家や企業会計に興味のある方向けです。

 このページの内容のうち意見の部分はすべて作成者個人の意見であって、その他の内容も含め、作成者が かかわっているいかなる組織とも関係のないことをお断りします。また、コメントは記事が出た時点のものであり、その後の規則の変更等により、コメントの内 容が当てはまらない場合があること、また、作成者の思い違いによる誤り等がありうることについてもご了承下さい。
 また、記事要旨は、新聞記事全体をまとめたものでなく、コメントに関係する部分を取り出したものです。したがって、各新聞記事全体の正確な内容 については掲載紙をご覧下さい。

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2006年9月5日 日経 内部統制ルール 新興上場企業にも適用

記事要旨:

 金融庁は企業の不正防止をめざした「内部統制ルール」について、東証マザーズなど新興株式市場に上場している企業も含め、すべての上場企業に一律適用する方針を固めた。 2008年度から実施する。

 金融庁は08年4月からの実施に向け、今月中にも政省令などを詰める。

 内部統制は破たんした米エネルギー大手エンロンの粉飾事件をきっかけに成立した米企業改革法を参考にしているが、米企業の多くは システム費や監査費の増加に対応しきれず、一部の大企業にしか適用されていないのが実情だ。

 こうした点について金融庁は、日本の内部統制ルールでは企業の負担は比較的軽いとみている。米国は監査法人が直接 企業に立ち入り調査するが、日本は報告書を点検する間接方式となっているためだ。

コメント:

 内部統制の評価と監査については、実務指針がまだ出ていないので、どういうものになるのかはっきりしていませんが、少なくともこの記事のような日本のルールでは負担が軽いといった間違った情報を信じると大変なことになります。

 たしかに日本の基準案では、米国のようなダイレクトレポーティング(監査人が直接内部統制を評価する方法)はとらないことになりました。しかし、だからといって、財務報告のためのきちんとした 内部統制を構築し、それを文書化し、文書どおりに動いていることを会社自ら評価する作業を省略することはできません(内部統制に重大な不備があるという評価報告書を出す勇気がある場合は別ですが)。

 また、監査人も、ダイレクトレポーティングは行わなくても、会社の内部統制評価を検証する手続は厳密に実施しなければなりません。会社の評価報告書をながめていても検証はできないので、当然会社に出向いて手続を行います。

 したがって、内部統制構築のためのシステム費用や、文書化(基本的には会社自ら行う)の費用、監査費用は、日本基準でも相当かかると覚悟する必要があります。また、2008年度から適用ということは、厳密には2008年度期首の時点で、少なくとも内部統制構築と文書化(できれば本番前の評価も)は 完了していなければならないわけであり、実務指針が出るのを待っていては、手遅れになるおそれもあります。

2006年8月19日 日経 オリコ、自動車ローン事業 楽天から取得

記事要旨:

 楽天は18日、信販子会社の楽天KCが運営する自動車ローンなどを11月にオリエントコーポレーションに譲渡 すると発表した。オリコは総額5000億円の債権を引き継ぐ。

 楽天は本業のネット通販などと連携しにくい事業を切り放し資産効率を改善する。譲渡によって2006年12月期に 200億円程度の特別損失を計上する可能性がある。

コメント:

 楽天のプレスリリースをみると、単純にローン債権を譲渡するのではなく、楽天KCのクレジット事業を会社分割 して、オリコに吸収させるというスキームのようです。そこで気になるのが、楽天KCを昨年買収したときに発生したのれん(連結調整勘定)の扱いです。

 のれんは楽天KCのバランスシートに計上されているわけではなく、親会社の連結決算上の数値でしかありません。したがって、楽天KCを会社分割しても、のれんまで分割されて、譲渡される事業の譲渡原価に含まれることはありません。しかし、減損会計基準によれば、複数の事業を取得した場合に発生したのれんは、 のれんの帳簿価額を事業別に合理的な基準に基づいて分割しなければならないとされています。

 楽天KCの事業を自動車ローンや消費者ローンやクレジットなどを包括したひとつの事業と考えることもできるのかもしれませんが、そうすると、楽天KC買収で発生したのれんは今回譲渡する自動車ローン以外の事業で回収していかなければなりません。回収できないということであれば、楽天KC関連ののれん全体を減損処理しなければならないかもしれません。

 自動車ローン事業をそれ以外の金融事業から切り離された別個の事業と考えると、のれんの帳簿価額を分割して、少なくとも、事業の譲渡原価には含める必要があります。また、自動車ローン事業に帰属するのれんを、オリコへの譲渡により回収できないことが現時点ではっきりしているのであれば、2006年6月中間期で、この部分ののれんの減損損失を計上すべきでしょう。最低限、後発事象としては開示すべきです。

 (特別損失の中身がわからないため、のれんに着目して考えてみましたが、金利が高くなりつつある状況で、低金利の時に発生したローン債権の時価が簿価を下回ってしまることによる差損かもしれません。)

参考: 楽天のプレスリリース (PDFファイル)(「今回の会社分割に伴う業績に与える影響は確定次第報告いたします」として、記事でふれている特別損失にはコメントしていません。不親切な開示ではないでしょうか。)


2006年8月19日 日経 エネサーブ 自家発電設備から撤退

記事要旨:

 エネサーブは18日、主力の自家発電設備の販売事業から撤退すると発表した。原油高の影響で発電機販売が伸び悩んでいるほか、燃料となる重油の仕入で損失が膨らみかねないと判断した。

 エネサーブは自家発電機の利用者に燃料のA重油を低価格で販売する契約を結んでいる。これまでは先物取引の利用で原油高による差損を抑えてきたが、価格の高止まりで現物価格と先物価格の価格差が縮小。同事業を継続すれば差損が膨らみ財務を傷つけかねないと判断した。

 10月をメドに燃料供給契約を解除する方針。顧客と相談しながら解除を進め、違約金支払いなどそれに伴う費用は特別損失として計上する。

 エネサーブは同日に07年3月期の単独業績の下方修正を発表した。事業撤退により約1580億円の特別損失 が発生するが、会社側が1850億円と試算している先物取引の解約益で相殺するという。

コメント:

 この会社は、発電機の顧客に重油を供給する契約を結んでいます。現在のように石油製品の価格が急上昇している状況では、この重油の販売契約から大きな損失が生じるおそれがあります。顧客への販売価格と仕入価格の差から生じるそうした損失に対しては、本来であれば、引当金を計上すべきところですが、現行の会計基準や会計慣行では、そこまでは求められていないという解釈が多いようです。7月に公表された棚卸資産評価会計基準の最初の検討の際には、棚卸資産の販売契約や購入契約から生じる損失の会計処理をどうするかを取り上げていましたが、最終的は、資産計上されている棚卸資産のみ対象とし、 契約上の義務(コミットメント)から生じる損失の議論はなくなってしまいました。

 もっとも、この会社の例では、商品スワップや商品キャップ(どういうものかよくわかりませんが)というデリバティブを使ってヘッジを行っている(同社有報による)ため、供給契約だけ見ていては片手落ちかもしれません。2006年3月期の同社有報をみると、 繰延ヘッジ利益が1884億円負債の部に計上されています。逆に考えると、ヘッジ手段の方にこれだけの利益が出ていたのですから、おそらく、3月の時点で、ヘッジ対象である重油供給契約の方は、これに相当する金額の含み損を抱えていたと推測されます。

 ちなみに、繰延ヘッジ利益は、会計基準変更により、今後は税効果控除後の金額が純資産に計上 されます。このケースでは、変更後の基準が適用されていたとすれば、税効果を差し引いた約1000億円だけ純資産が膨らむことになります。

 本来は、重油供給義務から生じる損失を引き当て計上したうえで、ヘッジ手段に発生している利益のうちこの損失に対応する部分を、資本直入ではなく、損益計算書上の利益として、供給義務の損失と相殺するという処理になるのでしょう。繰り返しになりますが、コミットメントから生じる損失を引き当てるという会計基準がないために、 ヘッジ手段の利益の方だけバランスシートに反映され、コミットメントの損失の方はどこにも出てこないという事態が生じかねません。

 ところで、この記事の例では、事業撤退から生じる特別損失は、先物取引の解約益でうまく相殺できると会社は発表しています。たしかに、3月時点で繰延ヘッジ利益が1800億円もあったのですから、1850億円ぐらいの解約益は見込めるのかもしれません。しかし、同社有報(2006年3月期)記載のリスク情報を見ると、重油供給契約すべてをヘッジしていたわけではないようです。特別利益と特別損失が釣り合うというのは、話がうますぎるようにも思えます。  

参考:エネサーブのプレスリリース   

2006年8月9日 日経夕刊 カネボウ粉飾元会計士有罪 監査法人の責任指摘

記事要旨:

 カネボウの粉飾決算事件で、中央青山監査法人の元公認会計士3人を有罪とした9日の東京地裁判決は、「カネボウの監査の問題は、被告らが関与する前から継続していた」と、監査法人の責任を指摘した。

 検察幹部は「決算は企業と監査法人の合作。見過ごしたでは許されない」と監査法人の責任を強調。証券取引等監視委員会も今年4月、「現行の証取法では不正に関与した会計士が所属する監査法人の刑事責任追及は困難」として、法改正を求める「建議」を行った。

コメント:

 カネボウ粉飾事件について監査人の責任は当然ありますが、「決算は企業と監査法人の合作」という考え方は間違っています。決算は会社の経営者(監査役や社外取締役を含む)の責任で作成するものであり、監査人は会社から独立した部外者として、作成された決算が会計基準の枠内に納まっているかどうかについて意見を言うだけの存在です。カネボウ事件で問題となった不良資産の評価や支配力基準による連結範囲の決定は、経営者の判断に大きく依存する部分であり、監査人は経営者の判断が最善のものであることまで保証しているわけではありません(といっても賞味期限切れの食品を資産計上していたというのは資産評価以前の問題ですが)。

 むしろ、「決算は企業と監査法人の合作」という考え方があるために、監査人が過去の決算を否定するような指摘ができなかったともいえます。会社から去年といっていることが違うと批判されようが、監査人は、状況が変われば指摘が変わっても当然だと割り切って考えるべきです。

 ところで、仮にカネボウの決算が会社と誰かとの合作だとすれば、それは、カネボウに経営者を送り込んだ金融機関との合作なのではないでしょうか。金融機関はカネボウが粉飾してくれたおかげで、カネボウに対する融資の引当を遅らせることができ、いちばん厳しい時期を乗り切ることができたわけです。送り込んだ経営者やその他の出向者を通じて粉飾の実態を把握していたのに、粉飾された虚偽の決算数値に基づいてカネボウへの債権の評価を行っていたとしたら、その金融機関も粉飾を行っていたことになります。なぜこれが捜査の対象とならなかったのでしょうか。状況証拠とはいえ、十分あやしいと思うのですが。
 

2006年8月8日 日経 日電波、11年ぶりCB発行 国際会計基準の財務諸表を活用

記事要旨:

 日本電波工業は7日、ユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、最大で110億円を調達すると発表した。米国を除く海外市場で募集し、機関投資家などに販売する。ロンドン市場の上場基準に対応するため、目論見書には 国際会計基準に基づく財務諸表を記載した。

 同社は、2002年3月期から日本企業で初めて国際基準による財務諸表を作成、公表してきた。

コメント:

 日本電波工業のアニュアルレポートを見ると、売上高が600億円程度の会社で、上場企業としてはそれほど大きな会社ではありません。 金融庁の企業会計審議会から「会計基準のコンバージェンスに向けて」という意見書が出ていますが、このような例を見ると、官主導で無理やり海外資金調達とは縁がないような会社までコンバージェンスを求めるのではなく、それぞれの企業の判断で、会計基準を選べるようにしてもいいのではないかと思います。

 日本の会計基準は、米国会計基準採用会社における実務を参考にしながら設定してきたという面もあります。日本基準と国際会計基準や米国基準に大きな差異がないのだとしたら、むしろ日本国内でも、 国際会計基準による財務諸表を認めるべきでしょう(そうでないと2種類の連結財務諸表を作成しなければならない)。もちろん、そうなれば、金融庁や証券取引所などの市場監督機関でも国際会計基準を理解できる人材を確保する必要が出てきますが、米国基準採用会社にも従来対応してきたわけですから、大きな問題はないはずです。

 ただし、少し気になるのが、日本電波工業の場合、監査の基準は日本基準だということです(アニュアルレポートの監査報告書による)。米国会計基準採用会社の場合、監査も米国監査基準に準拠していなければなりません。将来的には、EUの市場でも、それと同じように国際監査基準に基づく監査を求められるようになるかもしれません。日本の監査法人はそれに対応できるのでしょうか。

 本題とは関係ありませんが、アニュアルレポートの純資産をみると、「親会社の株主に帰属する持分」という項目があります。「評価・換算差額」を含んだ金額となっており、日本基準の「株主資本」とは異なっています。この点は、国際会計基準の方に合わせるようコンバージェンスしてほしいと思います。

参考:日本電波工業のアニュアルレポート (PDFファイル) 、 会計基準のコンバージェンスに向けて

2006年6月22日 日経 満期保有前提の国債、財務省検討

記事要旨:

 財務省は満期までの保有を前提とする「非市場性国債」の発行に向けた検討に入った。市場での売買を通じ価格が変動する通常の国債と異なり、購入後に 金利が上昇した場合に生じる会計上の損失を回避できるのが特徴。需要動向を踏まえたうえで、銀行などの機関投資家向けに2―3年後にも発行できるよう詰める。

 財務省が21日に開いた国の債務管理の在り方に関する懇談会で、今後の検討課題として示した。投資家からは新型国債について償還までの期間が5年程度の商品を要望する声が上がっている。満期保有を条件に時価会計を適用しないルールとするため、 何らかの譲渡制限を設けて売買を規制する仕組みなどを検討する。

コメント:

 現行の金融商品会計基準では、満期保有債券は時価評価の対象外です。また、全く譲渡ができない国債であれば、有価証券という性質は薄くなり、国に対して定期預金をしているのと同じですから、国に預けた当初の金額で計上するか、その金額と額面とに差があれば、未収利息的に額面まで規則正しく増額していく(割引発行の場合)ことになるのでしょう。

 しかし、金利上昇が見込まれる局面では、このような債券を多く保有することは、財務的に不健全な状態を招くおそれがあります。例えば、利回りが1%の非市場国債を保有している間に、預金金利が5%に上昇したら、逆ざやが国債の満期まで継続することになってしまいます。

 もちろん、金融機関ではそんなことは百も承知しており、「会計上の損失」だけ回避しても意味がないことはわかっているのでしょう。それでもなお、こうした損失先送り(となる可能性のある)商品を求める理由はどこにあるのでしょうか。


2006年6月22日 日経 薬害C型肝炎訴訟で製造元にも賠償命令 三菱ウェルに重いツケ

記事要旨:

 血液製剤によるC型肝炎訴訟で大阪地裁が21日、国と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)に損害賠償を命じる判決 を下した。

 三菱ウェルファーマは三菱化学の製薬部門と旧ミドリ十、旧東京田辺製薬が2001年10月までに統合してできた。

 同社は賠償金の支払いに備えた会計上の引き当てをしていない。全国各地で係争中の訴訟では三菱ウェルへの賠償請求は計55億円弱と賠償請求総額の96%を占める。

 三菱ウェルファーマは旧ミドリ十字製の血液製剤「フィブリノゲン」の投与で約1万人がC型肝炎を発症 したと推計。潜在的な原告予備軍でもある被害者数は多く、今回の判決が新たな訴訟を促す公算は大きい。

コメント:

 三菱ウェルファーマの決算短信(2006年3月期)を見ると、HIV訴訟和解損失引当金が約13億円計上され、会計方針の注記で以下のような説明がなされています。

「当社において、HIV感染被害損害賠償請求訴訟における今後の和解金(弁護士費用等を含む)の支払いに備えて、将来支出すべき見積額を計上しております。

 見積額につきましては、当連結会計年度末現在のHIV訴訟原告並びに 未提訴の抗血友病製剤(非加熱濃縮製剤)の使用によるHIV感染患者を対象に、平成8年3月締結の和解に関する確認書及び現在までの和解実績を基準として算出した額を計上しております。」

 C型肝炎訴訟については、2005年3月期の有報を見ると、連結財務諸表の「その他」(注記でもなく、監査対象でもない箇所)で、以下のように記載しています。

「[HCV(C型肝炎ウィルス)感染被害損害賠償請求訴訟]

当社及び株式会社ベネシスは、平成14年10月21日以降、旧株式会社ミドリ十字 が製造販売したフィブリノゲン製剤または非加熱第IX因子製剤を使用したことによりHCV(C型肝炎ウィルス)に感染し、損害を受けたとする人々より、国とともに損害賠償請求訴訟の提起を受けております。

平成17年3月31日現在、当社及び株式会社ベネシスにかかる原告患者は71名であり、国とともに支払うよう請求されている 損害賠償請求金額は4,312百万円であります。」

 2006年3月期の有報では、さらに詳しく開示する必要があるでしょう。裁判の経緯を書くだけでなく、発症者約1万人という推計がなされているのであれば、現に訴訟が起こされている金額だけでなく、将来見込まれる 賠償請求額まで開示した方が情報提供としては有用です。また、そうでなければリスクの全体の大きさがわかりません。

2006年6月22日 日経 キョウデンが業績上方修正

記事要旨:

 キョウデンは21日、2007年3月期の連結純利益が前期比2.2倍の19億円になる見通しを発表した。子会社の長崎屋が会社更正手続を前倒しで終える見込みとなり、 債務免除益が34億円発生する。

2006年6月22日 日経 長崎屋、再建12年前倒し 一括弁済、負担34億円軽く

記事要旨:

 キョウデングループ参加で経営再建中の長崎屋は21日、会社更正手続が7月上旬で終結する見通しだと発表した。当初の再建計画を12年前倒しすることで 弁済総額を34億円減らす

 親会社のキョウデングループが70億円を債務保証するため、一括弁済による早期の手続終結が実現する見通しとなった。

 長崎屋は00年2月に負債総額4700億円(関連会社分を含む)を抱えて会社更生法の適用を申請。 02年2月にはプリント基板メーカーのキョウデングループがスポンサー となり、02年6月に東京地裁から更生計画の認可を得ていた。

コメント:
 いったん破たんした会社にスポンサーがついて再建するというのはいいことですが、会計処理についてはいろいろと考えさせられます。

 まず、連結の範囲の問題です。

 いくら支配力基準だからといって、更生会社を連結範囲に含めることが適切なのでしょうか。少なくとも法律的には、更生手続が終結するまで長崎屋を支配しているのは裁判所であり債権者であるはずです。更生手続終了まで連結しなければ、長崎屋の債務免除益がキョウデンの連結決算上利益になることもありません。

 もちろん、連結からはずせば、長崎屋の多額の債務も隠れてしまいますが、キョウデンが投資、貸付、債務保証などによりコミットしていれば、それらは投資有価証券や貸付金として貸借対照表に計上されるか、注記によって開示されます。また、これらに損失が発生すれば、投資有価証券の評価損、貸倒引当金や債務保証の引当金が計上されます。連結からはずしても十分実態は開示されるはずです。

 ライブドアやカネボウの事件があって、なんでもかんでも連結に含めればいいという考え方が蔓延していますが、よく考えてみる必要があります。

 (もっとも、キョウデンの場合は、長崎屋を含む流通事業全体で営業利益が13億円(2006年3月期、決算短信による)しかないので、長崎屋を連結に含めたことの業績かさ上げ効果はあまりなかったようです。)

 2番目に、(連結に含めるのが容認されるとして)債務の評価の問題です。

 34億円の債務免除益が発生するということは、その時点で債務の簿価(通常は債務の額面)と時価とに差が生じているということです。この差異が、長崎屋がキョウデン傘下となり連結子会社となった以降に生じたものではなく、長崎屋を取得した時点ですでに存在していたものだとしたら、本来、免除益が計上されることもありません(取得時点で債務も時価評価されるため)。長崎屋の当初の更生債権残高715億円(キョウデンのプレスリリースによる)と比べれば34億円はそう大きな金額ではありませんが、気になるところです。 
 
 ちなみに、現行の金融商品会計基準では、金銭債務は債務額(額面)で計上しなければならないとされていますが、ASBJの公開草案では、債務の取得価額が額面と違う場合には、その違う金額で記帳し、差額を償却原価法で処理することになっています。

参考:キョウデンのプレスリリース (PDFファイル)


2006年6月19日 NIKKEI NET 住友金属株主らが代表訴訟・「裏金支出で76億円損害」

記事要旨:

 環境プラント工事の受注工作のため多額の裏金をつくって会社に損害を与えたなどとして、住友金属工業の株主4人が19日、社長だった下妻博会長ら当時の経営陣9人を相手取り、総額約76億円を同社に賠償するよう求める株主代表訴訟を大阪地裁に起こした。

 訴えたのは、市民団体「株主オンブズマン」(大阪市)代表の森岡孝二関西大教授ら。

 訴状によると、同社は2004年3月期までの6年間で、下請け会社への外注費を水増し するなどして計 34億円の裏金を捻出。各地の環境プラント工事の受注工作に使ったとされる。

 大阪国税局は税務調査でこれらの支出を「使途秘匿金」と認定、約18億円を追徴課税した。

 原告側は「裏金は違法な受注工作に使われた疑いが強く、経営陣は違法行為を防止する義務に違反した」と主張。下妻会長と環境プラント部門や法務担当の役員らに追徴税額を含めた支出額を賠償するよう求めた。

コメント:

 訴状によると、住友金属は下請け会社への外注費を水増しするなどして計34億円の裏金を捻出していたそうですが、水増しした外注費を棚卸資産(未成工事支出金)の金額に含めていた場合には、利益の水増し(粉飾)にもなります。そうでなくても、販売費とすべき費用を売上原価(完成工事原価)に計上する不正な経理処理ということになります。また、水増しを税務調整していなければ、申告漏れということになり、未払税金の数字もおかしいという結果になります。

 もちろん、株主オンブズマンがいっているのは、会計処理というよりも支出自体が違法だということなのでしょう。株主オンブズマンのホームページを見ると、この裁判についてはまだ詳しくふれていませんが、ホームページに掲載されている株主オンブズマン 2006年 株主総会・質問マニュアルの中に、

「企業が税務申告で使途を秘匿した金額と、税務調査で判明した使途を株主総会に開示するべきではないか。」

という質問項目があり、税務上の使途秘匿金には違法な支出がある可能性が高いという認識を持っているようです。

 監査人の立場からすると、未払税金を確かめるためには、税務上の使途秘匿金が正しく集計されていることを確かめる必要はありますが、その内容をどこまで見るのかは難しい問題です。

 監査の理屈からは、何のために誰に対していくら支払ったのかを確かめなければ、正しい会計処理かどうかは判断できないはずです。したがって、大きな金額の使途秘匿金があれば素通りするわけにはいきません。また、会計監査人は違法行為の摘発を目的とはしないものの、違法行為(その疑いがあるケースを含む)を発見すれば、経営者や監査役に報告する義務を負っています。


2006年5月27日 NIKKEI NET ペイントハウスの有価証券報告書、初の訂正命令へ・金融庁

記事要旨:

 証券取引等監視委員会は26日、ジャスダック上場の住宅リフォーム会社、ペイントハウスに対し2005年8月期の有価証券報告書の訂正を命ずるよう金融庁に処分勧告をする方針を固めた。同委の 訂正勧告は初めてで、本来は債務超過なのに資産超過と公表 していたという。会社側は同日、勧告を見込んで訂正命令の差し止めを求める仮処分と訴訟を東京地裁に申し立てたと発表した。

コメント:

 問題となっているのは、債務免除の会計処理のタイミングです。社債権者から正式に債務免除が認められるより前に債務免除益を計上し、債務超過を免れたことにしている点が指摘されています。

 これについては、以前ふれたように、訂正を求めるのが当然ですが、監視委員会が訂正勧告を行うのが初めてだというのは驚きです。もちろん、訂正命令に至る前の段階で、会社に指導して修正させた例がもしかしたらあるのかもしれませんが、もしそうであれば、会社名をあげて公表すべきでしょう。

 企業の開示に対する当局の監視の目的は、(1)正しい開示をさせること(いいかえると開示に不備があれば修正させること)と、(2)不備のある開示を行った企業やそれを見逃した監査人の責任を追及すること、にあると思います。ところが、ライブドア事件や中央青山への懲戒処分をみると、「一罰百戒」で(2)の責任追及ばかり熱心なようです。

 しかし、会社や監査人にいくら刑事罰や行政罰を課したところで、不備のある開示書類を利用した投資家の損害を回復することは困難です。むしろ、監視委員会が企業を調査してできるだけすみやかに修正すべき点を修正させる方が重要です。ライブドア事件の場合も、ぎりぎりまで隠密に捜査するのではなく、もっと早い時期に調査を開始し、また、調査を開始したこと自体を公表しておけば、問題が大きくなる前に解決できたかもしれません。

 監査人への責任追及や指導も、開示の不備を発見し修正させる過程の中でやる方がよほど効率的であり、抑止効果があります。監査法人に入り浸って、監査調書のサインの数を数えるようなチェックに国民の税金を投入するのは、全く意味がないとはいいませんが、効率の低いやり方です。不正経理は、監査法人ではなく、会社で行われているのですから、会社を調べればいいのです。その結果、監査人の怠慢や癒着が発見されれば、厳しく責任を追及するというのが正しい順序です。

参考: ペイントハウスのプレスリリース (PDFファイル)、 関連記事


2006年5月27日 日経 ライブドア事件 宮内被告ら初公判  粉飾 発端は2001年

記事要旨:

 検察側冒頭陳述によると、堀江被告の指示の下、ライブドアが自社株売却による資金づくりを考え始めたのは01年ごろ。 02年、03年の9月期には、傘下の投資事業組合による売却益各2億円余の売上高計上 に成功。起訴対象となった04年9月期にも「連結経常利益を最低でも20億円と公表できるように」との堀江被告の指示で、宮内被告らが、株式交換による企業買収を装って発行した自社株の売却計画を立案した。

 03年10月、携帯電話販売会社の買収に伴い約10億円の自社株売却益 が見込めるとの報告を受け、堀江被告は喜んで計画を了承。同年12月、別会社買収でも売却益が見込めると聞かされると実行を指示した。

 04年5月に開かれた取締役会。同年9月期の連結経常利益の予想額が30億円となっていることに不満を抱いた堀江被告は、業績予想を50億円に上方修正するよう宮内被告らに指示。

 そこで宮内被告らが、子会社予定の2社の預金などを架空売り上げに計上 する案を示すと、堀江被告は強く後押し。関連会社ライブドアマーケティングの虚偽情報開示を巡っても、同社の第3四半期業績が赤字になると聞いた堀江被告は同年9月、黒字を装うため架空売上高の計上を実行するよう指示した。

コメント:

 ライブドア事件は、粉飾だけでなく、偽計取引・風説の流布により株価をつり上げたという罪も問われていますが、ここでは、会計士の分をわきまえて、(以前書いたのとかなりの部分重複しますが)会計処理に絞って考えたいと思います。 

 報道では、投資事業組合で上げた利益の一部が関係者に回っていたのではないかといったことが書かれていましたが、結局、問題とされたのは、(1)投資事業組合を通じて行った自社株の売却から得られた利益(記事によれば37億円)を損益計算書で利益として計上したこと(本来は資本取引であり損益計算書には計上できない)と、(2)子会社化予定の会社に対する架空売上(15億円)、の2点です。

 (1)については、投資事業組合がライブドアの子会社であると考えれば、次のような取引だと考えられます。

A:投資事業組合が別の会社を買収

B:買収した会社(ライブドアから見れば孫会社になる)を親会社であるライブドアに売却

C:その対価としてライブドア株を受領(親会社の増資を子会社で引き受けたことになり連結ベースで見れば自己株式の取得)

D:ライブドア株の売却(おそらく投資事業組合は交換益と区別しないでこの時点で利益を計上)(連結ベースでは自己株式の売却)

 たしかに、子会社が親会社の株式を売却した際の利益は、資本取引によるものなので、損益計算書に計上するのは間違った処理です。しかし、SPCは一定の条件を満たせば連結からはずすことができるという規定もあり、また、投資育成目的で、傘下に入れる目的でない場合は、子会社に該当しないという規定もあります(連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い)。投資事業組合はSPCの一種ですし、投資事業組合自体を傘下に収める意図もなかった、だから連結範囲から除外してもいいはずだという創造的会計がありうるかもしれません。少なくとも、グレーな処理かもしれないが、完全に否認される処理だとは認識していなかったと主張することはできそうです。

 また、自己株式の売却は資本取引であるという考え方自体、2002年公表の企業会計基準第1号でようやく定まったルールです。商法改正で金庫株が認められる以前は、自己株式の取得自体がわずかしか行われなかったという事情はあるものの、2002年までは自己株式(親会社株式を含む)売却益の利益への計上が正しい処理として認められていたわけですから、2004年になって急に、それが悪質な粉飾だと決めつけるのもどうかと思います。

 資本取引と損益取引の混同がいけないというのなら、三井住友銀行が子会社と逆さ合併して、投資有価証券や土地の簿価を損益計算書を通さずに引き下げた処理はどうなのでしょうか。ライブドアは、直接資本の増加とすべき取引を金融部門の売上だといって損益計算書で利益に計上したのに対し、三井住友は、投資有価証券や土地の減損処理や売却時の売却原価として損益計算書に計上されるべき金額を、資本から直接減額したわけです。いずれも損益計算書上の利益を水増ししたという点では違いはありません。(もちろんライブドアの場合は、組合を使った取引を隠していたという点ではるかに悪質です。)

 (2)の架空売り上げは、たしかに不正経理です。子会社化予定の会社はすでに投資事業組合が買収しており、そこに対して売上を計上しても、連結ベースでは、相殺消去され利益にはならないはずです。この場合は架空の取引ですからなおさらです。

 しかし、投資事業組合が子会社でないとしたら、そこが買収した会社もまた子会社ではありません。子会社でない会社から返却の必要がない預金が振り込まれたのですから、売上高として表示したのは不正経理だとしても、何らかの利益(例えば受贈益)にせざるを得ません。つまり、この点に関しても 、投資事業組合が連結子会社かどうかという点が重要になります。

 以上、あえて弁護側の立場に立ってまとめてみましたが、ライブドア事件の場合は、ひとつひとつの処理ではなく、株価つり上げのためのスキーム全体を見て、判断すべきという考え方もあるでしょう。しかし、今後の会計実務を考えるうえでは、細かいところまで見ておく必要もあると考えます。

注:取引BとCをライブドア側でパーチェス法で処理していた場合には、孫会社株の取得原価に未実現利益が含まれることになり、資産過大計上になりますが、実際には持分プーリング法で処理していたようです。しかし、パーチェス法でやっていた方が 資産(例えばのれん)の金額が膨らんで異常に気付いたかもしれません。


2006年5月22日 MSN(毎日) 中央青山監査法人:抑止策や処分は 英公認会計士に聞く

記事要旨:

 カネボウの粉飾決算事件に絡み、中央青山監査法人が業務停止処分を受けた問題で、英米や日本で大企業のコンサルタントをする英公認会計士のクリス・ヒクソン・ロンドンビジネススクール客員准教授に効果的な抑止策や処分の問題点を聞いた。

 −−日本では企業と監査法人の癒着回避のため交代制が議論されている。

 ◆米国でもエンロン事件後に議論されたが、導入しなかった。合理性がないと思う。英国でも交代制なしで、監査法人は高い信頼を維持している。定期的に優良な顧客を手放さないといけない理由もない。監査法人が 企業からお金をもらって監査する仕組み自体を問題視する声もあるが、プロの仕事に報酬を出すのは当たり前だ。

 −−効果的な抑止策は。

 ◆監査法人と企業を完全に独立させることが重要だ。欧米では、企業に圧力をかけられた監査法人が契約解消 することも珍しくない。このため、企業に、きっちり独立した社外役員がいることが一層重要になっている。企業の最高財務責任者(CFO)に圧力をかけられた監査法人は、社外役員と相談できる。社外役員は監査法人のシニアパートナーと言える。

 −−監査法人の寡占を疑問視する声もある。

 ◆中小監査法人の育成は極めて大事である一方、中小が合併し、大手の数を増やす必要もある。15年前には 世界的監査法人は八つあった が、四つになった。寡占は世界的な問題だ。

 −−業務停止処分の評価は。

 ◆世界の常識からすると、愚かでクレージーな処分と言える。撤回されるべきだ。新たな企業の監査をしてはいけないというなら分かるが、2カ月間も従来の企業を監査させないのは、廃業せよと言っているようなもの。何より顧客企業に迷惑がかかるし、他の大監査法人に受け入れの余地もない。結果として膨大なコストがかかるだろう。

コメント:

 この会計士がどのような背景を持つ人なのかはわかりませんが、いっていること自体は、日本の会計士も含めて、世界中の会計士業界の最大公約数的な意見でしょう。

 監査人の交代制(担当するパートナーの交代制ではなく監査法人自体が交代する制度)は、たしか、イタリアや韓国で導入されていますが、まだごく一部の国でしか採り入れられていません。例えば、5年で交代するということになると、1000社クライアントがある監査法人は、平均して毎年200社ずつ新規に営業活動して契約を獲得しなければなりません。パートナーは監査をやるより、営業活動で忙しくなるでしょう。日本でも交代制を導入すべきだという意見がありますが、監査の現場(監査人や監査クライアント)から遠い人ほどそういう意見を言っているようです。

 日本の場合、社外役員の役割は監査役が果たす建前の会社が多いと思いますが、会社から独立しているといえる人がどれだけいるのでしょうか。監査役や社外取締役などはあてにしないで、不当な圧力があれば、契約解除を辞さないという心構えで監査をやるしかありません。

 その昔アメリカの大手会計事務所を取り上げた「ビッグエイト」という本を読んだことがありますが、アンダーセンが消滅していまや4つになってしまいました。金融庁が中央青山を弱体化させるつもりなら、日本は3法人体制になって、世界でいちばん監査業界の寡占が進むことになってしまいます。

 中央青山の処分の評価は当分定まらないでしょう。エンロン事件でアンダーセンが消滅したのと比べれば大したことはないという意見もあるかもしれません。ただし、アンダーセンの場合は粉飾を見逃したことへの処分で消滅したのではなく、証拠隠滅の疑いをかけられたことが原因(その後証拠隠滅に関しては無罪となった)ですので、比較の対象にすべきではないかもしれません。いずれにせよ、金融庁が中央青山をどうしたいのかがよくわからない処分内容です。粉飾を見逃したパートナーたちが登録抹消されるのは当然としても、法人として業務停止を課すほどの品質管理体制の不備が本当にあったのでしょうか。金融庁のメンツは立ったが、監査クライアントも監査業界も疲弊してしまったという結果になる可能性が高いと思います。 

2006年5月18日 日経 会計基準委 在外子会社と親会社 基準統一に実務指針

記事要旨:

 企業会計基準委員会は17日、海外子会社と親会社の会計方針の統一 に関する実務指針を公表した。連結財務諸表を作成する際は親子の会計基準 統一を原則とする が、子会社が国際会計基準か米国基準で作成した財務諸表は、当面はそのまま 利用できる。ただ、その場合ものれん代の償却など日本基準と大きく異なる項目 は、日本基準への修正を義務付ける。

 実務指針は2008年4月以降に始まる連結会計年度から適用される。

コメント:
 
 連結グループ内では会計方針を統一しなければならないというのは、連結会計原則に書いてある大原則です。しかし、従来は、会計士協会の監査委員会報告で、よほど不合理な基準でなければ現地の会計基準をそのまま使っていいことになっていたので、わざわざ日本基準に修正する例はほとんどなかったと思います。これはおそらく、先進的な海外の基準で作成されている財務諸表を、手間ひまかけてそれより劣る日本基準ベースに直すのは意味がないという考え方が根底にあったと思われます。

 しかし、近年会計基準の整備が進んで、実態はともかく、少なくとも建前上は、日本基準も海外基準と同等になっています。そこで、原則に立ち返って、日本基準に統一するということになったわけです。といっても、海外の子会社に日本基準で財務諸表を作成して、監査を受けろといっても実務的に無理な話です(そもそも、日本基準を英訳したものすらありません)。そこで、今までとは逆に、米国基準や国際会計基準で作った財務諸表であれば、日本基準と同等とみなしてそのまま利用できることにしています。

 ただし、米国基準や国際会計基準と日本基準で大きく異なる部分については、原則に戻って、日本基準に直さなければなりません。

 このような項目として、新しい実務対応報告では、以下の6つを挙げています。ただし、具体的にどういうものがあるのかはわかりませんが、これ以外についても、明らかに合理的でないと認められる場合には、連結決算手続上で修正を行うとされています。

(1) のれんの償却 (非償却→規則的償却)
(2) 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理(資本直入→規則的に償却し損益計算書に計上)
(3) 研究開発費の支出時費用処理 (資産計上→費用)
(4) 投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価(毎期時価評価または何年かに一度再評価→取得原価基準)
(5) 会計方針の変更に伴う財務諸表の遡及修正(財務諸表の遡及修正→当期の損益)
(6) 少数株主損益の会計処理(当期純利益に少数株主損益を含める→少数株主損益を除外)

 新しい実務対応報告は記事に書かれているように、2008年4月開始事業年度から適用になりますが、その際「過年度の税引後損益として会計処理しなければならない額が生じた場合、その純額を、 適用初年度の期首の利益剰余金に加減する」とされています。

 この利益剰余金で調整するという方法は、必ずしも間違ってはいないと思いますが、上記(5)とあわせて考えると首尾一貫していません。つまり(5)では会計方針の変更の際の 過年度分損益の修正は当期の損益とするのが日本基準だといっているのに、実務対応報告の適用による海外基準から日本基準への修正(これも広い意味での会計方針の変更です)の場合は、利益剰余金に加減するわけですから、わけがわかりません。(利益剰余金直入を悪用するとこうなるという例を 会計ニュース・コレクター に書きましたのでご覧下さい。)

 適用時期の2008年度というのは微妙な時期です。EUで資金調達する場合には日本企業も国際会計基準を使わなければならないという2007年問題がありましたが、たしか2年延期になっています。EUからは日本基準は会計方針の統一がなされていないのが大きな欠点であると批判されていますので、この実務対応報告の折衷的なやり方が認められるかどうかは、非常に重要です。 
 
参考: 「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の公表

2006年5月18日 日経 スク・エニ前期 純利益170億円 税効果で上方修正

記事要旨:

 スクウェア・エニックスは17日、2006年3月期の連結純利益が前の期比14%増の170億円になったと発表した。従来予想は100億円。 タイトーの完全子会社化に伴うもので、税効果会計による法人税の調整で 繰延税金資産90億円が発生 、特別利益に計上した。

コメント:

 同社のプレスリリースでは、この修正について以下のように書いています。

「当連結会計年度において、株式会社タイトー(以下、「旧タイトー」)の株式に対して公開買付け(TOB)を実施 した結果、旧タイトーの発行済み株式の93.7%を取得し、連結子法人等としました。さらに、旧タイトーと一体となった効率的・機動的な事業推進を可能とすべく、旧タイトーの完全子会社化を目的として、旧タイトーと 当社完全子会社である旧株式会社SQEX との合併を平成18 年3月31 日付で実施し、その結果、存続会社である株式会社タイトーを当社の完全子会社といたしました。かかる 組織上の再編に伴い、税効果会計が適用された結果、繰延税金資産(法人税等調整額:連結△90 億円、個別△61 億円)が発生 することとなり、この度、その取扱いが確定したことによる修正であります。」

 これだけでは、急に税効果が発生した事情はわかりませんが、ある会社を買収しただけで利益が出るというのは少しおかしな感じがします。

 タイトーの子会社化とそれに続く別の子会社との合併による税効果が最初から見込まれていたのなら、タイトーの買収の取得原価のうち税効果に対応する部分は、取得原価を配分する際に、繰延税金資産に配分すればよかったのではないでしょうか。繰延税金資産に配分された額だけ他の資産(例えばのれん)に配分される金額は減ることになり、損益への影響は(のれんの償却費が減ることを除き)生じないはずです。 

 ただし、いろいろな考え方がありそうな事例なので、私見を押しつけるつもりはありません。

参考: 通期業績予想の修正に関するお知らせ (PDFファイル) 

2006年5月16日 asahi.com レオパレス社長が48億円不正流用 入居者共済金を投資

記事要旨:

 アパート賃貸大手のレオパレス21は16日、深山(みやま)祐助社長(60)が、 入居者から徴収したサービス手数料のうち計48億6500万円 を、 社長個人名義での不動産投資 知人の会社の運転資金 に充てるなど不適切な運用をしていたことを明らかにした。

 不適切な運用があったのは、鍵の交換や家具の修理などのサービス手数料の収入を基にした「 入居者共済会 」の資金。会社とは別の法人として立ち上げるため、01年1月から会社経理から切り離していた

 深山社長はこの資金から、知人の不動産会社に対し運転資金として29億6500万円、知人に2億円を、それぞれ有利子で貸し付けていたほか、17億円を社長個人のマンション投資資金に充てていたという。

 無認可共済への法規制が強まったため、同社は今年3月期決算で法人化を断念。共済会用の資金を本社経理に戻す際に不適切な運用が判明した。この間、同社は資金運用の手続きを定めず、深山社長の独断で融資を決めていた。

 不適正な運用の発覚後に知人への2億円を会社からの貸付金に切り替えた以外は、社長個人に貸し付けた投資用マンション購入費用も含め、 今年3月期までに全額返済されている。

 同社は返済された共済会の資金を売り上げに振り替えるなど決算を修正 する。これにより過去5年分の売上高が計84億5700万円、経常利益が計85億8千万円、当期純利益が計49億7300万円それぞれ増える。

コメント:

 売上の除外と関連当事者への不正な貸付という2つが組み合わさった不正といえます。それぞれの不正は、別々に見れば意図的な不正ではないと弁解することも可能かもしれませんが、2つ合わさることで非常に悪質度が高い不正になっています。

 まず、売上の除外ですが、会社のプレスリリースによると、「当社とは別組織である「レオパレス入居者ロマン共済会」(以下「入居者共済会」といいます)の発足に 平成13年ころ着手」したものの、着手しただけで、実態のある組織は存在しなかった ようです。設立中の組織のために預かっているのだと解釈し売上に計上しないという処理は、考えられないではありませんが、その場合は、資金自体は会社の帳簿に入れたうえで 預り金として処理すべきでしょう。(もちろん組織が別だからといって、何をやってもいいわけではありません。)
 
 2つ目は、社長や社長の知人への貸付です。このような貸付自体は、必ずしも不正ではありませんが、中小企業ならともかく、れっきとした上場会社がやることではありません。また、取締役会の決議など、商法上の手続もふんでいないようですから、違法な貸付です。返済され、実害がなかったからといって容認される取引ではありません。  

 しかし、よく考えてみると、この不正のいちばんの被害者は、わけのわからない手数料をとられた入居者や、その分家賃収入が目減りしてしまったアパート・オーナーの方かもしれません。簿外にしていた共済金の資金は、売上にしてしまうようですが、入居者やオーナーに返す必要はないのでしょうか。返すのであれば、売上ではなく未払金になります。

参考: 過年度決算短信(連結)の訂正並びに平成18年3月期業績発表日の延期について

2006年5月13日 日経 自主規制機能マヒ 「官の監視」流れ強まる  (監査不信 下)

記事要旨:

 「バカにするな」。昨夏、監査法人の内部管理体制などをチェックする公的機関、 公認会計士・監査審査会の幹部が激怒 する一幕があった。民間の日本公認会計士協会の機関紙に「審査会の検査は不要」ととれる批判的な論文が載ったためだ。

 公認会計士・監査審査会が、公認会計士協会による監査法人の検査結果を再チェックする体制になったのは04年春。それから 1年半は中小監査法人や個人の会計士の検査に費やした。

 「こっちの計算ではこんなに利益は出ない」
 「会計基準に幅があるからなのですが・・・」

 ある4大監査法人の担当者は審査会の追及に戸惑いを隠せなかった。会計士が署名済みの複数の 監査結果に対し、当局が疑義を呈する のは異例だったからだ。

 検査もすんなり進まなかった。監査意見を出すために監査法人がどんな調査をしたか 、一部では 記録さえ残されていなかった。いい加減な仕事も多く、検査に手こずる案件が続いたという。

コメント:

 機関紙にどういう記事が出ていたのか知りませんが、監査のような専門的で判断を要する領域について、官の規制は最低限にして自主規制を重視すべきだというのは、ひとつのまっとうな意見です。それに対して、批判されたと受け止めて怒り出すような了見の狭い人物が審査会の幹部にいるとは驚きです(記事は大げさに書いているのだとは思いますが)。反対意見があるのなら、同じ機関紙(JICPAジャーナル?)やほかの新聞・雑誌に寄稿し、論拠を示して反論すればいいのです。

 審査会が1年半もかけて中小監査法人や個人会計士事務所の検査をやっているとは知りませんでした。しかし、1年半も検査をやっているのなら、何らかの結論が出ているはずですが、それが公表されていないのはなぜなのでしょうか。監査の品質管理体制の整備が急務であることは誰もが認めているのですから、検査が終わった範囲だけでも、問題点を明らかにし、改善につなげるべきです。もし、まだ終わっていないとすればお役所仕事といわざるを得ません(そんなことはないと思いますが)。

 また、検査の結果、会社の決算の利益が違うと判断し、監査人の説明にも納得しないようなことがあれば、審査会独自のリソース(ASBJ、日本公認会計士協会、学者など)を駆使して、本当に間違っているのかを確かめ(必要であれば会社に出向いて事実関係を確かめ)たうえで、会社に有価証券報告書の訂正を求めるべきではないのでしょうか。監査人を責めても、監査人の側は、多くの場合、会社の処理が正しい(または会計基準や重要性からして容認できる範囲である)と判断して意見を出しているのですから、いくら議論してもらちがあきません。さらに、会計基準に幅がありすぎて役に立たないと審査会が判断するのであれば、ASBJや会計士協会に、指針の設定を提案してもいいはずです。

 記事を読む限り、企業会計全体のレベルを上げるというより、会計士の細かいあら探しに熱心なだけではないかという「疑義」を感じます。しかし、審査会の実際に検査をやっている部門の幹部には企業会計や会計監査の専門家が全くいない(そこがSECと大きく違う点です)とも聞くので、それもしかたがないのかもしれません。

2006年5月11日 日経 三菱レ、年金の会計処理 再変更も

記事要旨:

 三菱レイヨンは10日、2007年3月期の予想連結経常利益が前期比47%増の570億円になりそうだと発表した。年金の運用超過分が利益を150億円も押し上げる。 前期から年金運用の利差損益の計上方法を変更したため。

 年金運用の利差損益は「数理計算上の差異」と呼び、プラスの場合は利益に計上する。三菱レは 05年3月期までは5年に分けて損益処理していたが、前期から翌期の一括処理に変更した。

 三菱レの袋谷勝義常務は「差異が予想外に大きくなってしまった。来期以降の処理方法については改めて考えたい」と話した。

2006年5月10日 日経 旭化成、年金運用の利差損益計上 今期から10年償却

記事要旨:

 旭化成は9日、2007年3月期から年金運用の利差損益の計上を10年間の定額計上に変更すると発表した。従来は発生した翌期に一括して計上していたが、 年金の運用成績によって毎期の利益額が大きく変動する弊害があった。

コメント:

 旭化成は2003年3月期に数理計算上の差異の一括償却に変更 しています。せっかく 遅延認識が認められているのに、わざわざ一括償却に変更すれば、「年金の運用成績によって毎期の利益額が大きく変動する」ことはわかりきっていたはずです。それを4年でまた元に戻すとは、あまりに節操がなさすぎます。三菱レイヨンも同じです。まともな監査人なら特別な理由がない限り変更を認めるはずもありません。

 もちろん一括償却が間違った処理だというわけではありません。損益変動が激しくなりすぎるのであれば、米国基準の新基準案のように、貸借対照表上は遅延認識を認めないで(つまり退職給付債務と年金資産の差額をそのまま計上し)、損益計算書上は遅延認識を認めるという方法を、日本の基準として考えるのもいいと思います。
 
参考: 旭化成2006年3月期決算短信 (PDFファイル) 

2006年5月11日 Yomiuri On Line  中央青山に一部業務停止命令、7月から2か月間

記事要旨:

 金融庁は10日、カネボウの粉飾決算事件で所属していた公認会計士が逮捕、起訴された中央青山監査法人に対し、不正を防ぐための 内部管理体制に重大な不備があったとして、上場企業などに対する「法定監査」業務を7月1日から2か月間停止する処分を命じた。

 金融庁は処分理由として、所属会計士が行った監査内容のチェックが実質的に審査担当者だけで行われ、法人内の審議会が有効に機能していなかった ことなどを挙げた。カネボウの監査でも、粉飾決算が行われた5年間、監査内容が適切かどうかを 一度も審議会に諮ったことがなかった

コメント:

 金融庁のプレスリリースに書かれている監査法人に対する処分の理由は以下のとおりです。記事に書いてあるような内部管理体制の重大な不備というより、財務諸表の虚偽表示を見逃したこと自体が処分理由です。

「カネボウの平成11年3月期、平成12年3月期、平成13年3月期、平成14年3月期及び平成15年3月期の各有価証券報告書の財務書類にそれぞれ虚偽の記載があったにもかかわらず、同監査法人の関与社員は 故意に虚偽のないものとして証明した。」

 このほか、監査法人の運営に関して以下のような不備を指摘しています。

(1) 審査体制が、レビュー・パートナーによるレビューに過度に依存 し、審議会による審議やインターナル・レビュー、モニタリング等が有効に機能していなかった。

(2) 監査法人として、レビュー・パートナーが判断の拠り所とする基準・マニュアル等が適切に整備されておらず、レビュー・パートナーによるレビュー業務が有効に機能していなかった。

(3) 投書への対応について、十分な仕組みが用意されていなかった。

 記事によれば、カネボウの場合、合議制の審議会がまったく開催されていなかったようです。日本の風土の中で、ひとりのレビュー・パートナー(審査担当者)が、監査チームのパートナー(通常2,3名)と対決して、筋を通すことができるのかという点は、たしかによく考えるべきだと思います。

参考: 監査法人及び公認会計士の懲戒処分について (金融庁)、 当法人に対する行政処分について

2006年5月10日 MSN  中央青山監査法人:業務停止処分 今年7月から2カ月間

記事要旨:

 金融庁は10日、カネボウの粉飾決算事件に絡み監査内容の審査体制に重大な不備があったとして、中央青山監査法人に業務停止処分を出した。今年7月からの2カ月間、上場企業などに対する法定監査業務を、一部の例外を除いてすべて停止するという厳しい内容。

 会社法は、監査法人が業務停止処分を受けると監査契約が無効になると規定 。中央青山の監査対象のうち、会社法に基づく監査を受けている企業約2300社との契約はすべて無効になり、企業側は 6月末までに株主総会で新たな監査法人を選任するか、処分期間終了時までの 「一時監査人 」を選任する必要に迫られる。処分期間終了後の再契約は可能だが、既に企業の間では監査契約見直しの動きが広がり、中央青山の経営への影響は避けられない情勢だ。

 業務停止期間に特例を設け、決算期が4、5月など、今から監査法人を変更、選任するのが難しい企業については監査業務を継続できるようにした。中小企業などが対象の任意監査についても処分の対象から外した。

コメント:

 この処分については、いろいろと議論すべき点がありますが、ここでは、監査クライアントへの影響を中心に考えてみます。

 会社法では、337条で「公認会計士法の規定により、第四百三十五条第二項に規定する計算書類について監査をすることができない者 」は会計監査人になることができないとされています。会計監査の手続を行い、報告書を出すという業務だけであれば、業務停止期間中を避けて作業すればできないわけではありませんが、会社法では、 会計監査人は取締役などと同じ会社の機関という位置づけになっており(監査人は会社から独立していなければならないのに会社の機関として扱うのは間違った立法だと思いますが)、1日でも監査人不在の期間があってはいけない(したがって欠員が生じたら遅滞なく選任する)ことになります。

 そこで、「一時会計監査人」(会社法346条第4項)を選任しなければならないわけですが、依頼される側からすると、様々な問題があります。中央青山のケースでは、2ヶ月間だけの一時会計監査人となるのでしょう。実際の監査は中央青山がやるとすると、一時監査人は2ヶ月間何をやっていればいいのでしょうか。単に名前だけ使わせるのであれば、職業倫理上禁じられている名義貸しにならないのでしょうか。また、2ヶ月間だけとはいえ、監査人になる以上、独立性に関するチェックを厳格に行う必要があります。報酬はほとんどもらえないのに、多大なコストをかけて、独立性チェック(株式の保有や人的関係など)を行い、同時提供が禁止されている非監査業務をやっていた場合には、そちらの契約を解除しなければなりません。そんなことをやってくれる人のいい監査法人はあるのでしょうか。

 それでは、正式の監査人交代手続を(3月決算会社の場合)6月末の株主総会で行う場合はどうなのでしょうか。まだどこの監査法人も3月決算の監査の最中です。最近公表された 監査人交代に関する監査基準委員会報告書では、従来以上に業務の引継を重視しています。7月からは業務停止になってしまうわけですから、6月までに引き継ぎを完了させなければなりません。また、独立性のチェックも契約前に完了し、違反があれば速やかに解消しなければなりません。港陽監査法人の場合ですら大騒ぎになったくらいですから、たいへんな混乱が予想されます。さらにゴーイングコンサーンの注記がついているような会社は、引き受け手は現れないでしょうし、そもそも、各監査法人とも人手不足が続いており、仕事をとりたくても。人員を確保できなくてことわるケースが続出するでしょう。(すでにいくつかの会社が監査人交代を発表していますが、処分発表後の数日間で、後任監査人が契約前に必要な手続を行うことができるわけもないので、事前に準備していたのでなければ、監査基準委員会報告書違反の疑いがあります。)

 仮に名目的な一時監査人を確保できたとして、影響はないのでしょうか。7月からという業務停止の時期は、3月決算会社への影響を考えたもののようですが、例えば、資金調達のためにコンフォートレターを出してもらう場合には、7、8月になる場合もあります。業務停止だからコンフォートレターも出せないということだと、企業の資金調達にも影響します。また、東証マザーズ上場会社は、四半期決算に監査人の関与を求めているので、7,8月であっても影響が生じます。新年度の監査計画の策定や、四半期や9月中間決算の打ち合わせなどもストップするので、四半期や中間決算の方針を固める作業にも影響するでしょう。

2006年5月10日 asahi.com  金融庁、中央青山に一部業務停止命令 7月から2カ月間

記事要旨:

 金融庁は10日、所属公認会計士がカネボウの粉飾決算に加担した中央青山監査法人に対して一部業務の停止を命令する処分を発表した。処分対象は会社法、証券取引法などが義務付ける上場企業や大企業向けの「法定監査」で、期間は7〜8月の2カ月。同日、中央青山の奥山章雄理事長は執行部の一新と名称変更を正式発表。中央青山と提携する米国の大手会計事務所 プライスウォーターハウスクーパース(PwC)も中央青山への支援継続と日本での新監査法人の設立を発表した。中央青山との監査契約を解除した企業の 受け皿作りが狙いとみられる。

 PwCはトヨタ自動車やソニーなど国際展開する企業の監査業務を中央青山と一体で実施しており、 中央青山の業務停止で世界展開の一角が崩れる のは痛手。中央青山に出資する社員身分の会計士が、処分中に別の監査法人を設立できないため、代わって新法人の設立に動いたとみられる。

コメント:

 4大監査法人はそれぞれ海外の会計事務所と提携関係(中央青山であればPwCと)にあります。日本の監査法人からすると、日本のクライアントが海外で資金調達する場合のサポート(特に米国上場会社の米国基準による財務諸表の監査)と、日本の会社の海外子会社の監査をやってもらっています。逆に、海外事務所からは、海外の会社の子会社が日本にある場合、その監査を日本の提携事務所に依頼しています。

 PwCからすると、中央青山は全くの別法人ですから、どうなろうと直接関係はありません。しかし、日本の親会社(例えばトヨタ)の監査人が変更になれば、海外子会社の監査人も多くの場合変更先の提携事務所に奪われてしまいます。また、海外会社の日本子会社の監査が同じ会計事務所グループでできない事態になれば、サービスが低下するだけでなく、他の監査人への強い関与を求める最近の監査基準の動きにも対応できません。

 そこで、PwCは中央青山に代わる日本における提携事務所の設立に動いているのでしょう。報道によれば、金融担当大臣も「監査内容がしっかりとしていれば、新法人を批判するつもりはないとの見解を示した」そうですから、実質的にこの新法人が中央青山のクライアントと職員を引き継ぐ受け皿法人になる可能性は高いとみられます。(ただし金融庁が業務停止のがれの脱法行為だと主張すれば、ごく限られた範囲のクライアントしか吸収できませんが・・・。)

 また、新法人が受け皿にならないと4大法人の一角が崩れてしまい、監査の寡占化がさらに進むことになってしまいます。世界的にも、4大会計事務所の寡占化が問題となっており、日本が震源地となってさらなる寡占化が進めば、金融庁も大きな批判を国際的に浴びることになります。

参考: PricewaterhouseCoopers Response to Sanctions Against ChuoAoyama in Japan (PwCのプレスリリース)、 英FT紙、金融庁による中央青山処分を批判  

2006年5月3日 日経  洋カン 前期247億円減損を計上

記事要旨:

 東洋製缶は2日、2006年3月期に247億円の減損損失を計上すると発表した。05年9月中間期に計上した子会社関連の減損に加え、新たに金属缶やプラスティックフィルムの製造工場を減損処理する。同社は「 期首時点では想定できなかった」と説明している。

コメント:

 減損会計は2005年9月中間期から強制適用なので、中間期末時点で固定資産に減損の兆候があり、キャッシュ・フローで固定資産の簿価を回収できないことがわかった場合には、中間期で減損処理をしなければなりません(細かいことをいうと期首時点で想定できなかったからといって中間期で処理しない理由にはなりません)。

 ちなみに、同社は2005年9月中間期に、固定資産の耐用年数見直し により、 約97億円の臨時償却(特別損失)を計上しています。また、半期報告書提出から1ヶ月後の 今年1月末に約200億円の減損損失計上見込みを公表 しています。つまり、中間期では耐用年数見直しのため、固定資産の今後の使用状況を検討していたにもかかわらず、1ヶ月後になって急に減損損失の計上が必要になるような事象が生じたということになります。

 同社は中間期では代行返上益、本決算では信託設定益を計上し、中間期、通期とも赤字にならないようにしています。いろいろと苦心のあとがうかがえる決算内容です。

参考: 同社のプレスリリース (PDFファイル)、 東洋製缶のIRページ

2006年5月2日 日経  丸一管の純利益、2期連続で最高、前期、年7円増配へ

記事要旨:

 丸一鋼管の2006年3月期の連結純利益は前の期比16%増の137億円 程度になったもようだ。 従来予想を6億円上回り、2期連続で過去最高 を更新した。

 連結売上高は14%増の1190億円、連結経常利益は1%増 の230億円前後となったもようだ。従来予想よりそれぞれ5億円多い。

 連結営業利益は4%減の196億円程度となったが、05年7月に出資した台湾の鉄鋼大手中国鋼鉄(CSC)系の 投資会社からの配当も加わり、純利益が上振れした。

コメント:

 営業利益が減益(計算してみると約8億円減益)なのに純利益が最高益更新(同じく計算してみると約19億円増益)となっている理由を調べてみると、2つあるようです。

 1つ目は、負ののれんの一括利益計上です(3月7日公表の決算見込み修正に反映ずみ)。四国丸一鋼管という会社を追加取得により連結子会社化し、その際、株式の取得価格(以前から保有していた分を含む)と純資産額との差額約18億円を一挙に特別利益に計上しています。

 2つ目は、投資会社からの配当です。会社の昨年6月30日付のプレスリリースによると、連結子会社を通じ 約57億円を投じて、Winning Investment Corporation という会社の発行済株式数のを 42%取得し、(2005年9月中間期の決算短信によると)持分法適用会社にしています。

 記事でいっているこの投資会社からの配当(この会社は持分法 適用であり配当しても連結決算上利益にはならないので、最終的な投資先からの配当という意味でしょう)がいくらなのかはわかりませんが、従来の予想を上回った原因としてはこの配当のことしか書かれていないので、6億円程度なのでしょう。そうすると57億円の投資(投資期間は9ヶ月)に対して、 約14%の高い利回りをかせいだことになります。

 今年4月から適用になる企業結合会計基準では負ののれんは20年以内に規則的に償却 することになっていますが、重要性がなければ一括償却も認められていますし、そもそも2006年3月期には適用されないので、一括償却が基準違反というわけではありません。また、配当金についても、投資先の留保利益(取得前に生じたものを含む)の処分によるものであれば利益に取り込むことは可能です。

 つまり、ひとつひとつの会計処理は間違っていないのですが、これらが合わさって最高益だといわれても、本当に会社の実力を示しているのか、疑問に感じられます。


2006年4月29日 日経 三菱商事 更生処分にらみ320億円引き当て
記事要旨:

 三菱商事は28日、豪州で三井物産と共同展開する液化天然ガス事業のグループ間取引などを巡り、東京国税局から 更生処分を受ける見通しになり、2006年3月期決算で法 人税など320億円を引き当てた と発表した。ただ同社では、正式な通知を受けた後に反論する方針。

 三井物産も同日、当局から同様の指摘を受けたことを明らかにした。反論する方針だが当局が調査中で額が不明確として前期決算で引き当て計上はしていな い。

コメント:

 三菱商事と三井物産のいずれも米国基準適用会社なので、引当金(税金)の処理も同じかと思えば、このケースでは処理が別れているようです。多くの会社で は、税務調査の指摘に備えて、未払法人税等は少し大目に計上しているはずであり、その大目に計上した範囲の更生処分であれば新たに引き当てする必要はない のでしょうが、これだけの金額になれば、真剣に考える必要が出てきます。

 やはり三菱商事のように、更生処分を受ける可能性が高い場合には、引き当てするのが正しい処理だと思います。引き当てしたうえで、会社の考え方を主張す ればいいのです。

参考: 三菱商 事のプレスリリース (PDFファイル)、

2006年4月29日 日経  棚卸資産の低価法 今期三井不が前倒し採用

記事要旨:
 三井不動産は28日、2008年3月期から棚卸資産の価値下落を毎期決算に損失として計上する「 低価法 」に一本化されることを受け、07年3月期に前倒しで同基準を適用 すると発表した。保有資産 の除却損なども含め、 特別損失は230億円 を見込む。
 特損230億円の内訳は明らかにしていないが、「この程度の損失額を見込めば十分」(浅井裕史執行役員)。大手では三菱地所や住友不動産も前倒し適用を 検討し、低価法の早期採用が相次ぎそうだ。

2006年4月25日 日経 東急不の前期 特損63億円追加 販売用不動産の評価損

記事要旨:
 東急不動産は24日、2006年3月期に販売用不動産の評価損 として 63億円の特別損失を追加計上すると発表した。08年3月期から棚卸資産の評価基準について、価値下 落分を損失として毎期の決算に反映させる「低価法」に一本化されることを受け、 一部前倒し で 損失処理した。リゾート施設の減損処理も含めて特損は300億円強に上る。

コメント:
 固定資産の減損会計の場合と違って、棚卸資産は基本的には短期で回転するものなので、低価法が強制になるからといって、1年以上も前から対策を立てても 仕方がないと考えていましたが、不動産会社の場合は含み損のある長期滞留資産がまだ相当残っており、事前に計画を練っておく必要があるのかもしれません。
 事前の対策(端的に言うと、低価法強制適用までに計上したいタイミングで損失を計上するための方法)としては、三井不動産のように低価法自体を先に適用 する方法と、東急不動産のようにあくまで従来の強制評価減の考え方で簿価を落としておく方法が考えられます(2期間あれば両方の組合せも可能)。
 また、低価法早期適用といっても、企業会計基準委員会の基準(現在はまだ公開草案ですが)どおりの低価法とする方法だけでなく、何らかの別の方法をとる やり方も考えられます。
 低価法先行適用が市場で評価される傾向が出てくれば、早期適用に踏み切る会社もあるでしょうが、とりあえず、比較的ルールが緩い強制評価減の処理を、従 来よりも厳しめに回収可能性を見積るなどして実施する会社も多いと予想されます。特に2006年3月期(前期)は、新基準が固まっていないので、低価法を 先行適用すると、短期間で2回会計方針の変更になり、注記などが面倒です(また中間と年度の首尾一貫性の問題もある)ので、前倒しでやるとしても強制評価 減の枠組みでやる場合が多いでしょう。

(注)対策を立てても仕方がないと書きましたが、もちろん、基準に準拠した評価減がきちんとできるように事前に仕組みを整えておくことはどの会社でも必要 です。

参考: 「棚卸資産の評価原則に関 する会計基準(案)」の公表

2006年4月28日 日経  SBI前期 経常益88%増

記事要旨:
 SBIホールディングスが27日発表した2006年3月期決算は、経常利益が前の期に比べ88%増え513億円だった。
 投資事業では子会社の株式売却益の計上を 営業利益から特別利益に変更 した結果、28億円の営業減益要因が発生した。

コメント:
 子会社の売却益を特別利益にするというのは正しい変更です。といっても、特別損益の区分にもっていくのはいいことばかりではありません。
 まず、特別損益区分はセグメント情報の対象外になってしまいます(セグメント情報は営業損益区分までです)。発生原因が経常的なものかどうかと、セグメ ント別の情報が必要かどうかは別の問題であり、本来は特別損益(セグメントに区分できるようなもの)もセグメント情報に記載すべきでしょう。
 また、営業損益(または経常損益)と特別損益の区分自体も一般に非常にあいまいです。例えば、資産の評価損もおおきくならないように毎期こまめに計上し たり、処分していれば、経常的な損失として営業損益に計上され、多額になるまで先送りした場合は特別損失(経常損益は痛まない)というのでは、比較可能性 が失われてしまいます。固定資産の処分損益も、それ以前に減価償却を保守的にやっていたかで決まる部分もあります。処分損益も含めて営業活動の成果と考え るのが、首尾一貫しています。
 海外の基準でも、特別損益に計上するのは、非常に限られた場合だけです。すべて固定資産絡みの損益も含めて営業損益区分に計上し、特別な理由で発生した ものは注記するというのが、すっきりします。
 ちなみに、不動産会社では、賃貸用不動産を売却する際、含み益があるものは、いったん棚卸資産(販売用不動産)に振り替えたうえで売却し、売上高と営業 利益に計上する(損失の出るものは特別損失のまま)という処理が、一時横行していましたが、最近は改善されたのでしょうか。

参考: 会計上の表示区分変更に 伴う平成19年3月期 連結業績見通しに関するお知らせの変更

(「2006年4月4日 日経 イートレード株 SBIが売却 ファンド所有分すべて」もご覧下さい。)

2006年4月26日 日経夕刊  三菱UFJ 4000−5000億円資本増強へ 繰り延べ税金資産計上

記事要旨:
 三菱UFJフィナンシャル・グループは(FG)は26日、2006年3月期で 自己資本を4千億−5千億円 増強 する方針を固めた。経営統合で将来の収益見込みが強まったと判断、 旧UFJグループが 経営危機に際して大幅に減額した 「繰り延べ税金資産」を復活して計上する。今夏の公的資金完済や事業の展開に備えて財務基盤をより強固に する狙いがある。
 旧UFJグループは04年9月中間期に巨額の最終赤字を計上し、「将来の収益見通しが不確実になった」として繰り延べ税金資産を大幅に削減した。その分 は処理方針が定まらない「評価性引当金」として、今年1月発足した三菱東京UFJ銀行に引き継いでいた。
 三菱UFJは今回の繰り延べ税金資産計上に伴って決算が大幅に上ぶれするのは望ましくないと判断。 利益に は計上しないように会計処理する 方向だ。

コメント:
 昨年統合したばかりなのに、統合された側の繰延税金資産の見直しにより、自己資本が膨らむというのは、なかなか理解しがたいものがあるので、少し考えて みました。
 まず、三菱とUFJの経営統合の会計処理がパーチェス法 であれば、このような処理にはなら ないはずです。つまり、パーチェス法では三菱がUFJを三菱の株式を対価として買ったという処理になります。通常は、 買った時点の株式の時価で買った値段(取得の対価)は決まり、その金額が資本の部の増加額となりま す。繰延税金資産を(統合時点までさかのぼって)見直して増額しても、取得の対価全体は変わらないので、増額した分、 のれんの金額を減らすだけの話です(要するに取得の対価の配分の問題)。これを繰延税金資産の増額だ け認識して、のれんの減額を処理しなければ、のれんのなかに含まれている(潜在的)繰延税金資産相当額だけ、 資産の二重計上になってしまいます。
 他方、持分プーリング法的な処理であれば、自己資本が膨らむというのもあり得る話かもしれ ません。つまり、資産・負債をUFJの 適正な簿価で引き継ぐ(資本増加額も簿価純資産と同 額)わけですから、 統合時点の繰延税金資産の適切な簿価を見積もり直せば、その分、資本増加額も変更 することになります。利益に計上しないというのは統合時の資本増加額(資本金増加額は動かせないので資本剰余金増加額)を増やすという意味でしょう。
 統合時点の簿価を動かさないで、繰延税金資産の見直しによる増加額を利益に計上することも、ダメだとはどこにも書いてありません。2006年3月期は知 らないふりをしておいて、2007年3月期で繰延税金資産をこっそり増額する(または実際に回収する)こともできたかもしれません。その場合は、2006 年3月期の決算は確定している(したがって統合時点までさかのぼることができない)ので、2007年3月期の利益にしてしまうのでしょう。それではあまり にみえすいているので、正直に統合時点の会計処理の修正というかたちにしたのかもしれません。

参考: 三菱UFJのプレスリリース (PDFファイル)

2006年4月25日 NIKKEI NET  外国企業の日本企業買収、「株式交換」の税制整備・政府検討

記事要旨:
 政府は外国株を使った企業買収の解禁に向けて、税制面の整備に乗り出す。外国企業が買収対象である日本企業の株主に自社株を与え、 株式交換方式でM&A(企業の合併・買収)を進める際、株 主が外国株を受け取った時点では課税しない 方向で検討する。株主が買収に応じやすいようにし、外国企業による対日直接投資の拡大につなげる。2007年度の税制改正法案に盛り込む見通しだ。

コメント:
 この記事は、M&Aが行われた場合の株主における処理の話です。国内会社同士の合併・株式 交換であれば、税務上(投資先が上場会社の場合)簿価の引継が認められているわけですが、海外会社の株式に交換される場合も、交換差益を認識しない(簿価 を引継ぐ)ことにしようということです。
 ただし、これはあくまで税務上の処理であり、会計上は別の処理 になります。
 企業結合適用指針の「R 結合当事企業の株主に係る会計処理 」では、投資先が「 被結合企業(企業結合会計基準の被取得企業と同じ?)」の場合と「 結合企業 (同じく取得企業と同じ?)」の場合に分けて、細かく規定しています。非常に読みづらい指針ですが、要するに元々の投資先が「被結合企業」の場合は交換差 損益を認識し、そうでない場合は処理をしないということのようです。(子会社や関連会社の場合については別にいろいろ細かく決めています。)
 指針には、国内企業に限るとは書いていないので、外国会社の株式と交換された場合も同じ指針が適用されます。
 株主は、投資先で企業結合が行われた場合、それが結合企業(買収する側)なのか被結合企業(買収される側)なのかを確かめて会計処理する必要がありま す。また、財務会計上の処理と税務上の処理が異なるので、税効果会計を適用しなければなりません。

2006年4月21日 日経  信頼回復へ自主規制強化 (会計士協・藤沼亜起会長に聞く)

記事要旨:
 日本公認会計士協会の藤沼亜起会長に監査の信頼回復に向けた方策などを聞いた。
−−監査法人に対する規制強化を求める声が出ている。
自主規制が重要だ。民間でできることは可能な限り民間でやり、官は残る部分を補完するのが 国民経済にとって効率的だ。上場会社を監査する監査法人や会計事務所は、特別な規律を持たせるため、協会に『上場会社監査事務所部会』を設け登録させる構 想を持っている」
−−協会による監査法人への監視の強化も重要になる。
「会計士協は定期的に、監査法人の品質管理体制についてレビューを実施している。(中略)問題がありそうな事案が出てきた場合、問題事案を個別に調べる協 会内の監査業務審査会に回す。同審査会は、従来のようにすでに発覚した問題だけでなく、 レビューでみつけた現在進行形の問題への対処 も増える。」

コメント:
 会計士協会のスタンスは会長のインタビューにもあるように「自主規制の強化」ということですが、実際には、公認会計士法改正以降、自主規制ではなまぬる い、官による監視はきつくすべきだという方向に流れているようです。
 そして、大手の監査法人は、金融庁(公認会計士監査審査会)の検査を通じて、官による規制強化と、その非効率性を身にしみて感じているとも聞きます。例 えば、昨年後半から始まった検査が、監査法人にとって超繁忙期である4月になってもまだ終わっておらず、関係者が検査側の都合でたびたび呼び出されている とも聞きますが、それが本当だとしたら、3月決算の監査に支障を来さないのでしょうか。
 会計士業界の外からの監視がある程度必要なのはわかりますが、監視する方も、監査実務・理論を熟知し、実務家が納得できる指導を行えるだけの体制をつ くってほしいものです(金融庁では、指導ではなく「摘発」だと考えているのかもしれませんが)。金融検査には金融検査マニュアルがあるわけですから、監査 事務所の検査のためにも、まず、監査事務所検査マニュアルを作成公表し、検査の効率化と公正性の確保をはかるべきでしょう。
 官による規制強化は、監査の実務やクライアントとの関係にも影響を及ぼすでしょう。形式的に調書さえきれいにつじつまが合うようにできていればいいとい う方向に向かうかもしれません。クライアントとの関係もよりビジネスライクになってきます。前の年に認めた処理だから今年も認められるというふうには考え ない方がよいでしょう(これはいいことなのかもしれませんが)。また、会計基準の解釈があいまいな領域や判断の要素が強い領域については、会社が行った解 釈や判断を認める余地がないか監査人は会社と協議しながら検討するわけですが、これも検査側から疑念をもってみられたら、会社と共謀して不正な開示を行っ たことになってしまいますので、 より慎重にならざるをえなくなるでしょう。
 官による規制強化(特に監査事務所への金融庁の検査)や協会によるレビューの強化により、影響を受けるのは監査人だけではありません。会長の発言にもあ るように、従来は会社が破たんしたり(あるいは大きな不祥事としてマスコミ報道されたり)しない限り、会社の会計処理が問題になることはなかったわけです が、今後は検査やレビューで過年度の財務諸表の修正につながるような不備事項の見逃しが発覚すれば、監査人の責任が問われるだけでなく、財務諸表作成者も 責任追及されます。金融庁が監査法人の検査で摘発を狙っているのも、もしかしたら監査人ではなくおかしな処理をしている会社自体なのかもしれません。

2006年4月19日 NIKKEI NET  阪急、共同持ち株会社案も・阪神株買い取りで

記事要旨:
 阪急ホールディングス(HD)による阪神電気鉄道株の買い取り 構想で、新たに共同持ち株会 社方式で経営を統合する案が浮上していることが19日、分かった。両社が共同持ち株会社をつくるなど 阪急と阪神がほぼ対等の位置付け になる仕組みを検討している。最終的には共同持ち株会社の傘下に両グループの電鉄会社などを並べる。阪急に よる「救済色」を薄め、阪神も応じやすい仕組みにする狙い。
 今回の案では、阪急HDがいったん阪神株を買い取った後、共同持ち株会社形態に移行するか、新たに共同持ち株会社を設立し株を買い取るのかなどはまだ詰 まっていないもよう。

コメント:
 阪急と阪神がほぼ対等の位置付けになる仕組みを検討しているとのことですが、会計処理上はどうなのでしょうか。
 阪急HD(あるいはその子会社)が村上ファンドから阪神株を買った時点で、 阪神は阪急HDの子会社(少な くとも関連会社) となって連結グループ入りし、その際にはパーチェス法が適用されます。その後、いくら共同持ち株会社を作っても、連結グループ内の取引ですから、阪急HD の連結決算上は、何ら影響を与えません。また、共同持ち株会社を、阪神株を引き取った後に設立しても、あるいは、最初から設立しておいても、阪急HDの連 結決算上は何ら影響を与えないはずです。
 つまり、会計上は、阪急が阪神を買ったという処理にならざるを得ないということです。すなわち、阪神の資産・負債の含み損益はすべてオンバランス化さ れ、正負いずれかののれんが計上されるということになります。
 なお、その後の報道では、「百貨店部門は持ち株会社の外 に置き「阪神―阪急百貨店」(仮 称)とする案が有力」(NIKKEI NET4月23日)とのことですが、 阪急百貨店はもともと阪急ホール ディングスの関係会社ではない ので、そうせざるを得ないのでしょう。阪神百貨店の方は阪神電鉄の100%子会社なので、阪神電鉄を子会社化すれば、自動的に阪神百貨店が付いてくるわけ ですが、そのあとに、阪急百貨店とくっつける取引が必要になります。
 パーチェス法による処理では、阪神電鉄株の取得価額を阪神電鉄の資産・負債に配分しなければなりません。その際の阪神百貨店の株式の評価がどうなるかに よって、阪神百貨店と一緒になる阪急百貨店の財務諸表にも影響が及びます(ただし、阪急HDによる阪神百貨店株の評価と阪急百貨店による評価が一致させな い場合には影響しない可能性もあります)。さらに細かいことをいえば、阪神電鉄の少数株主を残したまま統合するのであれば、全面時価評価法と部分時価評価 法のどちらをとるかによっても、阪神百貨店を切り離した際の阪急HDの会計処理が変わってきます。
 ソフトバンクのボーダフォン買収に次ぐ、大規模なM&Aですので、会計処理の面でも注目したいと思います。

2006年4月18日 日経  ABCマート連続最高益 前期経常156億円

記事要旨:
 エービーシー・マートが17日発表した2006年2月期の連結決算は、経常利益が前の期に比べ44%増の156億円だった。2年連続で過去最高を更新し た。
 通貨オプション取引の解除益として 42億円 を特別利益に計上したため、純利益が膨らんだ。

コメント:
 通貨オプションのようなデリバティブ取引を行う目的は、投機とヘッジ のいずれかになりま す。投機目的の場合やヘッジ目的でもヘッジ会計適用の要件に当てはまらない場合、デリバティブは時価評価され、その評価差損益は毎期(営業外の区分に)損 益計上されます。
 ABCマートの決算短信を見ると、「当グループは、通常の営業過程における 輸入取引の為替相場の変動によ るリスクを軽減 させるため、先物為替予約取引(主として包括予約)及び通貨オプション取引を利用しております」と書かれており、輸入に係る為替リスクを減らすというヘッ ジ目的のデリバティブ取引をおこなっているようです。したがって、通常であれば、デリバティブで利益が出ても、仕入額のマイナスという処理になり、特別損 益項目に計上されることはありません。
 また、ヘッジ手段が(解約などにより)消滅した場合の利益は、 ヘッジ対象の損益が認識されるまで繰り延べる(実務指針180項)とされているため、多額の利益が特 別利益に一挙に計上されることはないはずです。ヘッジ対象としていた取引が予定と違って実行されないことが明らかになった場合は、 ヘッジ会計が終了するので、ヘッジ手段に含み益があれば利益が計上されます(実務指針181項)が、 決算短信にはヘッジ対象である輸入取引をやめるとは書かれていません。
 ヘッジ会計については人に解説できるほど詳しくないので断定はしませんが、少し異常な取引のようにも思えます。最終損益に相当の影響を与えているのです から、決算短信の注記でもう少し親切に説明してもいいのではないでしょうか(もしかするとどこかに詳しく書いてあるのかもしれませんが・・・)。

参考: ABCマートの 決算短信(2006年2月期) (PDFファイル) 

2006年4月15日 MSNニュース  アイフル:全店業務停止 業界への不信、規制強化に流れか

記事要旨:
  なけなしの生活費を強引に取り立てる。認知症の親族から担保を取る……。債務者とのトラブルが絶えなかった消費者金融大手アイフルに金融庁が 厳しい行政処分を科した。背景には一向に解決の糸口が見えない多重債務者問題がある。今回の処分は業 界への不信感を加速させ、規制強化の流れを作るとみられる。
 金融庁が違法行為を認定したアイフルの北海道、近畿、九州などの5店舗では、委任状の偽造や勤務先へのしつこい督促電話など、過酷な取り立てが繰り返さ れていた。
 それ以外でも、債務者が訴訟を起こす例が相次いでいる。神戸市の女性債務者(71)の場 合、昨年1月に同社従業員が訪れ、「手ぶらでは帰れない」と玄関で怒鳴り、生活費5000円を取り立てたという。
 不動産に抵当権を設定して融資する「不動産担保ローン」のトラブルもここ2〜3年で急増している。大分県では、認知症で入院している債務者の父親に署 名・押印させて抵当権を設定。登記抹消を求める訴訟を起こされた末、債務者側の請求に応じる「認諾」をした。このケースは「重大な犯罪行為」として 行政処分を申し立てられた

コメント:
 2005年3月期のアイフルの決算短信のリスク情報には以下のような記載がなされていま す。

「(重要な訴訟事件等の発生について)
当社グループには、現在重要な訴訟係争中の案件は存在しません が、一部の団体により当社によ る債権回収行為を理由として行政処分等を申し立てた旨の報道がなされていることを認識しております。現時点では当該団体の具体的な主張は明らかにされてお りませんが、将来、訴訟等を提訴がなされる可能性があります。これにより、新たに予定しない費用が発生し、また、このような訴訟がマスコミに報道されるこ とにより、不安を与えその信用を失うこととなり、その結果、新規顧客の獲得、株価形成、資金借入等に影響が生じ、その結果、当社グループの業績に影響を及 ぼす可能性があります。」

 実際は「一部の団体」の主張どおり、行政処分が行われたわけであり、リスク情報としてこの程度の書き方でよかったのかどうか(特に「現在重要な訴訟係争 中の案件は存在しません」と言ってしまってよかったのかどうか)は、今となって思えば非常に疑問です。(書いてあるだけましという見方もあるかもしれませ んが・・・)

参考: アイフルのプレスリリース (PDFファイル)、 アイフル株式会社に対する行政処分について

2006年4月13日 MSNニュース(毎日)  USEN:ライブドア吸収を検討 株式交換で完全子会社化

記事要旨:
 USENは12日、粉飾決算を問われて14日に上場廃止となるライブドアの全株を取得し完全子会社化する検討に入った。
 完全子会社化は、USENが新たに発行する株式とライブドア株を交換する「 株式交換 」方式 で行う案が有力。USENとライブドアの株主総会でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要で、両社が合意した場合は6月にも臨時株主総会を開き提案する方向で 調整している。
 一方、フジテレビジョンなどライブドアの株価急落で損失を被った旧株主はライブドアに 損害賠償 を求める構え。このため、事業部門とは分離する資産管理部門は、損害賠償問題に対応、問題が解決された段階で清算される見通し。USENは3月16日、ラ イブドアの再建を支援するため業務提携を結んだと発表。USENの宇野康秀社長が、フジテレビジョンから約13%のライブドア株を個人で買い取った。
 ただ、USENは今月末まで同社の資産査定を行っており、新たな問題点が見つかれば支援を 取りやめる可能性もある。

コメント:
 USENは株式交換でライブドア株の取得を行うようですが、企業結合会計基準が適用され当然パーチェス法が採用されます。その際おそらく問題となるの が、株主からの損害賠償請求について、引き当てするかどうかという点です。
 株式交換の会計処理の際に引き当てしておけば、実際に賠償する場合の損失は計上されません(引き当ての見積もりが正しければ)。その代わり、(株式交換 で交付する株の評価額は変わらないとして)のれんの金額は膨らむので、のれんの償却費が収益を圧迫します。
 引き当てしなければ、その分のれんの計上は少なくてすみますが、実際に損害賠償を実施しなければならなくなると、損益計算書に損失が発生します。
 もちろん、資産査定では損害賠償請求の可能性(確率)と賠償金額の見積もりも行われ、それは株式交換の際の交換比率(ひいては取得の対価)に影響させる のでしょう。その結果、損害賠償請求見込額を交換比率に反映させるのであれば、それに見合った引き当てを行うのが理屈にあっています。

2006年4月6日 asahi.com 上場企業監査、登録制に 会計士協会が自主規制強化

記事要旨:
 日本公認会計士協会は6日、上場企業を監査する監査法人や公認会計士の個人事務所 に、07 年度から 登録制を導入すると発表した。一定の水準に満たない事務所は登録リストから除名 し、上場企業の監査を続けることが事実上難しくなる。監査法人や会計士の資格停止を決める法的権限は金融庁にしかないが、ライブドアやカネボウの粉飾決算 事件などで会計不信が高まっていることから、 業界の自主規制で信頼回復を図る。

コメント:
 記事は、4月6日に公表された日本公認会計士協会の会長声明の内容を紹介したものです。
 これによると、登録した事務所は、一定水準の監査の品質を確保 するために監査事務所が設定 した 品質管理のシステムに関する方針や手続等を文書化しそれを提出 しなければならず、ま た、規律違反があった場合には登録名簿からの除名を含む処分を受け入れる義務が課されます。米国で行われているPCAOBへの登録制度は公的な機関への登 録ですが、これはあくまで協会の自主規制の制度という位置づけです。とはいえ、制度の運営全般について、公認会計士・監査審査会のモニタリングを受けるこ とになっており、間接的に官の監督を受ける仕組みのようです。
 会計士協会の指導に従わない会計士は、上場会社の監査からはずされるという制度ですので、会社のいうことを聞いてくれるからといって品質管理体制ができ ていない監査法人・会計士に監査を依頼している上場会社は、たいへんな影響を受けることになります(大部分の監査法人・会計事務所は大丈夫だと思います が・・・)。
 なお、今回の会長声明では、登録制度のほかに、包括的な倫理規則の整備(今年の秋の協会臨時総会で制定予定)についてふれています。投資事業組合等に対 する監査をしっかりやるようにとの呼びかけ(「深度ある監査の実施」)も行っています。

参考: 会長声明「公認会計士監査の信頼性の回復に向けて―協会の自主規制機能の一層の強化―」

2006年4月5日 日経  CSI、監査人を変更 売上高計上巡り中央青山と対立

記事要旨:
 電子カルテ販売のシーエスアイは4日、会計監査人を変更したと発表した。中央青山監査法人とは解約、菅井公認会計士事務所(札幌市)と藤田和重公認会計 士事務所(横浜市)を一時会計監査人に選任した。
 CSIは「製品の売上計上時期を巡って見解の相違があった」と説明。電子カルテなどの製品 をこれまで販売代理店を通じて最終顧客に販売。 代理店に販売した時点で売上高に計上 してい た。一方、中央青山は 最終顧客が購入した時点で計上 すべきだと主張したという。

コメント:
 いわゆるオピニオンショッピングの例だと思いますが、財務諸表の作成責任は会社にあるわけですから、監査人とどうしても意見が合わなければ、監査人をや めさせるしかありません。
 しかし、会計基準から外れた処理をすることはできませんから、監査人との意見の相違点をよく見て、判断する必要があります。
 会社のプレスリリースによると、先日企業会計基準委員会から公表された「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」が影響しているよう です。この報告書には「 委託販売として捉えることが適当である場合には、取引の代理人が 最終顧客(エンド・ユーザー)に対して納品を完了した時点 で一連の営業過程における販売が完了する」、「一般的には検収等何らかの形でその 成果物の提供の完了 を確認することにより、収益を認識する」といった記述があります。会社の説明によれば、「取扱い」に従った処理を行っているものの、「一部、 取引に係る文書類の検討や整備を行う必要があるとの認識でもおります」と正直に書いています。
 「取扱い」では、「通常は契約書等を取り交すべき取引において、当該取引に関する契約書等につき、ドラフトしか存在していない」、「本来の顧客(ユー ザー)との間で契約書等を取り交すには至っておらず、第三者であるパートナー(協力会社)との間で契約書等を取り交すにとどまっている」という場合は取引 の実在性に疑義があるとまでいっているので、取引に係る文書類の検討が必要な状況では、監査人として会社の主張をそのまま認めるわけにはいかなかったので しょう。
 さらに同社の2005年9月期の決算短信を見ると、売上高35億円に対し売上債権が22億円もあります。この点も気になります。

参考: シーエスアイのプレスリリース (PDFファイル)、 ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い  

2006年4月4日 日経  イートレード株 SBIが売却 ファンド所有分すべて

記事要旨:
 SBIホールディングスは3日、子会社のイー・トレード証券の株式について、傘下のファンドの所有分をすべて売却し、2007年3月期の連結営業利益に 598億円を計上すると発表した。
 SBI本体が一部を取得し、イートレードへの出資比率を2ポイント引き上げ 53.2%とし た。
 売却した株数はイートレード全株式の19.3%に当たる。SBIが今期連結業績に計上する 売上高 は、ファンドへの出資比率に基づく有価証券売却の成功報酬を合わせ、 656億円 となる。

コメント:
 SBIホールディングスの昨年3月期の有報を見ると、会計方針に以下のように書かれています。
「投資事業組合等に対する出資のうち、連結会社の持分割合が100分の50以上である投資事業組合等が4ファンドありますが、投資事業組合等の収益・費用 又は損益は 持分割合に応じて各出資者に帰属するため、 投資事業組合等は連結の範囲から除外 しております。」(持分法適用に関しても同様の記載があります。)
 連結除外とはいえおそらく比例連結的に出資持分に相当する部分だけ取り込んでいるのでしょう。
 また、SBIホールディングスのプレスリリースによると、イートレード株の売却に伴い発生する売上高の内訳は、 営業投資有価証券売上高526億円 、成功報酬130億円です。イートレード証券の時価総額は8170億円(7日現在)ですから、SBIホールディングスがファンドを通して保有していたイー トレード証券の株式は 全株数の6%強(=526/8170)になります(営業有価証券売上 高と時価を比較して得られたあくまで推定値です)。
 つまり、SBIホールディングスは、従来から実質的にはイートレード証券の株式を57%(=51%+ファンド保有分6%<推定>)保有しており、今回、 4%(=ファンド保有分6%−出資比率引き上げ分2%)を売却したということになります。
 普通に考えれば、この4%の売却による利益は子会社株式の売却 によるものですので、特別利 益となるはずですが、ファンドを通しているために 営業利益計上 となるようです。  
 また、ファンドからSBIホールディングスへ売却された2%分の会計処理はどうなるのでしょうか。時価を取得価額とすると、内部取引による利益が取得価 額に含まれてしまいますので、何らかのかたちで消去されていると思われますが、プレスリリースだけでははっきりしません。プレスリリースには「上記は現在 の会計基準に基づく見通しであり、 将来の基準変更等に伴い、会計上の表示区分その他が変更される可能性があります 」と書かれているので、まだ決まっていないのかもしれませ ん。
 さらに今回の売却自体、会計処理(連結範囲など)の厳格化を意識して行われた可能性もあります。長期保有であれば、ファンド保有分も子会社株式として扱 うべきという考え方が出てきます。

参考: 子会社株式の追加取得お よび平成19年3月期 連結業績見通しに関するお知らせ

2006年4月1日 NIKKEI NET  米、退職給付債務を貸借対照表に反映・会計審が新基準

記事要旨:
 米財務会計基準審議会(FASB)は31日、年金や医療費など退職給付関連債務の開示 を強化する新基準案を提示した。退職給付の 積み立て状況を企業の貸借対照表に反映させる従来は脚注での補足説明だけだった。
 各企業がどれだけ年金や医療費で積み立て不足に陥っているかを投資家により分かりやすく知らせるのが狙い。新基準が適用されると、将来の年金や医療費の 支払いに備えた積立額が足りない企業は、 貸借対照表上の債務が膨らむ。積み立て不足が深刻 な自動車や航空業界などへの影響が大きいとみられている。
 FASBは2006年12月15日以降に決算期を迎える企業から の適用を目指している。今 後2カ月間で意見を公募し、米証券取引委員会(SEC)の承認を得て正式決定する。

コメント:
 (正確に読みとれているかは自信がありませんが)FASBのプレスリリースと公開草案のサマリーをみると、 遅延認識を認めていた従来のやり方をやめて、貸借対照表には、退職給付債務と年金資産(時価 評価)の差額を計上 することにしたようです。ただし、損益計算書には従来どおりの損益を計 上 し、差額を 包括利益計算書にもっていくというややこしいやりかたになって いるようです。記事では、「従来は脚注での補足説明だけだった」と書いていますが、これは間違いであり、年金の積み立て状況は、全く貸借対照表に反映され ていなかったのではなく、長期間にわたって徐々に反映されていたわけであり、今回、それでは毎期毎期の積み立て状況が貸借対照表からは読みとれないから、 基準を改定するということです。
 日本の基準では、退職給付費用として計上されたものしか引当金に計上されないという処理(したがって遅延認識分はオフバランス)ですが、今回の米国基準 案は、 損益計算書には影響を与えないで、貸借対照表だけ債務をフルに計上しようということ のようです。
 提案されている適用時期からすると、3月決算会社の場合、2007年3月期(つまり当期)から影響が出てきます。米国基準適用会社については要注意で す。

参考: FASBのプレスリリース

2006年4月1日 日経  大ガス、前期純利益52%増 LNG精算金など寄与

記事要旨:
 大阪ガスは31日、2006年3月期の連結純利益が前の期比52%増の770億円になったと発表した。関西電力の液化天然ガス(LNG)受託加工契約改 定によって精算金を得たほか、子会社だったキンレイの株式売却益もあり特別利益が増えた。
 大ガスは関西電からLNGを気化、送出する業務を受託していたが、関西電が堺市で自前の加工設備を稼働。 07年3月期からの受託規模が予定の70万トンから20万トンに減った 。契約改定に伴い大ガスは 関西電から精算金を受け取り、 230億円を特別利益に計上 した。
 大ガスは同時に07年3月期の連結業績予想を発表。経常利益は14%減の865億円になる見通し。 LNGの受託加工が大幅に縮小 することが響く。

コメント:
 230億円の精算金については、契約に基づいて関西電力と合意のうえで受け取ったのでしょうから、問題のない利益だと思います。しかし、受託加工の規模 が大幅に縮小することにより、設備の減損処理などは必要なかったのでしょうか。

参考: 大阪ガスのプレスリ リース

2006年4月1日 日経  CSKHD前期144億円の特別益 信託受益権売却で

記事要旨:
 CSKホールディングスは31日、東京都港区の本社ビルと定期借地権などの信託受益権 を同日で プラザ青山有限会社(東京・千代田区)に譲渡したと発表した。2006年3月期に 連結ベースで 売却益144億円を特別利益に計上する。

コメント:
 会社のプレスリリースによると、売却した建物は「引き続き当社および当社グループの本社、事業拠点として利用する予定」とのことです。 リースバックしたからといって、オフバランス処理が認められないわけではありませんが、譲渡先として ペーパーカンパニーの名前しか明らかになっていないのは、ライブドア事件の後だけに気になります。

参考: CSKホールディ ングスのプレスリリース

2006年4月1日 日経  A&I最終赤字 前期、大型案件中止で特損

記事要旨:
 情報システム構築のエー・アンド・アイシステムは31日、2006年3月期の連結最終損益が26億3100万円の赤字だったと発表した。 30億円前後を見込んでいた顧客情報管理システムの大型案件がなくなり、 22億円強の棚卸資産評価損 を特別損失に計上する。
 最終赤字に転落したことから、同社は1億1600万円の債務超過となり「早期に資本提携などを模索する」(経営企画管理室)としている。

コメント:
 受注したプロジェクトがうまくいかず、赤字になるということ自体は、どこの会社でもあり得ることであり、その損失が適時に計上されている限り、会計上は 特に問題とはなりません(原価の先送りなどの不正がない場合の話ですが・・・)。
 しかし、この記事のケースは、会社の規模と比べて損失が大きすぎます。数十億円規模の受注が突然なくなってしまうというのは、すぐには信じられません。 受注に関する内部統制に何らかの不備(例えばきちんと条件が詰まっていないのに、多額の原価が発生してしまうこと)があったのかもしれません。そこで同社 のリスク情報(平成18年3月期中間決算短信(連結)に記載したもの)をみると、以下のような記載があります。

「一括請負契約による受託においては、受注時には利益が計画されるプロジェクトであっても、予期し得ない理由により、当初見積以上に作業工数が発生するこ とによって、コストオーバーランが発生したり、納品が遅延し、損害賠償の請求を受ける可能性があります。また、これにより訴訟を含めた係争に発展する可能 性もあります。
 当社では、サービス品質をさらに向上し、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、 受注時の見積段階 からリスク要因のレビュー等による見積精度の向上とリスク管理の徹底を図る とともに、プロジェクトマネジメントスキルの向上と、当社独自の開発方法論の活用推進、CMMI(Capability Maturity Model Integration)の推進等、品質管理体制の拡充、強化に努めております。しかしながら、赤字プロジェクトが発生した場合には、業績に影響を与える 場合があります。」
 こうした受注時のリスク管理が適正に行われているのなら、自社の負担できる範囲を超えるような大きなリスクを負うことはなかったはずですが、どういった 事情があったのでしょうか。

参考: エー・アンド・アイ システムのプレスリリース (PDFファイル)

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