「シッコ」
監督
製作 マイケル・ムーア
脚本
題名のSickoとは「病人、狂人、変人」等を揶揄する俗語で、尿ではないという。
マイケル・ムーアは、02年「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアメリカの銃社会を、04年「華氏911」では、イラク戦争のウソを暴き、ブッシュ政権を批判するドキュメンタリー作品を発表し、高い評価をえた。今回はアメリカの医療制度を告発している。
ニューヨーク州に居住する、アメリカ人と結婚した友人が、この7月に入院手術を受けた。先進国で唯一国民健康保険制度のないアメリカでは、病気にそなえて民間の保険会社に医療保険として、多額の掛金を支払っている。治療を受ける場合、病院側よりの綿密な審査があるという。友人は手術後すぐに帰宅を許されたが、保険会社の負担減のためだ。5,000万人が無保険者で、毎年1,5万人が治療が受けられずに、死んでいくという。
保険に加入している人達も安心かというとそうではない。ムーア監督は、そのことの問題点を鋭く追及する。カナダ、イギリス、フランスの医療費無料制度とも比較する。フランスの病院に会計があるが、これは、患者が医療費を支払う窓口ではなく、患者がタクシー代を支払って来院した場合の、弁済窓口というから驚きだ。
アメリカで、無償治療が受けられるところに、国際テロ組織アルカイダの一味が収監されている、キューバのグアンタナモ海軍基地がある。そこへ01年9月11日で救命作業のために健康を損ない、満足な治療を受けられていない救命員を連れていくが拒否される。しかし「敵国」キューバでは、無償で手厚い治療を受けることができた。ムーア監督はこの作品をここで終らせなかった。この9,11の救命員が、キューバの消防署に英雄として招待され、署員の熱烈な歓迎を受けるラストショットを撮ったことだ。テロは国籍や社会体制の違いをこえて、共通の克服課題なのだ。次回は劇映画にも挑戦してほしい。
日本の医療制度の改悪は、00年4月1日からの介護保険制度。8年4月1日からの75歳以上を対象とした、後期高齢者医療制度が導入され、しかも、有無をいわせず年金から天引きされる。70年代、65歳以上の高齢者の医療費は無料だった。他国の例ではない。