「JUNO」
監督 ジェイソン・ライトマン
脚本 ディアブロ・コデイ
主演 エレン・ペイジ/マイケル・セラ
16歳の高校生が、妊娠・出産する。父親は高校のクラスメート。日本ならばテレビドラマ「14歳の母」(2006年)杉田かおるの「金八先生」(1979年)を思い浮かべ、教師・学校当局をも中心に、物語りは進展するのが常識だが、この作品にはそのことは全く登場することはない。男の子を描いた青春映画に「スタンド・バイ・ミー」等の傑作はあるが、女の子を描いた作品はあまりない。この作品はその意味からいっても優れたものといえる。高校生にも是非見て欲しい。
ジュノ(エレン・ペイジ)は、ポーリー(マイケル・セラ)とセックスして妊娠する。中絶も考えるが、中絶反対中の同級生の「赤ちゃんツメも生えてるよ」に考え直し、タウン情報誌で養子縁組を望む夫婦を探し出し、両親にも妊娠を報告する。出産までの紆余曲折もあるが、ジュノが母親になる家のドアに貼りつけた、メッセージがラストに結びつく。
映画は脚本の良し悪しによって、その評価を決定ずけるといっても過言ではない。この作品が本年度のアカデミー賞の、最優秀脚本賞となったのも十分納得できる。養子縁組の父親となる男性の描き方に、何となく違和感があったが、30歳になったばかりの女性ライターとなると、頷けるものがある。高校時代に親友が妊娠し、出産を決意したときの実話がモデルという。この作品でジュノの親友であるリアという女子校生が登場し、何かと手助けするが、脚本家自身のことでもあったと思われる。
十代の妊娠は、アメリカでも社会問題で20歳までの間に妊娠する女性は全体の3分の1。その大半が望まぬ妊娠であるという。先進国のアメリカでも、性教育は十分ではないことが伺える。ジュノが妊娠したことで、両親やその他の人達が、16歳という低年齢、そして「誤ち」ともいえる行為にもかかわらず、ひとりの人間としての権利、人権を認め、接する態度こそ、この作品が共感を呼び、諸外国にも高く評価されるものといえるだろう。
性を科学的、人権の立場で拡めた人に、山宣こと山本宣治(1889〜1929)がいる。1920年代の大正末期から昭和初期にかけて、「産めよ増やせの」軍国主義の時代、性科学を大学生に教え、無産者のために「産児制限運動」を説き、当局の妨害にあって、京都大学、同志社大学を退任させられる。その後本人の意思にも反しながらも国会議員となり、天下の悪法・治安維持法改悪に最後まで反対したため、1929(昭和4年)3月5日、東京神田の旅館・光栄館で、右翼の凶刃に斃れた。
その山宣が青春時代の4年7ヶ月苦学し、語学の天才といわれる素地を育んだのが、カナダのバンクーバーだ。映画「JUNO」はこの世界一住み良い街、バンクーバーで撮影が開始されている。