目に青葉・・・だが 山遠く 鰹は年中食べている。
6月早々梅雨入りした関西。海を渡る風は、まだスキッと気持ちがいい。CDを聴いてブログをゆっくり更新するゆとりが少なくなりましたが、疲れて帰った夕方も、朝寝と昼寝がいっしょくたになってしまう土日も、お気に入りのCDを聴きながら過しています。
今日はいまどきのドイツを代表するリリック・テノール、クリストフ・プレガルディエンのマーラー歌曲集。彼はこの春、インターネットラジオで聴いたバンゾ指揮「マタイ受難曲」のエヴァンゲリストです(
→過去記事)。
このときのプレガルディエンは、哀感をたたえつつも感情の高揚を押えた美声がとてもよかったです。彼の声をもっと聴きたくて歌曲のCDを探し、試聴して1番気に入ったのがこれ。
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Mahler: Lieder
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マーラー歌曲集
クリストフ・プレガルディエン(T)
ミヒャエル・ギース(P)
【曲目】
子供の不思議な角笛 より
魚に説教するパドゥアの聖アントニウス
だれがこの歌を作ったのだろう
高い知性への賛歌
ラインの伝説
少年鼓手
トランペットが美しく鳴り響くところ
死せる鼓手
リュッケルトの詩による歌曲 より
私はこの世に忘れられ
真夜中に
子供の不思議な角笛 より
原光
さすらう若人の歌
2006年の録音。
まずは皮肉なスパイスがきいたハッピーな4曲を、100年前の絵本の世界に遊ぶような気分で聴いていきます。
「魚に説教する〜」では、彼が美声だけれど甘くはない、線の太いテノールなのだとわかります。男声で聴く歌曲:角笛集は、どこか朴訥とした味わいがにじみます。ですから、「だれがこの歌を作ったのだろう」は、恋する若者のかわいらしさと田舎くささが、なんともよいのです。
そして「高い知性への賛歌」と「ラインの伝説」は、音の風景画を描き出すピアノと声のデュオだと思います。
ピアニストのミヒャエル・ギースは、長年フランクフルト・オペラのコレペティトールを務めただけあり、その音色は実に多彩。特にこの2曲では写実的な表現がいくつも楽しめます。
*コレペティトール:歌手が歌曲やオペラのパートをマスターするために稽古をつけるピアニスト。モーツァルトからR. シュトラウスまで、あらゆるオペラの全曲を歌って弾けること、即興や移調などの技術も求められる。
「高い知性〜」は悪戯っぽく、くすぐるように飛びまわる声とピアノ伴奏に、なんとなく言ってることがわかるわ…と思える鳥の声が聴き取れます。
「ラインの伝説」はドンブラコと3拍子の流れ、打ち寄せる波の音で始まります。プレガルディエンがお話を語るあいだ、ピアノは川面にくるくる渦巻いては消えていく小さな渦や黒い淵の水面を、変化に富むアーティキレーションで描きます。ときには、ピアノが高音の冴えた音色でメロディーを歌います。これがまたいいんですよね〜。もちろんマーラーが書いた音楽なのだけれど、この演奏は声とピアノでその魅力を最大限伝えていると思います。
5曲目からは、「少年鼓手」、「トランペットが美しく鳴り響くところ」、「死せる鼓手」など、死と愛惜の歌に変わります。
この録音は音量の幅がとても広く、プレガルディエンが男性的で粗野な激情、軍隊調の表現を強めるためにスフォルツァンドの声をあげる度に、唐突な感じがして飛び上がります。こういうところは、やたら力こぶを振り上げなくても全曲マッチョに歌いきることができる、バリトンが強いのでしょう、と思います。
特筆すべきは「トランペット〜」のピアノです。細く、くぐもった高音(トランペット)が聞こえると、「少年鼓手」の怨念が消えて、愛惜の情景に変わります。プレガルディエンのソロは、男声と女声が交互に歌い継ぐオーケストラ伴奏ものにも引けをとりません。
この後に続く「リュッケルトの詩による歌曲」2曲と「原光」は、リリック・テノールの魅力全開。大声出さなくてもこんなに素敵(

)、と聴き入ってしまいます。
「さすらう若人の歌」は、若者らしい嘆きと抗いと時間が解決するお悩みの軌跡が、いいわねえ。