税金を憲法と関係づけて考える経済8月号
「税民投票」で日本を変える ----貧困・格差を広げる不公正な税制より参照
立正大学教授
税理士 ----浦野広明さんに聞く
-----最後に、今後の税金問題をどう国民的に広げていくかについてお聞きします。浦野さんは新刊書で、憲法と税金の関係を強調されていますね。
●税の「応能負担原則」
浦野 憲法と税金の問題は深く関係しています。税金の取り方、使い方は国のあり方を決める問題ですし、それを決めているのが憲法です。
1つは、これまでの話で強調してきた、税の「応能負担原則」です。日本国憲法第13条(個人の尊厳、幸福追求の権利の尊重)、第14条(法の下の平等)、第25条(生存権、国の生存権保証義務)、第29条(財産権)などがその根拠となります。憲法上、本来、国税も、地方税も、また目的税と言える社会保険料も、すべて応能原則にもとづいて課さなければならないはずです。
そして、応能負担原則を具体化するのが、@直接税中心、累進課税、A勤労所得課税は軽く、資産所得課税は重く、B生計費非課税、という考え方です。累進税率構造をもつ租税は、高所得者層、高額所得法人から応分の税収をあげ、これを社会保障財源に使うことが出来ます。
たとえば最初にふれましたが、住民税を一律10%にした「フラット化」問題は、これまで5・10・13%という累進度---これも不十分な累進だと思いますが---を、住民税について憲法に反し破壊したものです。これは富裕層には(13→10%)となる一方、住民税が課税される6割りにあたる低所得者には倍の(5→10%)となりました。
これは結局、応能負担、累進課税構造がどんどん崩されているという事です。
逆に私は、日本の法人税についても累進的な構造を考えるべきだと思います。法人税は、中小企業の年800万円以下が税率22%であることを除き、所得に関係なく30%の比例税率になっています。これは、零細中小企業にとっては、確かに大変厳しいわけで、大企業と中小法人の間には著しい不公平があります。「応能負担」の原則からすれば、法人税も一律の法人税率ではなくて、例えば10%、20%、30%、35%、40%、45%ぐらいの累進法人税率を採用する必要があります。法人税の累進税率構造自体はアメリカでも採用されているものですし、その強化を考えていくべきです。
●税の使い方と憲法九条
もう一つ、憲法と税の使い方に関わってくる問題は、憲法九条です。消費税を例に取れば、その歴史はヨーロッパで戦争遂行の財源として発足しています。だいたい庶民増税の税制は、戦時税制と関係して誕生します。逆に、応能負担原則が強められていくのは、国民福祉の充実と平行して進みます。つまり、税金の取り方(応能負担)と使い方(国民福祉)は関係していて、負担だけ民主的で、使い方が軍事的だということは考えにくいことです。
端的な話、自民党の新憲法草案をみると、第13条の「個人の尊重」について「公共及び公の秩序に反しない限り」と縛りをかけています。9条2項を変えれば、軍事国家づくりという「公益」の前に、応能負担原則も消されてしまうことになります。9条を変えて、正式に軍備を持ち、現憲法から、戦争を準備する国づくり、そして大企業の権益を守るための海外派兵をするのが、自民党の新憲法草案ではっきり書いてある国の形です。これでは第9条によって、平和・福祉を希求し、負担能力に応じて納税義務を負うという現憲法とは、方向が逆転します。
ですから、税金の負担のあり方、使い方を考えても、9条の問題は、単に平和・戦争の問題だけではないのです。憲法は国民の福祉を第1として使っていく。それを実現するのは、国民の「不断の努力」であり、国づくりに自ら参加していくという、投票権の行使が欠かせないというのが、現憲法の精神だと思います。
●憲法を「生かす」運動へ
先日、永六輔さんが「しんぶん赤旗」で「僕は、99条の会≠ナす」といっているのは、まさにそういうことだと思いました(5月17日付)。憲法99条は、憲法は国民がつくり、国民の側から、天皇、国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員に、憲法を守らせ、また憲法を守っているかを、チェックするものだと。そうして憲法の内容を、国民みんなが勝ち取っていくことが大事だと言ってました。
また渡辺洋三さんは、憲法を「守る」という言い方は正確じゃない、むしろ「憲法を生かす」という言い方をしています。憲法が制定されて以降、歴史の中でその精神が労働運動、社会保障運動、権利闘争、公害闘争のなかで、充実させられてきた側面と、もう一つは、憲法を自ら行使していく点では、まだ多くの国民にとって身に着けているとは言えない側面があると思います。
ですから、私がいろいろな講演会で「税民投票」の話をすると、初めて憲法と税金の関係の話を聞いたとおっしゃる方が多いのですね。そして税金の中身について話を聞けば、大いに盛り上がる反応があるというのは、この間の1つの特徴だと思います。
現在の「痛み」の根拠が、今の国会、地方議会で決まっていく税制、その法律、条例の問題にあることが多くの国民に自覚されたら、政治を変える力に変わるのではないかと考えています。
---今日のお話しを、ぜひ参院選で生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
(雑誌経済8月号を参照しました。)