2008年は北京五輪のあおりで高校野球の開幕が早い。地方大会は雨に妨げられることもなく、サクサクと進んでいます。梅雨入りが早かったぶんだけ、夏本番も急いでやって来たのでしょうか。
さて、早々に記録的熱暑の日となった2008年7月5日、東京文化会館にて英国ロイヤル・バレエ団公演「シルヴィア」マチネを観てきました。上野の杜とて(?)、そんなに暑い日だったとは知りもせず…。
慣れない東京文化会館での鑑賞でしたが、祭典会員のMさんにチケット購入時から情報をいただき、当日は
韻松亭でランチをご一緒しました。
英国ロイヤル・バレエ団
シルヴィア
日時:2008年7月5日(土曜日)午後1時開演
会場:東京文化会館
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:レオ・ドリーブ
復元:クリスフトファー・ニュートン
演奏:グラハム・ボンド(指揮)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
《キャスト》
シルヴィア:サラ・ラム
アミンタ:フェデリコ・ボネッリ
オリオン:ヴィアチェスラフ・サモドゥーロフ
エロス:ブライアン・マロニー
ディアナ:マーラ・ガレアッツィ
第1幕
シルヴィアのお付き:
崔 由姫、フランチェスカ・フィルピ
小林ひかる、ヘレン・クロウフォード
ララ・ターク、クリステン・マクナリー
ローラ・マカロッチ、サマンサ・レイン
水の精、木の精、森の精、牧神、農民:
英国ロイヤル・バレエ団
第2幕
オリオンの女官:ヘレン・クロウフォード、
サマンサ・レイン
奴隷:エルンスト・マイズナー、
ジョナサン・ワトキンス
第3幕
山羊:イオーナ・ルーツ、
ジェイムズ・ウィルキー
シルヴィアのお付き:
崔 由姫、フランチェスカ・フィルピ
小林ひかる、ヘレン・クロウフォード
ララ・ターク、クリステン・マクナリー
ローラ・マカロッチ、サマンサ・レイン
ケレスとイアセイオン:
セリーナ・デュアナ、エルンスト・マイズナー
ペルセフォネとプルート:
カロリン・ダプロット、ヨハネス・ステパネク
テレプシコーラとアポロ:
シンディ・ジョーダン、エリック・アンダーウッド
ミューズ、春の使い、夏の使い、ラッパ手:
英国ロイヤル・バレエ団
指揮:グラハム・ボンド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
物語は「そのむかし、神々と人間が交わり暮すギリシャの森の…」ごくありふれた牧歌劇。
なので、この舞台はひたすらダンサーの踊りを楽しむべし。羊飼いのアミンタには、劇中のキャラクターとして英雄的な見せ場がありません。さらわれたシルヴィアは自力でオリオンをケムに巻き、エロスのお迎えによって帰還します。王子到来を刷り込まれた鑑賞モードでいると、どこか腑に落ちないものを抱えつつ大団円を見ることになります。アルカイックの時代から、善き牧人(まきびと)は、すべてを人ならぬもののお世話になっておったもの、ということらしいです。
この日の主役、ラム@シルヴィアの第一印象は若々しくて清新。
強くてほっそりした脚の、かわいらしいプリマです。身の軽さをほこるバレリーナとみえ、動きは滑らかでスピーディー…かつ一本調子。プリマの外連や押し出しをことさら見せなかったのと相まって、アイスドールのような印象のシルヴィア像でした。
ボネッリ@アミンタは完成した男性ダンサーの体躯ながら、マッチョなオーラは少なめ。なんにもできないけれど、シルヴィアを思い続けるだけでいい、善き牧人です。
3幕のパドドゥが、とてもよかったです。振付とコンビネーションの妙に見入る心地よさでありました。人形のようなふたり、お似合いのペアでした。
ダンスール・ノーブルでもあるサモドゥーロフは、どこかスキのある悪役の面相がよかったです。1幕、オリオンをかわそうとするシルヴィアと踊るところは、生真面目なお仕事ぶりがクラシックバレエのソリストのようでした。
あまり踊らないけれど、スタイル抜群のマロニー@エロスは立ってるだけで千両役者。全力投球した3幕の短いソロは、ダイナミックかつ丁寧。
女性ソリストでは崔 由姫が容姿、ダンスともによかったです。音の取り方、目線や腕の動きから伝わってくるニュアンスにバレリーナとしての血が通っている感じ。
驚いたのは、コールドの雑なステップ。長いスカートのロマンチック・チュチュを着けた女性とパートナーたちが、どたどたと出てきたときには、エキストラかと思ったわ。
アシュトン作品は絵本のようなファンタジー世界、なのだな、きっと。
マチネ公演らしい、さっぱりした舞台でしたよ。

0