この日観たなかで、一番の曲者(またまたごめんなさい)。観ている最中、かなり困惑したのですが退屈はしなかったんだよね。この作品の不思議なところ。
振付:大植真太郎
衣装:Mylla Ek
音楽:Shlomi Frige
出演:青木尚哉、石川勇太、井関佐和子、
金森嬢、佐藤菜美、高原伸子、中野綾子、
平原慎太郎、宮川愛一郎、山田勇気
この作品では、ダンサーの声も表現の一部です。言葉、くすくす笑う声、短いかけ声などいろいろな声が発せられます。ザーッと興ざめしちゃった大声もありましたが、耳に心地よいアンサンブルもありました。そういう場面は、後になって何度も思い出しました。
まず、まだ休憩時間で1ベルも鳴らないうちから緞帳の前でパフォーマンスが始まっていました。私は途中から気づいて見ました。スタンドマイクを相手に「重い…思い…思いが重い…」などとしゃべりつつ、緩慢に立ったり座ったりしています。研修生が慣れない即興をやってるのかと思ったよ。「呼ぶまで帰ってくるな」とか言われてさ。
作品は、とにかく長い。1枚の大きな生成の布をグルグル巻きにして作られた2メートルはあろうかという謎の人形をめぐって、ダンサーたちが最初は遠巻きにうかがい、やがて集まったり散ったりして持ち上げ、ほどき、もぐり込み・・・
会場からは笑い声が何度も聞こえてきました。私は困惑と興ざめを繰返していました。特にダンサーたちが思いきった動きをする中盤から後半にかけては、ちょっとちぐはぐな印象でした。black iceのアンサンブルを観た直後なだけに、こちらはただのダンゴに見えたの。
でも人形をほどくと舞台半分以上を覆う1枚の布になり、その下にダンサーがもぐり込んで・・というアイデアはよかったです。布という素材の面白さを味わえました。
一番好きな場面は、女性ダンサーたちが登場して布人形に関わるところ。クスクスといい声で笑い、口々に「あたま」「あたま」とだけ繰返し、男性ダンサーが持て余した布人形にドスンと頭を付けます。
金森さんが出てきて彼女らと布人形の間に割って入り、「接触禁止」とばかりに彼女らの頭を布から持ち上げます。女性たちは素直に従うものの、金森さんの手が離れたとたんに、また愉快そうに「あたま」と言ってはドスンと布人形に頭突きします。しばらくその繰返しです。
その声のアンサンブルがとてもよく調和していて耳に心地よく、動きの繰返しが面白い。女性の若々しい素顔や人柄を彷彿とさせる声と動作はよいなー。普段はほとんどクラシックバレエを楽しんでいるので、こういう場面にはホッとするのだろうと思います。
そんなわけで、モダン、コンテンポラリーというジャンルの作品が持つ、不安定さ、とんがったところ、含みのある表現を感じ取って味わうのは、今の私にはまだまだ無理だとわかったのでした。でも、Noismの女性ダンサーの魅力を私なりに感じ、また観たいと思いました。

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