「卯(兎)の花忌」 永六輔さん招き灰谷健次郎さん偲ぶ エディターズミュージアムで開催
上田市出身の名編集者・小宮山量平さんの92歳の誕生日に合わせて、作家の故灰谷健次郎さんを偲ぶ初の「卯(兎)の花忌」がこのほど、上田駅前のエディターズミュージアムで開かれました。
県内外から駆けつけた参加者150人と活けられた純白の卯の花を前に、小宮山さんの長女でミュージアム代表の荒井きぬ枝さんは、「灰谷さんは毎年、父の誕生日を楽しみにしていました。自分の死後は何もしないでと言い残しましたが、父の誕生日をともに祝うのなら許してくれるはず。卯の花忌は、『兎の眼』とこの季節に咲く卯の花をかけた名」とあいさつ。
その名作『兎の眼』を世に出した小宮山さんは、「灰谷さんは兎はやさしい動物でやさしい心を持っているーそう考えていたふしがある。たとえば良寛さんの長歌「月の兎」にあるように、狐や猿は旅の僧を知恵や裁量でもてなしたが、なにもない兎はわが身を火の中に投じて捧げものとしたーそんな兎のたましいを思っていたのではないか」とし、先ごろ灰谷さんについて記した一文のタイトルを「甦れ、童心から学ぶ心よ!」としたと話しました。
この日のゲストで、灰谷さんが信頼を寄せていた永六輔さんは「灰谷さんはほら、ここにいますよ」と話出し、「よくいっしょに講演をしたが、ぼくがどんなに会場を沸かせても、最後に彼が子どもの詩を朗読するとみんなもっていかれちゃう。ずるい!」とおどけ、灰谷さんが生前録音した子どもの詩の朗読を披露。ともに楽しんでこそ供養とばかり、軽妙な話術で会場を笑いの渦に包みました。