◆週刊上田 7月12日掲載記事より
出版界の重鎮・小宮山量平さん(92歳)の長期連載「昭和時代落穂拾い」(90年〜)は週刊上田の歴史のエポックでした。小宮山さんが1000号を記念し、寄稿してくださいました。
1000号特別寄稿
ふるさとの中のふるさと
小宮山量平
70代の半ばを越えたころ、無性にふるさとがなつかしく、帰心矢の如く還ってきました。改めてわがふるさとに再会してみれば、格別に名のある峻険に囲まれているわけでもなく、幽谷の眺めに恵まれているわけでもありません。小さな盆地の真んまん中を千曲川がつらぬき、その流れに沿って何枚かの水田が拓け、それに続く段々畑が山裾に迫った辺りには、各集落毎の神社の杜が、四季の訪れを物語るたたずまいがつづくばかりです。
まぎれもなく、この地こそは凡中の凡、ふるさとの中のふるさとなのだと、改めて実感しました。小さな塾めいたグループを作ったときも、迷うことなくその名は「太郎山塾」と決まりました。平凡と言って、これほど平凡な山の姿は、めったにあるものではありません。事実、この山のてっぺんまでは、わが家の庭並に親しんで育ちました。
信州人と言えば俊敏であり、弁舌もさわやかで目はしの利くといった先入観で考えられがちですが、後に、世界各国を巡って、秀れた都市美や風景に触れるのにつれて、わが上田市の平凡な立地条件こそが、今や世界に冠たる平凡さの魅力を誇るものだ、と、思うようになりました。ちょうどひと足先に上田へ帰っていた深町稔前編集長が、そのふるさとの平凡さをコラムに書き留めてはくれまいか、と、要望されたものです。私の週刊上田とのつきあいは、そんなふるさと讃歌を結晶させることから始まりました。その結晶第一冊が『昭和時代落穂拾い』として親しまれているのです。
あれから日が経つのにつれて、日本の文章道は乱れに乱れ、退廃を極めつつあります、が、あれを読んで下さった人びとから、あいさつを受けるたびに、ふるさとの活力を育んだミニコミ紙の力を想起するのです。
◆週刊上田掲載記事(7月12日)より
エディターズミュージアム3周年
「今、父と息子が語るロシア」
●8月22日(金) PM6:30〜
●参加受付8月9日(土)〜
「エルミタージュ美術館」への旅を実施
上田駅前の「エディターズミュージアム 小宮山量平の編集室」では8月22日(金)18:30〜、開設3周年記念講演会「今、父と息子が語るロシア」を開きます。またこれにあわせた特別企画として、ロシア語同時通訳者・小宮山俊平さんが案内するサンクトペテルブルク「エルミタージュ美術館」への旅(10月10日(金)出発予定・4泊5日)を実施します。満20年・1000号を記念して週刊上田が共催します。
理論社を創業し、チュコフスキーをはじめトルストイ、マルシャーク、ビアンキなどロシアの多くの文学作品を日本の読者に届け続けてきた小宮山量平さん(92歳)。同時通訳者として、激動の現代ロシアを見つめ続けてきた長男の俊平さん(57歳)。今講演会は再びロシアが注目を集めている今、父と子がそれぞれのロシアを語る刺激的な一夜となりそうです。
定員100名で、参加費は1200円。申し込み受け付けは、8月9日(土)からの予定です。
また、サンクトペテルブルク「エルミタージュ美術館」への旅は、ロシアの歴史と文化が息づき、激動の現代史が進行する古都エルミタージュを、ロシアを熟知する俊平さんの案内でじっくりと見ようという垂涎の企画。ロシア文学に現れる舞台探索や隠れたおすすめレストランでの食事など、普通のツアーでは味わえないオプションがいっぱいの旅となりそうです。
募集人員は約20名。詳細は本誌で近々お伝えします。お楽しみに。
問い合わせは同ミュージアム TEL 0268-25-0826まで。