市民の力歸國「大成功」
信濃毎日新聞 2011/07/13 東信覧 掲載
上田市民会館で10日開かれた富良野GROUPの演劇「歸國」は、脚本・演出を手がけた倉本聰さん(76)が2年近く前、親交のある同市内の作家小宮山量平さん(95)に「ぜひ上田で上演したい」と提案して実現した。先が見えにくいこの時代に、作品テーマの「戦争」についてあらためて考えようという趣旨に賛同した市民ら約30人が今春、実行委員会をつくって準備を進め、本番を迎えた。
上田 倉本聰さん脚本の舞台
公演支えた実行委 満足感
開演3時間前の午後2時半ごろ。実行委員がロビーで輪になって集まった。「念願の『歸國』がもうすぐ始まります。皆さん頑張りましょう」。小宮山さんの長女で実行委の事務局を担った荒井きぬ枝さん(63)=上田市天神=が声を掛けた。
猛暑の中で持ち場に分かれ、会場に案内の張り紙をしたり、駐車場整理をしたりした。
前売り券は自由席。良い席で鑑賞しようと、午後4時を過ぎると会館前には長蛇の列ができた。舞台は午後5時半から2時間余りで終了。カーテンコールで出演者と一緒に倉本さんがステージに登場すると、観客からさらに大きな拍手が送られた。
この後、倉本さんはロビーに立って来場者を見送り、パンフレットや台本を買い求めた人全員にサインした。
実行委員長で元週刊上田編集長の深町稔さん(69)=同市上田=は「ボランティアで準備し、たくさんの人に見ていただいた公演は大成功だった。大満足です」。荒井さんは「公演を開いてくれてありがとう、と来場者に手を握られたのが忘れられない。舞台の内容も素晴らしかった」と話していた。
舞台「歸國」900人が拍手
信濃毎日新聞 2011/7/13 地域覧 掲載
テレビドラマ「北の国から」などで知られる脚本家倉本聰さんが脚本・演出を手掛けた舞台「歸國」(実行委員会、信濃毎日新聞社主催)の上田公演が10日、上田市民会館であった。
「富良野GROUP(グループ)」が演じる県内では唯一の公演で、約900人が来場。倉本さんも舞台を見守った。
戦死した日本兵の霊が2011年の東京へ帰り、それぞれの家族や思い出の場所へ向かう物語。梨本健次郎さん演じる大宮上等兵は、妹の通草を訪ねたが、延命治療で生かされている状態だった。
面倒を見ず、亡くなった後に葬儀すら丸投げした通草の息子の大学教授を、大宮は怒りで刺し殺す。
こうしたエピソードを幾つか積み重ね、「日本は豊かになったが、今の日本人は本当に幸せなのか」と問い掛けた。
次々と変わる舞台セットが観客を楽しませた。終演後に立ち上がって拍手をする姿も。上田市上田原の主婦野沢和恵さん(63)は「このままの日本でいいのか、あらためて考えさせられた」と話していた。