無言館の記録 上田で上映会
窪島さん「支援に感謝」
信濃毎日新聞 2012年2月9日 東信覧 掲載
上田市古安曽の戦没画学生慰霊美術館「無言館」を題材にしたドキュメンタリー映画の上映会が7日夜、同市中央2の上田映劇で開かれた。市民有志らでつくる実行委員会が主催。
同館で10回以上演奏会を開いているというバイオリニスト、天満敦子さんの演奏会もあり、市民ら約300人が訪れた。
映画は無言館館主の窪島誠一郎さんが監修。窪島さんや、同館の分館を併設している立命館大国際平和ミュージアム(京都市)の安斎育郎館長らが、招集令状を受け取り限られた時間で制作に打ち込んだ画学生や、物資不足の戦時下で高価な画材を確保した親族らに寄せる思いを語っている。
戦没画学生をしのぶ無言館の夏の恒例行事「無言忌」で「お墓参りと思って毎年来ている」と話す画学生の遺族の姿も記録。原爆で亡くなった画学生2人の絵を知ってもらおうと、窪島さんが2010年に広島市で開いた展示会の様子も紹介している。
窪島さんは舞台あいさつで「私は34歳7カ月で上田に来て、もう70歳。運営を手伝ってくれる
若者や上田の方々の支援を受けて美術館があることは、感謝に堪えない。
残り火をかき立てて一生懸命仕事をしていきたい」と話した。
天満さんはルーマニアの作曲家ポルムベスクの「望郷のバラード」など3曲を披露。客席から大きな拍手が送られていた。
実行委の多くは、昨年7月に倉本聰さん脚本・演出の演劇『歸國』を市内で上演したメンバー。歸國には無言館が登場する。実行委員長の荒井きぬ枝さん(上田市天神)は「戦争で未来を断ち切られた人たちを描いた作品を、無言館の地元の上田で多くの人に見てもらうことができて良かった」と話した。