エディターズミュージアム B 2012・10・27掲載
当エディターズ・ミュージアムスタッフの山嵜庸子さんが、地元紙「週刊上田」に『本の森に囲まれて−私の図書館修業時代』と題して連載をしている内容を、ご本人の承諾を得て転載しています。
エディターズミュージアムには本のほかに、著名な作家からの書簡は言うに及ばず、「まあ!」と目を見張らせるものがたくさんあります。
佐藤忠良さんの素描や彫刻。丸木位里・俊子夫妻の絵画や人の丈ほどもあるカンバスに描いた田島征三さんの絵。長新太さんの原画等々、周囲に溶け合ってさりげなく飾られいるのが凄いと思っています。
小宮山先生の第1回目のグルジア訪問は、児童図書国際会議に日本の代表として出席されたときです。その後もたびたびグルジアを訪れて、とりわけ親交を深めた人がいました。
それはラド・グディアシビリです。彼の絵やお孫さんと写っている写真も飾られています。
グディアシビリは現代グルジア美術の先駆者で、あのピロスマニを高く評価したことでも知られます。(ピロスマニを発掘したとも)。
一角には先生が持ち帰った、かの国のお土産である帽子だとか玩具だとかもいろいろ並べられいて、物珍しげについ覗き込んでしまいます。なかでも面白いのは酒の杯です。
何の動物のものか、角で作られていて、酌み交わすときは注がれた酒をきれいに飲み干してしまわなければその辺に置くに置けないのだよと、話していただいたことがありました。
なるほど角だからコロッと転げるわけです。
それらどれひとつをとっても、その国の文化の一端がわかって、旅心をかきたてます。
エディターズミュージアム C 2012・11・3掲載
エディターズミュージアムにあるたくさんの宝物のなかで、どれに惹きつけられるかは、人によってさまざまでしょう。
たとえばミーハーな私は、飾られている多くの写真のなかでも、山田洋次監督のものにどうしても目が行ってしまいます。
ミュージアムの前身「くるみの木」時代から小宮山先生が続けてきた、さまざまなゲストを迎えて開く「いのちを語るシリーズ」に山田監督が来てくださった折の、講演の後に花束をもらって恥ずかしそうにうつむく姿や、小宮山先生と歓談されている写真。また先生への尊敬がにじみ出ているような微笑を浮かべたものもあります。
映画「たそがれ清兵衛」の決闘シーンには矢出沢川の川原が使われましたが、その近くの高橋のたもとには先生の生家の土蔵が今も残り、ここにも先生と山田監督の深いかかわりを感じます。
「たそがれ清兵衛」が制作される以前のある日、先生の体験談を映画づくりの参考にしたい、話を聞かせてほしいとの依頼が山田監督からありました。
私はミュージアム代表の荒井きぬ枝さんにお願いして、その席の端っこに座らせていただくことになりました。
当日、階段を上ってドアの前に立ち、開けようとしたそのとき、山田監督と目が合ってしまったのです。私はその風格に圧倒されて足が前に進まず、そのままスゴスゴと階段を下りていました。