週刊上田 2014.6.14 コラム「陽葉」掲載
・南アフリカ共和国「民主化」20周年を記念し、同国大使公邸で行われた集会へ出席する機会に恵まれました。英語と日本語の同時通訳をイヤホーンで聞きながら、故ネルソン・マンデラ大統領らが植民地主義やアパルトヘイト(人種隔離政策)と闘い民主化を勝ち取った歴史と、それに日本がどう関わったかに思いをはせました。
・第二次大戦後、アフリカの植民地解放・独立の運動が南アフリカを始めガーナ、ギニア、ケニアなど各地で高まり、それらの運動とアフリカ本来の歴史や文化の紹介を日本で一手に引き受けたのが小宮山量平さんの理論社でした。私はその何点かの出版のお手伝いをしたことが縁での参加でした。
・パネルディスカッションでは小宮山さんの長女で「エディターズミュージアム」代表の荒井きぬ枝さんが、毎日新聞記者の城島徹さんと当時の出版の意義について簡潔に語りました。女性の駐日大使モハウ・ペコさんの迫力あるあいさつに、アフリカの前途を見ました。(F)
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南アフリカの民主化(1994年)から20年目の今年5月17日、南ア大使の公邸にお招きいただき、パネルディスカッションに参加させていただきました。日本から反アパルトヘイト闘争を支えたひとりとして小宮山量平についてお話する機会を得られたことは、とてもうれしいことでした。
毎日新聞の城島徹さんがサポートして下さいました。当日、話させていただいたことの内容を記しておきます。 (荒井きぬ枝)
◆アパルトヘイトと闘った編集者
城島 徹さん
元アフリカ特派員ヨハネスブルグ支局長/現・毎日新聞本社編集委員
小宮山量平さんは長野県上田市に生まれ、東京の叔父に引き取られた。治安維持法違反容疑で捕まったこともあり、大学卒業後、軍隊生活を送り、戦後間もない1947年出版社「理論社」を創業した。
創作児童文学の名著を数多く世に送り出す一方、アフリカ関係の書物も多数出版。ガーナのエンクルマやケニアのケニヤッタ、コンゴ(現在のDRC)のルムンバら当時の指導者や欧米学者の翻訳書を続々と手掛け、「闘うひと」だった。
彼は1960年代にアパルトヘイト政策への抗議行動に立ち上がった。著名な作家や、日本の反アパルトヘイト運動の創始者とされる野間寛二郎らと南アフリカの人々の支援に尽力。
1965年10月にロンドンで開催された「南アフリカ政治犯救援国際美術展」を前に、知り合いの画家たちに作品をカンパするよう呼び掛けた。
当時、南アフリカではネルソン・マンデラら「政治犯」が続々と投獄されていたが、経済で南アフリカ白人政府と実益的な関係にある日本企業は「名誉白人」の立場で人種差別に乗じて甘い汁を吸い続けただけに、そうした流れに抗う強固な正義感の持ち主だった。
小宮山さんは生前、「アフリカの本を数多く出し、財政難を招いたけれど、編集者として誇りに思います」と笑顔で話していた。
◆「ジャンボ・アフリカ」出版に込めた思い
荒井 きぬ枝
エディターズミュージアム代表
反アパルトヘイト運動に協力する中で、父は日本の子どもたちに正しくアフリカのことを伝える努力をしました。 野間寛二郎さんが書かれた「ジャンボ・アフリカ」の出版にはそのような思いが込められていました。
「ジャンボ・アフリカ」はおそらく当時唯一の少年少女のためのアフリカ案内書であったと思います。
アフリカという新しい世界をしっかりと見つめることで、日本の子どもたちの心の中にアフリカの人々への敬意と友愛が芽ばえることを父は願ったのでした。
父は二年前に亡くなりましたけれど、きょうこのように父の仕事についてお話させていただく機会を得られましたことに心より感謝しております。
ありがとうございました。
小宮山量平の「私の大学」 −講座その2−
講師/窪島誠一郎さん 「信濃デッサン館」「無言館」館主
松本 猛さん 「ちひろ美術館」前館長
量平さん、
《ふるさと》、これでいいんですか?
《この国》、これでいいんですか?
日 時/6月29日(日)PM3:00〜PM5:00
場 所/エディターズミュージアム (上田駅前 若菜館ビル3F)
参加費/1,200円(高校生以下500円)
定 員/100名 ※定員になり次第締め切らせていただきます。
■お問い合せ・お申し込み エディターズミュージアム TEL0268‐25‐0826
■受付開始/6月18日(水) 受付時間/AM11:00〜PM5:00 ※火曜休館
<予告>「私の大学」ー講座その3ー
画家田島征三さんを講師としてお迎えします。
日時はあらためてお知らせいたします。
*窪島さん、松本さんの対談第二弾(信州自遊塾)が、
7/25(金)18:30より松本市あがたの森文化会館にて行われます。