──来年も「グルジア」であけくれそうです。ぼくたちにとって「グルジア」は「星の牧場」であり、そこには「プラテーロ」(注)がひなたぼっこしているのです──。
絵本作家のはらだたけひこさんご夫妻から父がいただいたクリスマスカードです。
岩波ホールで企画・広報にたずさわっていらっしゃる、はらださんと父との出会いは、1987年に公開されたグルジア映画「ピロスマニ」のパンフレットの文章を、父が書かせていただいたことがきっかけだったのだそうです。(注)J.R.ヒメネス作「プラテーロと私」1965年 理論社刊 先日お会いしたはらださんに、このクリスマスカードの話をさせていただきました。
「学校へ行かない時期があって、その時に理論社の本をたくさん読んだんですよ──。」
うかがいながら、はらださんは、ご自身の心の中に確かに「私の大学」を持っていらしたんだ・・・・・・。私はそう思いました。
第5回の「私の大学」の講座には、はらださんをお迎えします。父との出会いについて、父が愛していた画家ピロスマニについて、そしてグルジアについて、はらださんのお話を楽しみにしています。2015.9.30 荒井 きぬ枝
人間の顔をした絵画──映画「ピロスマニ」と放浪画家ニコ・ピロスマナシビリ ソ連のグルジア共和国が生んだ画家、ニコ・ピロスマナシビリの半生を描いたソ連映画「ピロスマニ」(ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督)が十五日から東京・神田の岩波ホールで公開される。
ピロスマナシビリの作品は、わが国では昨年の「素朴な画家たち」展で数点紹介されただけだが、そのプリミティブな画風はソ連をはじめヨーロッパで高く評価されている。映画の公開にあたり、ピロスマナシビリ研究家の小宮山量平氏がその魅力を語る。(前略)
映画『ピロスマニ』では、この「友愛」の鈴を振り振り遍路しているような看板画描きに事よせて、「美しき人間の国」が絵画的に語られている。事実、どの情景もピロスマニの作品が連続画のように裏打ちしているのだ。シェンゲラーヤ監督は期せずして、無名であることによって「友愛」の輪に温かく抱かれていた放浪者の幸せを描き、まなじ画家であろうとしてかえって不幸に沈んでゆく宿命を描く。そのように描くことで、たんに「生前は貧しく不幸であった」というようなゴッホやモディリアーニの悲劇の系列にピロスマニを数えあげることからは、まぬがれていると思える。
私自身は、ピロスマニの絵の親しさを想うたびに、むしろ無名の放浪者なればこその限りもない豊かさに気づく。炎暑の夏ごとに回想される「プラハの春」の合言葉「人間の顔した社会主義」になぞらえて言えば、今はどこでも「人間の顔をした絵画」こそが求められているのではないだろうか。
それを思えば『ピロスマニ』は、良い時にわが日本へ来たものだと思う。
たしかに、三度目のグルジアへの旅のこと、私ひとりのためにピロスマニ作品の映画を見せていただいた。やがて画面には、彼の鹿の絵が写しだされ、次第にクローズアップされ、ついにその目が画面いっぱいに拡大された。と、その単純な筆法が、どんな鹿よりも鹿らしい目を表現し、しかもその目が、どんな人間よりも人間らしい優しさにうるんでいることに、私はひっそりと感動したことがある(毎日新聞1978.9.9)
1978年に公開された折の「ピロスマニ」のパンフレット
INFORMATION―――――
小宮山量平の「私の大学」 講座その5
量平さんのこと、グルジアのこと、そしてピロスマニ(仮題)
講 師/はらだ たけひでさん
岩波ホール勤務。一方絵本を中心とした執筆活動を続けている。著書に「大きな木の家 わたしのニコ・ピロスマニ」「フランチェス コ」(ユニセフのエズラ・ジャック・キーツ国際絵本画家最優秀賞受賞)など。
ゲスト/小宮山 俊平さん
″父と訪ねた「友愛の国」グルジア(現ジョージア)″
日 時/11月14日(土)PM3:00〜PM5:00
場 所/エディターズミュージアム(上田駅前 若菜館ビル3F)
参加費/1,200円(高校生以下500円) 定員/100名
■お問い合せ・お申し込み/エディターズミュージアム TEL0268‐25‐0826
<プレイべント>
上田自由塾の一般公開講座 講師 小宮山俊平(ロシア語通訳)
10月24日(土)15:00〜17:00 場所/エディターズミュージアム
「ロシアよもやま話」講座 − 番外編 父 小宮山量平の「グルジア 心の旅」
亡き父量平がめぐりあった優しき民、熱き心、異邦の文化・芸術。
40年前の旧ソ連親子珍道中を回想します。
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「放浪の画家ピロスマニ」 37年ぶり、再上映
伝説的名作を、グルジア語オリジナル版で37年ぶりに上映!
日 時: 10月19日(月)
場 所: ユーロライブ試写室 (渋谷区円山町)
★尚、11/21より岩波ホール 他全国順次公開
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