サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館)が定期的に刊行している「SANPOMYUZE」(サンポミューゼ)という冊子。
そのvol.5に拙文を載せていただきました。 COLUMN de SANPO
「この街が “本のふるさと” になれたらいいね」──。
父の言葉を思い出します。
『理論社』の創業者であり、編集者であった父小宮山量平。神田神保町の古本屋の2階にあった最初の小さな編集室には、編集者と向き合う若き日の作家や画家たちの姿がありました。
その編集室から送り出された多くの本が今、上田のエディターズミュージアムの棚に並んでいます。代々読み継がれてきた本です。
「なつかしい」――。ふとそうつぶやく人がいます。
子どものための本づくりの道を切り拓いてきた父。その原点には、自分が子どもの頃にこのふるさと上田で出合った「赤い鳥」と「児童自由画」が息づいていたのだと思います。
若者たちに本を読ませたい・・・・・・その想いから、戦後すぐの2年間、父は母の実家でもある上田駅前の鰻屋「若菜館」の一隅に “千曲文化クラブ” を設立。その時に開放した父の蔵書もまたこの場所に蘇っています。父が思い描いた “本のふるさと” がここにあるのかもしれません。
上田は “版画のふるさと” でもあると思います。戦没画学生の “魂のふるさと” でもあります。上田で生まれ育った方が「若菜館」の鰻を “ふるさとの味” と言ってくださることも・・・・・・。
上田にある “ふるさと” を大切にしたいと思います。訪れる人たちがこの街で、たくさんの “ふるさと” に巡り合えますように──。 「小宮山量平の編集室」代表 若菜館女将 荒井 きぬ枝