放映中の朝ドラ「なつぞら」の中で、さりげなく“戦争”が語られています。
脚本の力を感じています。
愛する人を失った悲しみ───。
女優の蘭子さんは広島の原爆で亡くなった人の遺した言葉を胸に刻んで、芝居を続けています。
ムーランルージュの踊り子だった亜矢美さんは、学徒出陣で出征したまま帰らなかった人への思いを胸に秘めています。
“戦争”───、
若いたくさんの命が奪われました。
今年もまた8月がめぐってきます。
2010年8月、TBSから放映された倉本聰さんのドラマ「歸國」を思い出しています。
翌2011年には実行委員会を立ち上げて、上田の市民会館で舞台の「歸國」の上演を実現させました。
“英霊たち”は何をみたのか・・・・・。
今の日本はこれでいいのか、若者たちが命をかけたこの国はこれでいいのか、このままでいいのか。
倉本さんはするどく問いかけます。
父の文章が遺っていました。
世界が求める日本のルネッサンス4
(前略)
ひと口で言えば、毎年八・一五が巡りくるたびに各メディアは、この国の敗戦を回顧することを怠りはしません。今年もかの学徒出陣で一気に何十万もの若者たちが学業を打ち切られて出征しての挙句、虚しく還らぬ人となったいきさつを、多くのメディアが取り上げたものです。
その中でも《歸國》こそは、出色の力作でありました。けれども倉本さんの作品には前掲のユニークなコトバが示すように、今や敗戦65年を経た祖国の現状を見つめて、あの若者たちがいのちを捧げた熱い希いは報いられているのだろうか?・・・・・そんな問い詰めが疼いている《歸國》なのです。(週刊うえだ 2010年9月4日 「ふるさとの匂い」掲載)
世界が求める日本のルネッサンス5
今や祖国の明日について、こんな有様のままで良いものか、どうか、と、問い詰める真剣さが求められているのではないでしょうか。その意味で私たちは、あの数知れない若いいのちとの共闘を考えないではいられない現状を迎えているのだとも言えそうです。考えようによっては、わが祖国がツブれるかどうかの危機を迎えている現状に対して、いちばん巨きな発言力をもっているのが、「死者たち」だとも言えましょう。
彼らの衷心からの祖国愛が今こそよみがえるか、どうか。それを受け留めるべき魂が復活するかどうか・・・・・それをこそかえりみるべき時が訪れており、その真剣さを抜きにして、わがふるさとに、ホンモノの元気はよみがえるまい、と、私のようなジイサンは考え込んでいる昨今です。(後略)(週刊うえだ 2010年9月11日 「ふるさとの匂い」掲載)
昨日上京して、映画「新聞記者」を観てきました。
望月衣塑子・東京新聞社会部記者の新刊『新聞記者』を“原案”とした作品です。
「知る権利」がおびやかされています。
そしてそれはやがて戦争への道をたどることになるのです。
「このままでいいんですか?」・・・・・、作品の中での女性記者の問いかけは、このままでいいのか、このままでいいのか・・・・・という倉本さんの、そして父の問いかけと重なって、こだまのように今私の心の中でひびき合っています。2019.7.31 荒井 きぬ枝

2009年「富良野GROUP夏公演」を前に、倉本さんから父あてに台本が送られてきました。

「新聞記者」のパンフレット