エディターズ・ミュージアム111 まどみちおさん 2014.11.29掲載
当エディターズ・ミュージアムスタッフの山嵜庸子さんが、地元紙「週刊上田」に『本の森に囲まれて−私の図書館修業時代』と題して連載をしている内容を、ご本人の承諾を得て転載しています。
先ごろエディターズミュージアムで開いた「まどさん、ありがとう」の続きです。「魔女おばさんのお話会」をここで定期的に開いている加々井美恵子さんは、黒ずくめの洋服につば広の黒帽子。遠山弘子さんはブルーのドレッシーな洋服。朗読を聞いているとクスリと笑ったりニヤリとするようなまどさんの詩です。ユーモアがあり風刺があり、こんな年寄りになれたらなァと思いました。
この日は、小宮山量平先生の次男である民人さんと元週刊うえだ編集長の深町稔さん、そして私による「まどさんを語る」という一場面がありました。ふたりは理論社の仕事に携わっていた方です。民人さんはまどさんの『全詩集』が出版されるとき傍で見ていた人で、伊藤英治さんという編者が大変苦労されて編まれたことを話してくださいました。散逸していたまどさんの詩を一編一編探し歩いたとか。それがあったからこそ『全詩集』が出来上がったということでした。まどさんに校正紙を見せると、「こんなふうに書いたっけ?」と言っては手直し。まどさんって、ちょっと、とぼけたところがある人なのだと私は思います。
深町さんは、出版された本がどんな良い本であっても売ることをしなければ読んでもらえないと、本販売の活路をひらく苦労話などをしてくださいました。私は本欄のまどさんについての連載の感想を、舌足らずに話しました。
エディターズ・ミュージアム112 図書館のことふたたび 2014.12.6掲載
「本の森に囲まれて」は初め、私が長年勤めてきた材木町の図書館のことを記していました。ポツリポツリ昔のことを思い浮かべながら回数を重ねるうちにフト、もうひとつの本の森、エディターズミュージアムに身を置く現在の自分のことを書いてみたいという願望が湧いてきて、週1回通うこのミュージアムに場面が移ったのです。
ミュージアムは来年、10周年を迎えます。最初からスタッフとして関われたご縁をうれしく思っています。この場所は社会に繋がっていること≠フ自覚を促してくれるところでもありました。
小宮山量平先生はつねづね、「(私が)あの作家を世に送り出したなどと言う人がいるけれど、巡り合いから本が生まれた」と語っていらっしゃいました。ミュージアムの書架にずらりと並んでいる本の大半は、先生と巡り合うた作家が書いた本です。その作家たちはどんなふうにして先生と巡り合ったのか、それをもとに私は書いてきました。
この頃私は、ヴァイオリンコンサートに出かけました。アンコールの最後の曲が「チゴイネルワイゼン」でした。素晴らしい演奏に耳を傾けているうちに、高校生のときに音楽好きの世界史の先生が、ピッチカートとかカデンツァとかを教えてくださったことが思い出されました。里心がついたのでしょうか。この欄も図書館へ戻りたいと考えていました。