横浜事件に巻き込まれた政治学者 細川嘉六の資料 研究報告
信濃毎日新聞 2019・4・19 東信欄掲載
戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」に巻き込まれた政治学者細川嘉六(1888〜1962年)を研究する「細川嘉六ふるさと研究会」(富山県)は18日、上田市天神のエディターズミュージアムを訪れ、同ミュージアムが提供した細川の未発表資料の研究成果を報告した。
同研究会は12月に資料を活用した評伝を出版する予定だ。
未発表資料は200字詰めの原稿用紙で千枚以上。上田市出身の作家兼編集者の小宮山量平さん(1916〜2012年)が、1953年8〜11月に行った計4回の聞き取りの原稿などだ。小宮山さんが創業した理論社が72年から刊行した細川の著作集3巻に続く、補巻(未刊)を編集するための記録とみられる。
小宮山さんの資料を保管する同ミュージアムが今年2月、同研究会に提供した。
資料には細川の生い立ちから米騒動に参加した体験、横浜事件で虐待を受けた証言などが記されている。
同研究会の金沢敏子代表(67)=富山県=は「細川の思想の根本を網羅する資料で、貴重な生の記録。今後も活用したい」。
小宮山さんの長女荒井きぬ枝さん(71)は「父は戦時中の記録を次代にいかさなければと考えていた。こういう形で役立ってよかった」と話した。