エディターズ・ミュージアム「小宮山量平の編集室」での日々のできごとをお伝えするページです。
2021/3/10
外を歩いている時に、つい浮かんでくる小学五年生の作文。 学校のかえりにマスクをはずしました。
そこで思ったのが(これがいつもの感じなんだなー)と
きもちよく風にあたりながらかえりました。 そう、そうだよね──。と、このブログに綴ったのは昨年の9月のことでした。(No.240)
8月22日付の朝日新聞の記事からひろいました。
マスクをはずせない日々が続いて、一年以上が経ちます。
「子どもたちとコロナ」をテーマに度々特集を組んできた、全国の教師らで作る定期誌『作文と教育』(日本作文の会編・本の泉社刊)を、朝日新聞が再度この3月7日付で取り上げていました。
休校中の小学四年生です。 ねむれない。どうしてだろう 心の中で思った。「みんなに、会いたいなあー。」 つい笑ってしまったのは、五年生の男の子のこんな作文。 「ソーシャルディスタンス」と、ぼくがお母さんに言うと、お母さんは、引っついてきます。ぼくが、「みつみつみつ!!」と言うと、お母さんはチューをします。やっぱり好きなんでしょうか?ぼくのこと。 そうだよね、そうだよね、と心の中でうなづきながら、今回もまた子どもたちの作文と向き合いました。
記事は最後に教師の葛藤を伝えています。 みんなが楽しみにしている給食時間がやってきた。(略)配膳中に声を掛け合っていると、廊下を歩いていた先生に注意された。「給食中にどこの誰がしゃべっとるんか!」(略)
「黙食」「黙掃(黙って掃除)」「黙動」・・・・・。教師という職業に求められるものは、決まったことを決められたように行う忠実さなのだろうか。だけど、その価値観の中では、子どもたちが豊かにたくましく育っていく姿は見えてこない気がする。 「黙──」。子どもたちは今、それを強いられているのです。 “子どもは誰だって、ほんとうにおしゃべりだ。” その一行を『子どもへの恋文』(灰谷健次郎著・坪谷令子画・2004年大月書店刊)の中に見つけました。 (中略)
子どもがしゃべる、しゃべらないというのは、自由の問題とふかく係わっている。
その自由には、外の条件と内の条件がある。
家ではしゃべるが、外ではしゃべらないという場合、家にある自由さが外では、そのまま通らないということだろう。
そして、受ける重圧に個人差があるというのも、この問題をふくざつにしている。
子どもが自由を獲得するためには、外と内の両方に、それなりのたたかいを挑まなくてはならないということだ。
管理体制というものがあまりに理不尽で、子どもの心が、あまりに繊細な場合、しばしば悲劇をひきおこす。
この場合、子どもを叱咤激励しても、なんの意味もないばかりか、事態をますます悪くする。発憤して心を入れ替えてほしいのは、外に足を置く立場の人間だ。
親、教師、役人、ついでに企業家も政治家も入れておこう。
筆がすべって、ついでに、と書いたけれど、石頭を柔らかくしてほしいのは、ついでの方だ。(後略) 子どもたちの“心”に向き合おうとする時、私にとって指針となる一冊がこの『子どもへの恋文』です。 はじめに
―子どもがくれた私の履歴書
育てたつもりが育てられ・・・・・という親子関係の一面をいい表す言葉がある。
うまいことをいうものだ。
子どもは未熟なヒナドリか──。
いや、そうとばかりはいいきれぬ。そういったのは、出版人小宮山量平さんだ。
知的労働者としての子ども、平和主義者としての子ども、かけがえのないよろこびを人々に与える存在としての子ども。
そんな側面を、もっと見直してみては・・・・と彼の人は、ひかえめにつぶやく。 (後略) 子どもたちがどれほどの精神活動をしているか、灰谷さんはそのことをずっと語っていらっしゃいました。
よろこびも、悲しみも、そして人を思いやることも、じっとがまんすることも・・・・・。
どんなに幼くても、子どもたちはそれらのものをしっかりと心の中にかかえているのですね。 ゆき
うえだ しんご (五歳)
ふくのうえにとまって
なかにかくれて
ねてしもた
かみさま
とちたに ようこ (五歳)
かみさま
とばれるのですか
あるくのですか
くつはありますか 詩を読みながら5歳の子の“心”と向き合っています。
ここ数日、報道されている5歳の男の子のことがしきりに思われてなりません。
どんなに苦しかったか、どんなに悲しかったか、でも、がまんしてたんだよね。
それ以上のことばが出ないのです。
投稿者: エディターズミュージアム
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