イタリアの原発凍結法案、可決 首相保身の思惑も(朝日新聞)
閉鎖中の原子力発電所の再開の是非を問う国民投票を来月中旬に予定するイタリアで、原発再開を無期限に凍結する法案が24日、下院で可決された。すでに上院は通過しており、政府はこの法案を理由に国民投票の中止を狙うが、ベルルスコーニ首相の保身の思惑が強い。イタリアは1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故後、原発6基を順次廃炉にし、現在はゼロ。
法案は「安全性に関する科学的知見を得るため、政府は原発新設の手続きを進めないと決めた」との一文があり、事実上、無期限の再開凍結と解釈されている。政府は「法律で原発凍結を決めたので国民投票は意味がない」との論理で中止させたい考えだ。
ベルルスコーニ首相が中止にこだわるのは別の理由がある。同じ日の国民投票で、首相の裁判不出廷特権法の是非も問われるからだ。少女買春裁判を抱える首相は、東日本大震災を機に、投票率50%以上となって国民投票が成立することを強く警戒。特権法はすでに憲法裁から違憲判決が出ているものの、国民から改めてノーを突きつけられれば、政治的な打撃は大きいと恐れている。
とはいえ、投票を中止できるのは最高裁だけだ。可決後数日で判断が出るとみられるが、「法案はあくまで『凍結』であり、国民投票が問う『原発をやめるかどうか』ではない」(ローマ大法学部のアザリッティ教授)との見方もあり、この法案では国民投票を中止できない可能性もある。
元々、首相は「誰も投票に行かないので(国民投票は)どうせ成立しない、と高をくくっていた」(地元ジャーナリスト)。国民投票を設定した6月中旬は、夏のバカンス前の雰囲気で、国民の政治への関心が低いためだ。だが、福島第一原発事故が発生し、今月17日にサルデーニャ州地方選と同時に行われた原発新設の是非を問う住民投票では、約97%が「反対」を投じるなど、「反原発」機運が盛り上がっている。

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