作家の山崎豊子さん死去 「白い巨塔」「大地の子」(朝日新聞)
「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」「大地の子」など、社会問題に鋭く切り込んだベストセラー小説で知られる作家の山崎豊子(やまさき・とよこ=本名杉本豊子〈すぎもと・とよこ〉)さんが29日、死去した。88歳だった。
大阪・船場生まれ。京都女子高等専門学校(現・京都女子大)を卒業後、毎日新聞社大阪本社に入社。当時、学芸部副部長だった井上靖に指導を受けた。在社中から小説を書き、1958年、吉本興業の女性創業者がモデルの「花のれん」で直木賞を受賞。退社後、「ぼんち」「女系家族」「花紋」など、大阪を舞台にした女性の生涯を描き人気作家になった。
転機になったのは、65年の「白い巨塔」。医学界の暗部や医療過誤問題にメスを入れ、映画やドラマにもなり、大ヒットした。以降、実際の事件や社会問題を題材にした大作を発表。政財官界の癒着を描いた「華麗なる一族」、シベリアから帰還した将校が、商社マンとして国際商戦を戦う「不毛地帯」、日系アメリカ人の悲劇を浮き彫りにした「二つの祖国」、中国残留日本人孤児を描いた「大地の子」など、重厚な構成と人間ドラマが人気を集めた。
主要作のほとんどが、映像化され、2000年代に入っても代表作がリメークされるなど、時代を超えて支持された。航空会社を舞台に日本型企業の労使問題をえぐった「沈まぬ太陽」が09年に映画化され、日本アカデミー賞を受賞。また、同年、取材・執筆に10年をかけ、沖縄返還交渉の密約報道事件を描いた「運命の人」を発表し、健在ぶりを示した。
綿密な調査に基づく豊かな構成を持つ作風で知られたが、大胆な脚色を加えることで、物議を醸したり、盗用が指摘され訴訟になったこともあった。このうち「不毛地帯」では新聞記事で盗用を指摘した朝日新聞社を山崎さんが名誉毀損(きそん)で訴え、後に和解した。「大地の子」では大学教授から著作権侵害で訴えられたが、教授側が敗訴した。(ハワイ大学客員教授、中国社会科学院客員を務めた) 。

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