シャープの液晶テレビ、鴻海主導で反転攻勢(日経)
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が自ら主導し、シャープの技術力を生かして液晶パネル事業を拡大する戦略を鮮明にする。共同出資するテレビ向け液晶パネル生産会社、堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)を子会社化し、さらに増資の引き受けを通じて計521億円の資金をつぎ込む。
SDPの子会社化は台湾の経済部(経済省)などが29日までに明らかにした。鴻海の郭台銘董事長の投資会社に対し、シャープがSDP株43万6000株を171億円で譲渡する。シャープの持ち株比率は約4割から26%強に低下。鴻海側は出資比率が53%と過半に達し、SDPを子会社化することになる。
さらに投資会社はSDPの増資引き受けにより349億円を出資する。経済部によると資金はSDPの生産や販売の強化に活用されるという。一連の資金は郭氏の息子である郭守正氏が、自らの会社を通じ間接的に拠出する。郭台銘董事長は一代で電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手に育て上げた。その意志が特に反映される案件では、台湾で上場する中核会社の鴻海精密工業ではなく、郭氏やその周辺の資金が直接投じられることがある。
中韓勢との価格競争の激化でSDPは赤字が続いてきた。シャープは出資比率が低下しSDPによる業績への負担が軽減することに加え、2017年3月期には株式譲渡に伴う特別利益2億3400万円を計上できる。ただ今回の投資の真意はシャープの財務支援ではなく、液晶事業で攻めに転じる決意表明ととれる。SDPは17年中に最大顧客の韓国サムスン電子のほか、中国の海信集団(ハイセンス)など外部顧客への大型パネルの供給を中止する方針だ。今後の拡販に向けシャープ向けに振り向ける。背景にはパネルの事業環境の好転がある。中国や東南アジアの新興国で大型テレビの需要が拡大し、特に「60型以上のパネルは需要の伸びに供給が追いつかず、17年も単価が上昇する」(台湾のアナリスト)との声が多い。
中韓勢に圧迫されてきた台湾のパネル大手も復調傾向だ。鴻海傘下の群創光電(イノラックス)は11月の月次売上高が前年同月比14.5%増と、実に21カ月ぶりにプラスに転じた。鴻海はこの勢いを利用し、シャープのテレビ事業の反転攻勢を一気に実現する構えだ。シャープは9月、18年度にテレビの販売台数を現在の2倍の1000万台に引き上げる方針を発表した。台湾では今、本気度を疑う声は少ない。

0