東芝、株主の疑念晴れず 半導体売却は承認でも(東洋経済)
東芝は再建への課題だった半導体メモリー事業売却について24日開催の臨時株主総会で株主から承認を得た。上場廃止基準に抵触する2期連続債務超過の回避へ半歩前進となる。ただ、2018年3月末までの売却完了には、各国の独占禁止法審査、米ウエスタンデジタル(WD)との係争が依然、立ちはだかり不透明感は払拭できていない。
東芝は千葉市で臨時株主総会を開き、子会社「東芝メモリ」を米投資ファンドのベインキャピタルを軸とする「日米韓連合」に売却することを決議した。議決権を持つ株主の3分の1以上が権利を行使し、3分の2以上が賛成票を投じた。
綱川智社長は2017年度までに解決すべき課題として(1)17年3月期決算の提出(2)米原子力事業を巡る債務保証の上限額確定(3)分社体制への移行(4)特設注意市場(特注)銘柄指定の解除(5)メモリー事業への外部資本導入――を総会で挙げた。同時に、(1)〜(4)はおおむね解決しており、課題は18年3月末までの確実な売却完了が必要な(5)だけだとした。
東芝は上場維持を経営再建の前提条件に掲げるが、18年3月末までに売却完了できなければ、2期連続の債務超過となり、自動的に上場廃止となる。しかし、中国などの独禁法審査が18年3月末までに終わる保証がない。綱川社長は24日「独禁法の審査承認を得るために必死に努力していく」と株主に訴えた。
第三者への売却差し止めを求めるWDとの間で抱える係争の行方もいまだ不透明だ。WDは5月、国際仲裁裁判所に差し止めに向けた仲裁を申し立てたが、さらに東芝による売却手続きをただちに止めるための仮処分も申し立てる方針で動いている。
総会で平田政善最高財務責任者(CFO)は「『係争が解決していなくてもメモリー事業を引き取る』とベインとの間で大筋合意している」と説明した。だが、仮にWDによる仮処分が認められれば、手続きが止まる可能性は残る。
この情勢を危惧する株主からの質問も総会で出た。「3月末までに売却完了できなかった場合(債務超過を解消する)代替案はあるのか」。これに対しては、綱川社長自身が「環境の変化に応じ色々な手段を考えなければならない」と回答。「具体的に決まったことはないが、考えて、進めているのは事実だ」と説明した。先行きの不透明さは総会の場でも消えなかった。
個人株主からは「とにかく半導体メモリー売却を終えて落ち着いてほしい。そうでないと株価が戻らない」などといった声が続出した。買収資金の一部を融資する三井住友と三菱東京UFJ、みずほの主要行も売却差し止めを求めるWDとの係争のゆくえを注視している。訴訟が取り下げられなければ、融資は難しいとの認識で一致しており、主要行は東芝に、WDと早期に和解するよう勧めている。
懸念の声は半導体メモリー事業売却にとどまらない。東芝は10月12日に東京証券取引所から、内部管理体制に問題がある「特注銘柄」の指定を解かれた。だが会計不祥事や、綱川社長らも直前まで認知できていなかった巨額損失を計上した過去から、内部管理や企業統治が万全かを問う株主は多かった。
東芝は24日、今後3年間は事業の「選択と集中」を進めながら既存事業の収益強化を進め、その後、あらゆるモノがネットにつながるIoTの強化などで成長を追っていく方針を示した。しかし「メモリーが売れたとしても、人材流出が続く現状では再建は難しいのでは」など成長懸念をのぞかせる株主もいた。
24日の臨時株主総会の出席株主数は633人で、会計不祥事が発覚した15年以降、最も少なかった。前回の6月の定時総会の出席株主数は984人だった。

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