物価の上下の「リスク注視」 FRB議長、利上げ段階的に(日経)
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2日の講演で「米連邦公開市場委員会(FOMC)は上下双方向のリスクを注視する管理手法を採る」と述べ、物価の上昇と停滞の両面を見極めて柔軟に政策判断する考えを強調した。米政策金利は2%台に到達しており、先行きの利上げは「段階的に進める」と拙速な引き締めを避ける姿勢もにじませた。
パウエル氏はボストン市内で開いた全米企業エコノミスト協会(NABE)の会合で講演した。足元の米景気は「物価が2%近辺で安定し、失業率も低下しており、両面とも極めて良い状態だ」と自信をのぞかせた。先行きも「2020年末までは失業率が4%を下回って推移し、物価上昇率も(目標の)2%近辺にとどまる」と好調が続くとの見方を示した。
ただ、米政策金利は9月の利上げで2.00〜2.25%に高まった。FOMCは景気を冷やさず過熱もさせない「中立金利」の水準を3.0%とみており、政策金利が景気を下押しする引き締め圧力は強まっている。米景気は大型減税で好調が続くが、金利上昇で急減速する懸念もある微妙な局面に入ったといえる。
金融政策運営も柔軟さが求められており、パウエル氏は「金融政策はリスク管理手法を採る」と強調した。これまではほぼ3カ月おきに機械的に利上げを決断してきたが、先行きは利上げを想定以上に長引かせたり、逆に突然停止したりする可能性があるとにじませたものだ。
パウエル氏が注視するのは、物価高騰と物価停滞の双方のリスクだ。「雇用の逼迫がインフレ圧力を高める可能性を真剣に受け止めている」と述べ、政策金利が中立水準とみる3.0%を超える可能性を示唆した。一方で物価の上昇圧力は鈍いままで「利上げを急ぎすぎれば景気拡張を不要に縮めかねない」とも指摘。物価動向に応じて柔軟に利上げ軌道を修正する考えを強調した。

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