2009/6/25

百人一首の措辞特徴  日記と歌論

あらためて讀みつつゆけば花よりも紅葉賑はふ百人一首

百人一首は作者構成を見れば天皇・上皇・親王・内親王の皇族方が十人。
僧正法師が十二人。女官が十二人。大政大臣から中納言までの公家が六十四人。地下もしくは素性不明が二名といふことになりませうか。

一天万乗の君として改新の政推進された二帝に始まり、親政の世に復せんとしてあへなく破れ配所に崩じたまへる二帝に閉ぢる一連を編者いかなる感慨もて編み終へしかなどふと思ひやることがあります。定家の「明月記」は承久の乱前後の記事を全く欠いてをります。明らかに累が及ぶを恐れて火中したのでせう。中級公家の処世術として致し方なかつたこととは思ひますが、惜しいものです。

百人一首の措辞特徴を見るに擬音擬態語の類は一切なく枕詞も人麻呂の「あしびきの山鳥の尾のしだり尾
の」と業平の「「ちはやぶる神代も聞かず竜田川」云々の二例のみであり縁語掛詞が全く修辞の主流をなしてゐます。

又結句の体言止めも八例にとどまり「余情かぎりなき」風情の追求をこととする王朝和歌の特質の一端
があらはれてゐるか。
対句表現も「行くもかへるも別れては知るも知らぬも」の一例のみです。

用語を見れば月が十と最も多いはうなづけるところですが、紅葉が六と花すなわち桜の五をしのいで居るが目を引きます。但し「奥山の紅葉踏み分け鳴く鹿の」「立田山峰のもみぢ葉こころあらば」と取り合はせとか思ひ願ひを託する形での用例が多いやうです。

ちなみに鹿は三例あり他の鳥獣類がかささぎ・千鳥・ほととぎす・きりぎりすの各々一例のみであるに比して特色あるところです。小倉山荘近くには鹿の寄り來ることも多かつたのでせうか。
迫る冬にをののく晩秋のかなしさなり、世をいとふ心の友としてなり、王威地に落ちた王朝びとの心に鹿の鳴く声は殊の他身にしみるところがあつたのものか。

用語としては思ふ 思へ 思ほえばの類十一例で恋 恋ひしき 恋のみち等の十例をしのいで多いのですが、用語特徴については次項に譲ります。

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2009/6/25

「擊て」  讀史つれづれ

生け捕りにされて牽かるる父の聲「撃て」とぞ撃ちけりああ父上まで

參陣を迫る小田原へ行かむ夜の間やむなく弟にとらす白扇

菖蒲葺くころは思はむ串刺しにされし御曹司姫らは活けられて

じやがたらにたくましく生きしお春の書騙られて今に誘ふ涙よ

列福のにぎにぎしくとりもたれたる雨の長崎も一つの日本か
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