2009/9/29

秋色  日常 時事

秋既に定まらむとし噴水のあぐる響きのさやけくもしむ

捩子花の群れ咲く故郷の庭に灰青色の蛾の寄れる夢

いや白きを加ふわが身か歪められながら見上ぐるカーブミラーに

金蓮花終はらむとする茂みには黒斑の朱の蛾居堪らぬを

いくばくの鮭が卵を産むを得んさかのぼり來る故郷の川に
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2009/9/28

院宣  讀史つれづれ

ローマへの凱旋と日を同じうす逃げ入るエジプトにて討たれしは

院宣の時に感じてもてあそぶ昨日の平氏今日の源氏を

大火事の後のお江戸の工賃を取り締まらむと頭悩ます

攻圍の輪狹めながらに繰り返す今ぞ獨立への正念場と

接岸の可なる限りの海濱を虱潰しにせる流民島
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2009/9/27

人形町 朝  日常 時事

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人通りすくなき朝の四辻にビルの窓拭く人形町よ


昨日は所用で一日人形町近辺で費やしました。その記念に朝の一枚。
駅の西側が日本橋蛎殻町といふことで、「谷崎潤一郎西端の地」の碑文ビルのエントランスに埋め込まれてゐました。元より由緒ある名店の多いところか、、昼休みにそこここの食堂レストラン前に行列が出来てゐるさまは壮観でした。早朝から夜分に及ぶ仕事のこととてこの街を詳しく観察する間もなく帰路に就きましたが、いづれ暇得たらばゆつくりとその風情にふれて旨い料理も食べてみたいとおもはせる場所です。
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2009/9/27

人形町  日常 時事

人通りすくなき朝の四辻のビルの窓拭く人形町よ

ひしめける高層の間のしもた屋に日照はそも日にいくばくぞ

晝餉時食ひ物店の行列はにぎはへどビルの空室多く

粋の字をさりげなくひきずらせつつ着物姿の女も行きすがる

煙草喫ひ了へむ間もなく戌の日は殊ににぎはふ水天宮の驛
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2009/9/25

思はぬ「現場」  日常 時事

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僕はかつてなんとも寝覚めの悪い写真を撮つてしまつたことがある。仕事で赴いた先の近くの河原で昼餉後、川舟と対岸の風景を半々に処理した映像で晩春から夏に向かふ都会の川の風情を撮つたつもりで、色は歌などつけてブログに投稿したのまだが、しばらくして又訪れた先でさういへばこんな事件がと思ひ尋ねたところなんと知人が指差してくれた、加害者と被害者の住んでゐたマンションは上掲の写真の左手の、最上階がすっぽりブルーシートに覆はれてゐた部分であつた。その日まさしくてがかりを求めて現場検証懸命の捜索も続けられてゐた折も折であつたのだ。
 昨日の記事に曰く

江東・女性殺害、無期懲役が確定
 東京都江東区のマンションで会社員、東城瑠理香さん(当時23)が殺害された事件で、殺人や死体損壊などの罪に問われ、一、二審で無期懲役の判決を受けた元派遣社員、星島貴徳被告(34)について、死刑を求めていた検察側は上告せず、上告期限の25日午前0時に判決が確定した。(01:24)
日本経済新聞

これが裁判員開始後の起訴であつたらばとあげつらつても仕方ないが、被害者が1人でも死刑とされたほかの事件に比べて「残虐性・執拗(しつよう)性はない」などとする意見書が取り上げられる余地はなかつたはずである。

その時の不意識の写真に改めて文字載せして送らうとしてなんとも不条理の思ひにつかれる。
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2009/9/25

千首を越えて  日記と歌論

 一昨日でブログ開設以来の作が千首になつた。

十ヶ月で千首とはいかに何でも濫作かとは思ふが、僕の唯一の和歌集にする心算なれば、期限と定めた今年一杯の間に千四百首前後も蓄へ、更に納得の行く推敲も加へて、一の里程としてブログ本にすべきかと考へてゐる。
 始まり頃は「食」の偽装疑惑の余波が尾を引いて居たか、生鮮類は特にうつかり信用出来ぬ思ひに憑かれたものだが、それどころではない米国発金融恐慌が軒並み企業の業績を悪化させて、多くの期間工派遣社員等が職と宿を追はれて路頭に迷ひ、日比谷に「派遣村」まで出現するに至つた年末年始の騒動は今になまなましい。

  炊き出しの湯気と溜息こもごもに立ち混じりつつ派遣村閉づ

 とかうする内に平成は改元以来満二十年となり、若干の昭和六十四年生まれを含めた平成生まれの子等が新成人の祝典を迎へた。

  逆走し半裸になりて乱入す平成生まれの新成人は

 昭和がいよいよ歴史に組み込まれ行く節目として心に刻むと共に改元以後まともな指導性の確立された例しのない時代なることに思ひを致すに索然の感。僕自体の不甲斐なきにも忸怩たらざるを得ぬ。平成生まれの子等が学齢に達するまでに文化上に画期を記し置かむとしていろは字数歌による歌集を上梓世に問はうとしたのだが、若干の知名の士の敬意驚嘆の語を得た以外は全く等閑に付され了つたのであつた。

 お隣の韓半島では「北」の蛮行止まぬまま包容と宥和の政策で彼等の核武装に大きく貢献した「親北」二代の元大統領が一人は「自殺」一人は病死といふどこかやり切れぬ結末を迎へいよいよ事態の容易ならざるを覚悟しつつある間に、

  誰も皆哀号の声堪へ切れぬなかを柩よ誰もうらむな


裁判員制度は実施に移されて原告被告双方にも初体験の裁判員氏らにもそれぞれの発見があつたやうであるが、中で強姦罪の被告への求刑十五年に対し、些かの割引もなく満期の判決を下した点は目を引く。

  強姦の罪には刑期の値引きなき判例布くか裁判員は

 これを昨日被告の無期懲役が確定した江東区女性殺害死体遺棄事件に当て嵌めると、到底極刑以外の選択肢はあり得ない筈であるが、何分被害者の死体が分解遺棄され証拠物件が極めて少ないといふ異常な条件の中上告へとの決断は法理上困難との判断であつただらうか。

  遺体跡形もなく流しやれる彼が起訴せられしは裁判員以前

 とまれ起伏すくない一人暮らしの中で細々とした流れながらも詠み継いではおかうかと思ふ次第である。

看板を架け替へし世のいくばくの進展ありや「拉致」と「領土」と
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2009/9/24

善意  日常 時事

二十秒の手間と善意の血を募るテントは随時驛の前に立つ

おのづから老いしが多く乘合ふか雷門行きのノンステップバス

羽根おほよそ拔けてよたよたと飛びゐたる夕鶴ならぬ日本の翼よ

喫煙場にて隣り合ふ二の腕の毛深きに龍の鱗生き生きと

ライターを預け點けしむ莨火を借るにこと寄せ誘ふ女に
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2009/9/23

鎮座  讀史つれづれ

みづからがおほん袖もて運びたまふ佛しづまり坐さむその土

死の灰を被れりとしも覺えぬ間無線長死したるもこの日か

四百年の時を費やしガリレイがやうやく雪がれし日の夜の雲

廢刀に追討ちかけし散髪も慣ひとなれりされど徴税

僧戰雲のまにま露佛とならせたまふ大佛をがみ涙せる僧
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2009/9/23

「満月に照らされた夫の命日」  日記と歌論

恋のカテゴリーでは惚れたはれた以外の人情の自然に属する家族愛も極力取り入れることにしてゐる。中で代述心緒の一環としてとりあげながら、まさかいくばくも生きながらへてはをられまいと思つてゐた戦争未亡人の境涯たとへば僕が先日詠んだ

亡骸もかへらぬ父の不在をばいぶかしめる子の髪はや白き

の歌に照応するがごとき投書を読売新聞に見受けた故以下に全文紹介する。



満月に照らされた夫の命日

 もう九月。夫の六十五回目の祥月命日がめぐつてくる。
 夫は三歳と六ヶ月の子どもを残して出征。終戦から二年過ぎ、
ビルマで戦病死と記された広報を受け取つた。白木の箱には
名前を書いた紙片と埋葬地点を記した紙が入ってゐた。
 数年過ぎ、ビルマ方面へ従軍した記者の記事で、兵隊のほとんど
が餓死で多くが戦病死として処理されたと読んだ。夢多い若者を
餓死に追い込んだ悲惨。長い年月が過ぎても、今も体中が締め付けられる
思ひがする。
 夫の身内も私の兄弟も逝き、親しい友もゐなくなり、去年の命日は寂しい
法要をした。三歳だった長男は子どもを残して逝つた。次男はもう古希。
母子で暮らした日々を思い出してゐたら、遺影を満月の光が照らした。
このお月様は、夫の最後を見届けてくれたのではと思つた。
 なに不自由ない穏やかな暮らしなのに心から安らげない寂しさがある。
(札幌市 田巻 静香 九四)



 僕は彼岸花との照応で詠んでみたが、未だ二十歳ならずして寡婦となられ、乳飲み子をかかへて戦後から今を奮闘して来られたであらう田巻夫人はこれを満月の中で書いてをられる。その沈痛の思ひのほどは測り知られず、惰弱な僕はただ恥じ入る次第であつた。
生憎今夜は雲量多く満月を望み得ない。

なほ引用文中数詞は漢数字に仮名遣は正かなに「訂正」させていただいた。石原まき子夫人が裕次郎氏への切々たる思ひをつづる日記も裕次郎氏の書簡も、その生まれた時代の国語教育を反映してしつかりと「仮名遣」であることテレビのドキュメントで確認してあれば、このくらゐの補正措置はまして、売文渡世とは無縁の田巻夫人の場合は当然ではないかと思ふからである。

以下は先日の五首一連。


彼岸花咲ける木下を赤蜻蛉群がり寄れば君ししのばゆ

契りをば背くなかりき若くして我に先立ちたるを除きては

子ら既に人としなれば萩叢の奥の墓苑に孫のこゑやさし

亡骸もかへらぬ父の不在をばあやしめる子の髪はや白き

日と夜とややにひとしくなりゆかむ曼珠沙華の果ての夕棚雲よ

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2009/9/22

彼女の本望  画像歌

見る世界 聴く音楽 World & Music

花投げてなびけし彼に指輪を投げ刺し殺さるる彼女の本望

最近ユーチューブからカルメン全曲映画版の方をダウンロードして、あらためてその世界中に愛される謂れを感じ取つた次第です女が全部カルメン風になられてはたまらぬところですが、彼女のやうな恋の自由を主張してやまずその為には命をも擲つ存在は男子の気骨を鍛へ試す上からも確かに不可欠ではあるか。
メリメの原作にはないドンホセの婚約者ミカエラの設定も自由と従属の対偶として効果的で劇世界をふくらみとひろがりを持たせてゐます。

画像はハンガリーのサイトから。クリックすると元のサイズで表示します
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