2009/10/10

渤海使  讀史つれづれ

渤海使命からがら辿り着く都は既に萩が花散る

楡の木ははやも紅葉すとめどなき王の漁色に呆れ退き籠れば

天位今おろされむ沙汰聞くものか引き立てられて裸足のままの庭

窓のなき室へ狂女を少女らが血に浴み肌を保たむとせる

歌ふこと止めしこの身は過ぎゆくか遠の朝廷の果の藁家に
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2009/9/28

院宣  讀史つれづれ

ローマへの凱旋と日を同じうす逃げ入るエジプトにて討たれしは

院宣の時に感じてもてあそぶ昨日の平氏今日の源氏を

大火事の後のお江戸の工賃を取り締まらむと頭悩ます

攻圍の輪狹めながらに繰り返す今ぞ獨立への正念場と

接岸の可なる限りの海濱を虱潰しにせる流民島
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2009/9/23

鎮座  讀史つれづれ

みづからがおほん袖もて運びたまふ佛しづまり坐さむその土

死の灰を被れりとしも覺えぬ間無線長死したるもこの日か

四百年の時を費やしガリレイがやうやく雪がれし日の夜の雲

廢刀に追討ちかけし散髪も慣ひとなれりされど徴税

僧戰雲のまにま露佛とならせたまふ大佛をがみ涙せる僧
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2009/9/17

發明  讀史つれづれ

發明は見る間に送る圍ひ地を締め出されたる農を工場へ

思はざる金鑛出でてどよめけりラッコ亂獲以後の雪原

看護婦と特派記者らの初めて見るジャケツの兵の咥へ煙草を

傭兵が故郷へ送る金やがて後ろめたきもまじる理

印刷機居合はせ促しはぐくめる「聖書のみによる神との生活
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2009/9/14

「道」  讀史つれづれ

「道」の字のおのづから籠むる警しめか首晒されし野盗姦婦ら

宦官が忘れ得ざりし先帝の腋の�劼茲気湍里悗燭泙悗ノ

中風を逃れて壞血の海に堪へ梅毒にめぐりあふ新大陸

燒跡にのべつに立てる私有地の札に泣き寝入りせしはいくばく

切り開く道を無斷の停車場の札拔き捨てて固む遮斷機
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2009/9/10

交換船  讀史つれづれ

寄港地へ近づく船中に沒したる懷疑派の君を土に葬る

まざまざと身にしむ彼我の物量差交換船をゴアに乘り換へ

櫻島の煙りを遠く望みつつやうやく涙わき出でにけり

結ばれて久しく住めど青き眼を怪しまれ竝ぶ配給の列

愕然と動員明けの娘の掌つぶれし肉刺に藥塗れるかな
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2009/9/4

日本海  讀史つれづれ

進退の谷まれる洲に木の根埋め營々築く海の都を

一夜さの地震に埋まる湊を捨てちりぼひゆけり船も娼婦も

山住みの身もとどろかす砲音よ天氣晴朗なる日本海

回頭を布令て旗艦の飜へらすZ旗の波しづまりかねつ

號外の鈴あはただしく馳せゆけば名譽の負傷のごと路地に下駄
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2009/8/28

遺命  讀史つれづれ

わが首級かまへて敵に奪らすなと遺命ぞ重きさまをかへても

射落とせし騎馬武者にたかる雜兵を憎み射掛けぬ矢継ぎ早にも

接吻を迫り押し寄す槍先に王妃が女友達の首

裏切りの掘り返されて梟首へと到る墓邊の土のかぎろひ

遠花火見やりて寝物語にも洩らす密事よ乳揉みながら
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2009/8/22

誅求  讀史つれづれ

誅求のすさまじきまま人の皮剥ぎてかけ連ねし城壁よ

選擧戰さなかを一夜の降灰の埋めつくす官衙阿片窟娼家

滿載の學童と共に沈みたり魚雷の照準はあやまたねど

不破に追ひ散らせし敵將の首級甥といへども傳へ聞くのみ

六人の皇子抱き寄せ誓はせつかけ違ふ末なかれと念ず
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2009/8/18

頸飾り  讀史つれづれ

頸飾り事件にめげず宮殿のなかの藁家に小鳥群れゐき

押默り怒氣をふくみて迎へとる王の歸還は後數刻か

ギロチンの刃をかいくぐり登りつめし統領府より王へ返書す

兵卒にやつして凍れる河越えぬ遠くうかがふ都の旗色

威儀正し柩を迎へとる王はかつて処刑をうべなひし裔
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