2009/8/13

されかうべ  讀史つれづれ

刀創を殘すされかうべを前に語り出づ追ひつめられし一族を

聞くからにむごき運命のうからの娘枕きて告ぐ子なさば訪ねて來よと

里山の涯遠き海見やりつつ火繩を肩に蹄蹴立てつ

駒戻す断崖のを匿せりし祕寶の磯は浪の花して

介錯のたまゆら紅葉せる木の間のいや濃緑の葉もたちまちに
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2009/8/9

上表  讀史つれづれ

上表を今か讀み了へなむとすと頭より肩斬り掛けにけり

小窓より落とす銀貨にそれと知る早馬馳せぬ女王の死を告げに

赤き旗流るる浦に引き上げぬ沈みもかねし女院が髪を

夜会服肩よりすべり落とす時踏み込みて來し憲兵の群れ

失踪の行方危ぶまれし彼は或いは記念柱の礎石の下か
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2009/8/5

閃光  讀史つれづれ

遷らせし大本営も戰場と安樂椅子忌みたまへる大帝

玄関に高張り提燈掲げたり舊幕臣の伯爵邸は

扼腕し切齒し手放せし遼東の要所に簇出せり居留地は

懇ロニ請ハレ赴ク廣島ノ朝閃光ニ重ナル黒イ雨

太陽ノ數千倍ノ熱線ノ即チ灼キツケタル死ノ影ヨ
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2009/7/30

火刑臺  讀史つれづれ

鍬形の來居て鳴きけり魔女を死に到らしめたるその火刑臺

火口丘海に突き出し島の上つひの棲家と降り立ちにけり

積亂雲の中より漏斗のごとき渦垂れて吹き飛ばす馬も砲車も

むざと敵に使はれむこと口惜しと商都をひとつ燒きて退きけり

笛吹きは掻き拭ひけり町中の鼠とともに兒童のかげも
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2009/7/19

ええじやないか  讀史つれづれ

ぬけまゐりせし手土産に持ち帰るええじやないかの貼り札などを

手鎖のとれぬ間咽せてつぶやくをつれびきがほのきりぎりすかな

びいどろを吹ける女の面ざしを寫してうかと枕繪にする

屋形船の舳先で煙管を粋にふかし中の密事を見ぬことにする

お疊の奉行の乞ふにまかせつつおぼこ娘を伽に差し出す
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2009/7/13

餘燼  讀史つれづれ

あけてなほ餘燼くすぶる本能寺をかき探れども見当たらぬ首級

水攻めの堀の上にての切腹を見屆けた上でこその天王山

つくつくし摘みにゆかせしいもうとをいとしがりつつつい叱る朝宵

病床にあるこの國を癒さむとはげみたりしを是非もなく屠腹

夢を繼ぐ者には胤のなきものとからかはれつつ驅け上る天下
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2009/7/10

榮譽禮  讀史つれづれ

榮譽禮受け了へて後迫らるる亡命誓約書への署名を

追ふ者が追はれし後に殺されし身内もたぬ者稀なる國の緑り

痴れ踊る老武者射殺す扇の的外さば以て死なんその矢で

狙撃手の潜むかすかなる空洞に榴彈投げ入れてやうやく莨に火

半島をめぐる攻防はげしけど被彈つゆぞなき病院船は
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2009/7/3

下剋上  讀史つれづれ


念佛の衆に年貢の棒引きを迫られほとほと弱る守護らは

馬借らが迫る徳政聞くまでなく今や都にも入れぬ将軍

家令らが背きくつがへしたる社稷その手飼ひの徒の又くつがへす

暴風のやむなく寄せし種子島に鐡砲來ればすぐ鍛冶屋を呼び

長篠の原の騎馬武者入れ替り立ち替り撃ち盡くす火繩は
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2009/6/25

「擊て」  讀史つれづれ

生け捕りにされて牽かるる父の聲「撃て」とぞ撃ちけりああ父上まで

參陣を迫る小田原へ行かむ夜の間やむなく弟にとらす白扇

菖蒲葺くころは思はむ串刺しにされし御曹司姫らは活けられて

じやがたらにたくましく生きしお春の書騙られて今に誘ふ涙よ

列福のにぎにぎしくとりもたれたる雨の長崎も一つの日本か
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2009/6/22

沖縄戰  讀史つれづれ

特攻のむなしく揚ぐる水煙狙ひすませし艦のほとりに

黍畑のさなかの庭を人歩む吹き飛ばされし首とも知らず

いきり立ち老婆射殺す袂より榴彈伍長を爆殺せるを

通告後轟音とどろく洞なかに目覺めしはかさなる屍の下か

縣民はかく戰へりと打電せり死を覺悟して赴ける我
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