2009/6/17

ライオンの口  讀史つれづれ

ライオンの口を引き裂きたりし身の繋がれて今粉を挽くガザ

大力の帝王なりしを國讓る名指しの筆今や萬鈞のごと

敗亡より四十年經て還り來る困民黨に翡翠のこゑ

大蛇らを斬り捨て獲てし劍をば百世傳ふる八雲の空よ

着の身着のまま逃れ來る道中になくなく手放す子に託す護符
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2009/6/10

女敵討ち  讀史つれづれ

苦り切る女敵討ちの後添へに請はるる出戻りの娘を前に

親の仇尋ねあぐむ間涙せり苦界に沈むいもうとよりの錢

里の兄へ危急告げむと送りやる兩端括す小豆袋を

網駕籠の忍び過ぐる夜の引き明けに果たして鴉の騒ぐ鈴が森

神の許へ四五人送り屆けてから埋め合はせたまへと娘の父は
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2009/6/7

内戰  讀史つれづれ

棒持ちて竝び待つ間を駈け拔し者無し共和派王制派を問はず

將軍を迎へて討たむ舞臺のかげ手綱控ふ手も今かと汗す

サーベルの拔身で圍む建白を捧げ額づく白髪翁を

目認を遂げぬ間遠ざかる爆音胸撫で下ろす雲の砦よ

海戰後一月を經て流れつく兵の屍に妻への手紙
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2009/6/3

勅令  讀史つれづれ

新舊の隙を癒せとみことのり昨日宗旨をひるがへしたる

己が胤いぶかり問へばおしなべて蒼褪め默す父王臣下

塔の下に掘り出す骨は幽せられたまひし幼王と弟宮か

海峡を見晴らす阻づたひ荷ひ來て船今帆を張る金角灣に

燃料の盡きなむとして見下ろせば雲の切れ間を敵空母の群れ
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2009/5/28

生け贄  讀史つれづれ

生け贄の誓ひぞ重き凱旋の我を眞先に迎ふるはわが娘

藤花の房も涙す埋葬の禁破り生き埋めにせられゆく王女

その間に姦婦も后とそなはれり薔薇が色分けせし敵味方

たはやすく吟遊詩人を招く閨枕の數を刺繍す蘭に

照らし見る鍾乳洞の瀧つ瀬に括り合はせし男女の骸
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2009/5/28

提督  讀史つれづれ

撃ち落とす後尾マストの狙撃兵提督は餘命いくばくなるか

鞭身派去勢派等の内訌にかかはる由なし分離派われは

電文を侮辱的にも改竄し送れば得たりや應の宣戰

下賜せむにものなきかつての皇后の摘みてたまへる野の花あはれ

サングラス光らせパイプを手に持ちて降り行く占領地へのタラップ
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2009/5/28

尾羽  讀史つれづれ

尾羽をうち枯らして國境に辿り着く囊中寸錢のみの元帥

たちまちに辨士中止のこゑすれば緒の切れし下駄もちて報せに

閨中に卒中起すマダムを捨てシャツ裏返しに着てモボ路地に

恥ぢらひも捨てて母と娘の荷ひ來る芋五六貫牛蛙など

おめかしで出かけゆく子の脱ぎ放す部屋片付けておもふ時代よ
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2009/5/28

収容  讀史つれづれ

ろっきーデしかごデ敵ヲ防遏セム爲ニ日系人ラノ収容ヲ

精勵の雫を捨て値に賣りて至る砂漠のなかの有刺鐡線

父と子の絆に楔打つごとくしぶとく繰り返す忠誠登録

忠誠を誓へる國の銃口は常に我らに向けられしまま

とどこほる物資を前にいがみ合ふ抗議の拳楊ぐる度ごと
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2009/5/28

狼煙  讀史つれづれ

遠ざかる地平の彼方たちのぼる友の狼煙にこころ落ち居ぬ

雁の脚に便り括りて託しやる節をおもへど降人われは

凍土の地に小物商ふデカブりストの妻は問ひ來ぬ都の流行り唄

一杯の酒でもてなし導ける厠で失ふ本能寺の使者

漏るる無き檢地の沙汰におそれつつ不承不承に差し出す隱田
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2009/5/28

落し穴  讀史つれづれ

あきらめて頭丸めし流人をば赦す色なき菱の落し穴

彰義隊立て籠もれる日の銃創をとどめてゐるか寛永寺の門

ハルビンの驛頭響く銃聲の護國の志に帶電得しや

処刑やむなきに至るまで損害を與へしかなほ知らねどマタ・ハリ

直進の他無き象の隊列を逸らして成れるザマの仕返し
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