2010/10/15

出會 下町・新開地  戀さまざま

着信に誘はれ來れば皮革店列なる奥をぽつねんと猫


物陰へ伴れて袂に手差し入れまさぐる胸は莟み固きに


遊女等を見張れる五叉路ほど近く跨せもんどりうつその肢體


遂げて來てうはの空なる目には見ゆ日に伸び行けるスカイツリーが


吊るされし牛の繪おもふお台場に無駄の極致のビルを見ながら


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2010/3/25

花の面  戀さまざま


花の面明けてみるみる凍え來る氷雨のなかに君を待ちて佇つ

待ち惚け食はせし前科はお合子と着信到るハチ公の前

ひとくさり鯨談義のその間にも伸びて來る手を嫌はむとせず

今日は子を親に預けて手つなぎて向かふ道玄坂口の宿

身の上は包まずあれど固唾呑み待つシャワーの音終るその時

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2010/2/22

光の春  戀さまざま

三寒と四温のせめぎゆるぶ部屋帳をひろく空けて日を入る

ちりばめしごとくかがよふ絨毯の塵惜しみつつ掃除機を掛く

驛へ出て迎ふるピンクの帽子と靴コートは緑のチェックをまじへて

琵琶を彈く辧財天を詩女神と見紛ひゐたる跨線橋下

連れ立ちて部屋へ辿れば上弦の月中天に目守る淺宵
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2010/1/12

初雪  戀さまざま

たまゆらにみぞれしのみの初雪は過ぎて都心の雨にそぼちぬ

今更にときめきもなく手とり入る立ち飲みを出てすぐのホテルへ

お湯を出し放しにして來てしやがみ寄ればせかせかと君が踏み脱ぐズボン

味はつてからお互ひにあたたまらうぜともう指まさぐるブラウス越しに

湯船浮けそそりたちたるものけむる惰性に近き今宵のいとなみ
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2009/11/26

サナトリウム  戀さまざま

木枯しのサナトリウムの或る朝を救け呼ぶ間もなくて息絶ゆ

鍵盤を白魚のごとく奏で這ひし指もみほぐしやうやく胸へ

野邊送るほとりの沼の白鳥は己が身に首のせつやすらふ

書き込みを絶やさずありし譜面さへ白き煙りになしはてにけり

愛されて逝けるを謝しつよき縁を得たまへと君が親は願へど
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2009/11/18

半球の戀  戀さまざま

避妊具を無償で配り盛り上がる南半球夏の祭りは

拉致される目にも遇はずに日に灼けて還つた彼を迎へて肉鍋

をかしくも不氣味な假面して迫られ導き入れぬ北半球へ

うは言に「伏せろ」と叫ぶ銃撃の記憶は未だなまなましきか

年明けて又飛び立つ身マスクして出でゆくウィルスの潜む街路へ
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2009/11/12

落葉焚き  戀さまざま

落葉焚き終へつつなほもうづくまる女の産毛に冬透く日差し

救ひ呼ぶ母が手は力なく垂れゐき疲れ寝入りしたまゆら發作の

柊の垣に薄霜の降りて銀杏は日々に黄を加へ來ぬ

骨甕をあらたに乳兒の靈のかたはらに焚きけり別れし夫の手紙も

なぐさめもかねし女の喪の襟をあはれみ歸る我も老いつつ
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2009/11/6

案内の戀  戀さまざま


案内の娘のさりげなく渡し來る番號よ氣の早い肩に手

耳打ちで告げられたその部屋のドア開ければ彼はもうタオル一枚

君もまづ一風呂といひ水割りを口移し手は胸から腰へ

ひとしきり強めのシャワー扉を開けて果たして割つて入る彼の腰

お互ひを拭きをへてさて抱へ上げ着信曲を奏づるベッドへ
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2009/10/30

老孃の戀  戀さまざま


空は今日雲の刷毛跡涼やけく晝餉の包みもちて君待つ
流れ來る煙草の煙りは老孃の後れ毛よぎり押し默る噴水
誑れて名を路地に呼びしか今作るともには開くことなき辨當
後ろより眼隱し遊び伴れ歸る姪御のお下げ髪の花簪
彼はただ十年續きの不都合で來られないのよと姪御に説き聞かす
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2009/10/24

深秋の戀  戀さまざま


秋深むまにまに感染に死ぬ類の幼兒を加へ來るに怯えつ

胸に固く抱き寄せ拒む子のなきに事寄せ引き取らんといふ彼の妻

渡り歩く職場の上司と必ず寝る女といはれきせめてもの意地

後れ毛に白きがまじれるを送りドアを閉ざしてほどなく子は寝入る

乳母車引きつつ辧護士の許へもう氣にかけてゐる三輪車
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