トリノでの世界選手権で、シングル男女アベック優勝を飾った日本フィギュア陣。今日の午前の便で高橋大輔が帰国しました。そして、午後の便では浅田真央も帰国。今回の世界選手権は、激闘のバンクーバー五輪から1ヶ月という極めて過酷な条件下で行われたものです。コンディションを崩した選手やモチベーションの上がらない選手が多かった大会でしたが、日本フィギュア陣は本当に良く頑張りました。決してその金メダルの価値が批判されるようなものではありません。全員が同じ条件下で競技を行ったのですから立派な成績です。
高橋大輔の世界選手権での得点は、バンクーバーでのライサチェクの金メダルポイントを上回っています。ライサチェク、プルシェンコ、ランビエルが出場していないとは言え、全く問題としない高得点をたたき出して、世界一を射止めました。その世界一の表現力は、「アスリート」と呼ぶよりも「アーティスト」と呼ぶのが相応しいものです。しかし、あくなき4回転へのチャレンジも追及している大ちゃんは「アスリート」としての誇りも忘れていませんでした。
女子シングルの世界女王となった浅田真央。とことんまでに、3アクセルの成功にこだわってきました。トリノでは3度跳んだ3アクセルは、2度までがダウングレードの判定でしたが、それ以外は完璧なノーミスの演技でした。では、彼女は何故、ヨナに勝てなかったのでしょうか?。いろんな方がいろんな評論を述べています。バブリーなヨナの得点に誹謗、中傷の意見や書き込みも見られます。
しかし、五輪では3度の3アクセルを成功させたにもかかわらず、金妍児には完敗しました。世界選手権では、コンビの3アクセルのダウングレード以外はノーミスのパーフェクトな演技だったにもかかわらず、転倒した上に細かいミスの目立ったヨナのフリーの得点を超えられませんでした。世界一の「アスリート」浅田真央に何が足りないのでしょう?。
私は、このどこまでも向上心にあふれ、常に完璧を目指すアスリート精神が逆に浅田真央の得点を抑えているような気がしてなりません。彼女は常に「ノーミス」と「パーフェクト」を口にしていたように、いつでもどこでも『完璧』な「アスリート」を目指してきました。そのストイックなまでのスポーツマンシップは賞賛に値します。しかし、えてして最高のアスリートが最高の王者になれるとは限らないのが、スポーツの世界です。
例えが良くないかも知れませんが、朝青龍は相撲界では最高のアスリートでした。その身体能力は歴代横綱の中でもトップレベルでしたが、横綱としての品格は常に論議の対象となりました。プロスポーツであってもアマチュアスポーツであっても、観る人が共有できる感動が必要なのです。負けたときだけ喜ばれて座布団が乱舞する横綱では駄目なのです(ただ、朝青龍は客を呼べる力士でした。ヒールであってもこれは協会としては得がたい人気でしたから、中々意見できなかったのは仕方ないでしょうね)。最高のアスリートが王者ではないというのは、結構あることですよね。
真央ちゃんの場合は、朝青龍とは次元が違うとお怒りのことと思います。話が混乱してきたので元に戻します。
私が言うまでもなく、浅田真央は世界一のアスリートです。それは衆目の一致するところでしょう。最高の技術を持った選手ですから、バンクーバー五輪でも金妍児がいなければ、3アクセルの圧倒的なパワーでねじ伏せて金メダルを獲得していたでしょう。しかし、金妍児には勝てませんでした。「フリーでのミスがなければ…?」と言う人もいました。でも、あの得点差は埋められなかったでしょうね。真央ちゃんに足りないものは何でしょうか?。それは、万人に受け入れられる感情表現だと思います。トップアスリートは、常に自分との戦いに勝とうとします。それは勿論当たり前の行動なんですが、時としてそのストイックさが大衆に近寄りがたいオーラを発します。日本の大会でなら観衆も真央ちゃんをよく分かっていますから問題ないのですが、海外の大会では観衆のみならずジャッジに対してすら受け入れられないオーラとなってしまいます。プルシェンコがライサチェクに勝てなかったのもここに原因がありそうです。ヨナの大衆にこびたような演技は日本人には鼻に付くかも知れませんが、欧米人にとっては丁度良い感覚なんですね。実力以外での戦いには、真央ちゃんはあまりにも正々堂々と戦いを挑みすぎたのではないでしょうか?。
これからのニュー浅田真央は、欧米人のハートをもわしづかみにする情感を身に着けてほしいです。そうなれば、「ノーミス」+「パーフェクト」+αの無敵の女王が誕生するのです。
これは、私の個人的な私論です。戯言と思って下さい。でも、真央ちゃんにはそれができるのです。頑張ってほしいのです。
進め

無敵の浅田真央

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