大阪桐蔭と光星学院の史上初、春夏同一カードによる決勝戦は、藤浪の2安打完封により大阪桐蔭の春夏連覇で決着しました。過去に6校の春夏連覇を達成した学校がありましたが、その殆どが苦しい試合を経験し「傷だらけの栄光」と言われたものです。今回の大阪桐蔭のような安定的な戦いを続けた学校は稀有な例でした。
@1962年 作新学院
A1966年 中京商
(現:中京大中京)
B1979年 箕島
(公立校唯一の春夏連覇)
C1987年 PL学園
D1998年 横浜
E2010年 興南
F2012年 大阪桐蔭
@1962年 作新学院
・エース八木沢荘六を擁したチームは春の選抜では準々決勝で八幡商と選抜史上唯一の延長18回引分けとなりました。再試合を制した後の準決勝の松山商戦も延長16回までもつれ込んだことでこの優勝は「傷だらけの栄光」といわれました。
・夏の大会開幕直前、八木沢に赤痢が検出され、作新はエース抜きでの戦いを強いられたのですが、アンダースローの加藤斌が大活躍します。初戦の気仙沼戦が延長戦になった以外は危なげない戦いで優勝しました。春夏で異なる投手で史上初の春夏連覇を達成した唯一の学校となります。
A1966年 中京商
・戦前にすでに夏春連覇、夏三連覇などの偉業を達成し、1933年夏には明石中と延長25回の死闘を演じるなど、名実ともに高校球界屈指の名門となっていた中京商ですが、春夏連覇はこの年が初めて且つ唯一のものです。
・4度目の春制覇となるセンバツは、準決勝で玉国光男のいる宇部商との選抜史上最長となる4時間35分の延長戦を制しました。
・夏は接戦の連続でしたが、エースの加藤英夫を中心に勝ち抜き春夏連覇を達成しました。
B1979年 箕島
・春は準決勝でPL学園を延長で、決勝は牛島−香川の浪商を接戦の末破り、大阪勢を立て続けに撃破して優勝しました。
・夏は3回戦で星稜との延長18回の死闘に勝利してそのまま優勝します。延長で2度許したリードを2度ともに、2アウトからホームランで追いつき、18回裏にサヨナラ。いまだに語り継がれる名勝負となりました。
C1987年 PL学園
・春は準決勝の東海大甲府戦こそ序盤にリードを許す苦しい試合でしたが、その他は危なげない戦いぶりで優勝しました。
・夏も4番の深瀬を怪我で欠きながら6試合全てで初回に先制点を挙げる理想的な試合運びで優勝。
投手陣は野村弘・橋本清・岩崎充宏の3枚を使い分け、野手は主将の立浪和義を中心に片岡篤史・深瀬猛・桑田泉・宮本慎也らがおり、結果的に5人がプロ野球選手になるタレント集団でした。
D1998年 横浜
・秋の神宮大会を制して臨んだ選抜は準決勝のPL学園戦で苦戦しますが「3-2」で逆転勝利し、決勝でも関大一を完封して大阪勢に連続勝利しての優勝でした。ちなみに、この大会でベスト4に残ったもう一校は日大藤沢だったため、ベスト4が神奈川・大阪勢で占められました。
・優勝候補筆頭として迎えた夏は、2回戦の鹿児島実業戦で初戦でノーヒットノーランを達成した杉内俊哉を攻略します。
準々決勝では春に続いてPL学園と対戦しましたが、雪辱に燃えるPL学園に松坂が打ち込まれ大苦戦。シーソーゲームで延長に入っても2度突き放したが2度とも追いつかれました。最終的には17回に常盤良太の決勝2ランで勝利しましたがエース松坂が250球を投げ抜き、まさに満身創痍の勝利でした。
松坂が登板を回避した準決勝の明徳義塾戦はともに2年生の袴塚健次・斉藤弘樹がマウンドに上がったのですが、明徳義塾打線につかまり、8回表終了時点で「6-0」とリードされ勝利は絶望的でした。しかし8回裏に明徳のエース寺本四郎を捉え4点を返すと、9回表には松坂が登板し三者凡退に抑えました。そして9回裏に3点をとって奇跡の逆転サヨナラ勝利をおさめたのでした。
決勝では京都成章相手に松坂が25回大会の海草中の嶋清一以来の決勝ノーヒットノーランを達成。史上初の全国大会四冠、公式戦44連勝無敗を達成したチームでした。
E2010年 興南
・選抜は島袋洋奨の好投と強力な打線で勝ち進み、決勝では日大三を「10-5」(延長12回)で倒し優勝しました。
・夏の沖縄県勢は沖縄水産の2度の準優勝が最高で、優勝の経験がありませんでした。興南は準決勝で報徳学園を相手に5点差を逆転、決勝では東海大相模を圧勝で下しました。
過去の春夏連覇には「伝説の名勝負」や「奇跡の逆転勝利」など記憶に残る試合を勝ち抜いて栄冠にたどり着いたのですが、今回の大阪桐蔭はあっさり、すんなり連覇を達成してしまいました。春夏ともに決勝を戦った2校の力が抜けていた感じがします。
これからも幾多の名勝負が繰り広げられるであろう甲子園。新たな年の選抜へ向けた戦いは既に始まっています。

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