2011年、チーム立ち上げからその中心となり卓越した指導力とカリスマ性で県北の田舎町のサッカーチームをトップリーグに引き上げた功労者がチームを去りました。本田美登里現AC長野パルセイロレディース監督です。実質的にチームを生み出した彼女に引っ張られて来た岡山湯郷Belleの崩壊はその時期から進んでいました。
シーズンオフに繰り返された大量退団。そのたびに場当たり的に行われた付け焼刃のような補強。ある一定の戦力は維持してきましたが、内部はかなり蝕まれていました。2011年に日本女子サッカーは世界の頂点を極め、一躍注目される存在になってしまったことが勘違いを生み、チームの問題の本質を隠してしまったのです。
今年のゴタゴタは長年積もりに積もった軋轢が音を立てて崩れ去ったものです。ようやく監督が決まって、さてこれから何とかしたいと動き出そうとするチームに鬱積した火種はここに来て一気に炎をあげました。
今回退団する選手は10人。気持ちを押し隠して感謝の言葉を述べる選手が多い中で本音を語る選手のコメントが気になります。これがクラブの病巣の深さを示しており、抜本的な解決には程遠いという悲しさが湧き上がってきます。
HPのコメントを抜粋します。
田中麻由選手のコメント:
私は9歳から約9年間この岡山湯郷Belleの下部組織でサッカーをさせてもらいました。そして、3年前にずっと夢に見ていた岡山湯郷Belleのトップチームに自分がチームの一員としてサッカーをさせてもらえる日が来ました。
沢山の事を学び、経験しました。私をここまで成長させてくれたのも、このチームのおかげです。
でも何度ももうこのチームを辞めたいと思った事もありました。
そんな時に私を支えてくれたのが家族やいつも側にいてくれた仲間、そしてどんな時でも「頑張ったね」「かっこよかったよ」「お疲れ様」と声をかけてくださるファンの皆様をはじめ、スポンサー様、ボランティアスタッフの皆様のおかげでした。
言葉では言い表せないくらい本当に感謝しています。
この1年間沢山の事が起こり自分自身がこのチームに対して何も出来なかった不甲斐なさと来季こそは今までよりも、より良いチームにして切磋琢磨したかったのですが、それがしたくても出来ないのが何よりの後悔であり、とっても悔しいです。
そして絶望しかありません。
このチームで心の底から信頼できる指導者に出会えた事、サッカーが出来た事、最高の仲間に出会えた事、ファンの皆様に出会えた事、スポンサー様、ボランティアスタッフの皆様に出会えた事、そしてこんなにも地域に愛される岡山湯郷Belleというチームに出会えた事は私にとって一生の宝物です。 私が幼い頃からここまでの成長を見守ってくださった皆様に心から感謝しています。
12年間この地でサッカー出来て本当に幸せでした。本当にありがとうございました。
最後にこのチームを一生誇りに想い大好きなチームでいたかったです。
川野紗季選手のコメント:
この度、岡山湯郷Belleを退団する事になりました。
私は幼い頃からこのチームでサッカーをする事が1つの夢でもあったので、このチームでサッカーが出来た事を嬉しく思います。
私が3年間を通して1番印象的な試合は2014年エキサイティングシリーズの千葉戦です。3対0からの逆転勝利。
試合に出てる人も出てない人もみんなの為にという気持ちがあったからこそ勝てたんだと思います。
今年1年間は多くの選手やスタッフが退団し厳しい状態が続きました。それでも残ったメンバーで勝つ為に練習を積み試合に臨みました。
1部に残留できず2部に降格してしまった事は応援してくださったサポーターの方やスポンサーの方に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
私自身も怪我でチームが苦しい時に何も出来ず悔いが残る1年になりました。この悔しさを胸に来年頑張ろうと思っていましたが退団する事になりとても残念です。
このメンバーでもう1年頑張りたかったのが私の本音です。
今回多くの選手が退団しますが新しいチームで1から頑張ろうと思っているチームメイトを温かく見守り応援してくださると嬉しいです。
最後にこの3年間どんな時も共に闘ってくださった全ての方に感謝しています。本当にありがとうございました。
「残りたいのに残れない」・・・Jリーグのようなプロ契約なら契約満了に伴う戦力外通告は珍しいことではありませんが、アマチュアの彼女たちの戦う場所を奪ってしまうクラブの現状は、もう立て直すことのできない最悪の状態まで達してしまったように感じます。
「サッカーといで湯の町」をキャッチフレーズに、湯郷温泉“美人の湯”から採ったフランス語で『美人』を意味する「Belle」というチーム名。地域ぐるみで盛り上げてきたローカルクラブはその存在を終えてしまうのか? 第三セクターのような運営で何かと稚拙だったクラブ経営は後ろ盾を失った今、混迷の度合いを深めています。
加戸由佳

かつて同年代の男子選手を置き去りにしたスピードとテクニックを兼ね備えた“天才少女”は繰り返す大怪我を克服しながらチーム一筋に戦い続けてもう26歳です。沈みかけた泥舟と運命をともにしようと思っていてくれるなら、その想いが不憫でもあります。
願わくは、今は7人しかいない残る選手たちの気概に応える復活を。フロントに課せられた責任は果てしなく大きいのです。

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