「会計のプロはゴーン無実を確信する(Video Newsより)」
不正経理
会計のプロはゴーン無実を確信する
会計評論家の細野氏に日産ゴーン事件について聞いた動画(ダイジェスト版)。
役員報酬虚偽記載容疑については...
「ゴーン氏が退職後に受け取ることになっていた自らの報酬の一部が有価証券報告書に記載されなかったことが問われている事件について細野氏は、企業会計上の原則である発生主義の観点から、事件性は皆無だと断定する。仮に、その段階では支払いが確約されていたとしても、10年後に本当にそれが支払われるかは、その時の経営状況や経営者の判断次第でいくらでも変わり得る。会計基準では報酬は実際に発生した時に有価証券報告書に掲載されるべきものであり、未発生の報酬を記載しなかったことが虚偽記載になることなどあり得ないと細野氏は言う。」
動画を見ると、企業会計原則注解の引当金の要件みたいなものをもちだして、支払の蓋然性がないから費用計上不要といっているようです。しかし、これまで報じられてきたゴーン氏側の主張や、最近報じられたケリー氏へのインタビューを読むと、支払蓋然性以前に、そもそも法的に会社には支払義務が発生していないのではないか、例えば、開示もれだといわれている報酬は退職後の顧問報酬という名目ですから、株主総会で承認された役員報酬の枠でカバーすることはできず、あらためて取締役会で承認するまでは無効(また費用の期間配分上も未発生)なのではないかと思われます。
特別背任については...
「メディア上で「サウジアラビアルート」や「オマーンルート」などと呼ばれている、日産の資金を自らが支配する会社に還流させた特別背任容疑の方も、自らの金融取引の含み損を日産に肩代わりさせただの、豪華クルーザーの購入に使われたなど、メディア上では「ゴーン銭ゲバ情報」が乱れ飛ぶが、細野氏はこれが犯罪として成り立つかどうかは、サウジアラビアのハリド・ジュファリ氏やオマーンのスヘイル・バウワン氏への支払いが販売促進費として妥当な金額だったかどうかのみが争点であり、その後の資金の使途は特別背任罪とは無関係だと語る。
少なくとも起訴した段階で特捜部は、中東日産からの支払い先となったジュファリ氏やバウワン氏には事情聴取を行っていないため、支払いの内訳が何だったのかを確認することはできていないはずだ。また、ゴーン氏を特別背任罪で起訴してしまった今、ジュファリ氏やバウワン氏は共犯者となってしまったため、逮捕される怖れのある日本に来ることも考えられない。その状況下で、両氏の会社への支払いに背任性があったかどうかをどうやって判断するのか。公判で弁護側が監査決裁決算書を証拠提出して、会計上の損害がないことを立証した瞬間に、特別背任はまったく成り立たなくなると細野氏は言う。」
特別背任がないとまではいっていないようですが、日産が支払っている先は、ゴーン氏のお友達かもしれないが、ペーパーカンパニーではなく、販売店として実態のある会社ですから、販促費を支払うこと自体は問題なさそうです(日産としてもそのような権限をゴーン氏に与えている)。そこから先で、ゴーン氏やその親族との金のやりとりがあったとしても、会社取引先と役員・役員親族がビジネス上の関係(投資や融資など)を持ってはならないということはないので、そのことだけで犯罪だとはいえないでしょう。
もちろん、販促費が多すぎるとすれば、役員としての経営責任を問えばいいでしょうし、役員やその親族が会社の取引先と多額のカネのやりとりをすることは好ましくないので、やめさせることは必要でしょうが、特捜部を使って、いきなり逮捕させるやり方がよいとも思えません。
ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠
『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く(東洋経済)
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