320億円詐欺?…元社員ら丸紅の稟議書偽造
東証マザーズ上場の医薬品研究開発「LTTバイオファーマ」の子会社である医療支援サービス業「アスクレピオス」(昨年9月に完全子会社化)の元社長らが、大手商社「丸紅」との共同事業とみせかけた投資話で、複数の投資ファンドから総額320億円前後の資金を不正に集めていたという記事。
「関係者によると、元社長は投資事業組合などを組織して資金を集め、主に経営不振の病院を再生させる事業に関与した。
その際、丸紅で医療事業などを担当する部署の社員らと共謀し、丸紅社内の稟議書などを偽造。その上で、丸紅が実質的に元本と分配金を保証する、と共同事業の枠組みを強調し、リ社やフィンテックグローバル、大手外資証券会社などから総額300億円以上を引き出していたとされる。
関与した丸紅の2社員は、実際には丸紅社内で承認されていない計画などに関する書類を偽造。副社長名や担当部の部長名が入っていた。また、丸紅本社の会議室に投資会社担当者を呼ぶなどして、信用させていた。」
未償還は400億円、200億円超行方不明 「丸紅」文書偽造
「関係者によると、アスクレ社の前社長は、LTT社の前社長と一緒に丸紅の文書偽造に何らかの形で関与していた疑いが強いとされる。LTT社の前社長は丸紅出身で、今月、健康上の問題を理由に社長を辞任、退社している。丸紅を懲戒解雇されたライフケアビジネス部嘱託社員2人のうちの1人とは、かなり以前からの仕事仲間だったという。
アスクレ社は、丸紅が元本や分配金を保証するかのような文書を投資家らに示し、事業内容を信用させていた。アスクレ社が事実上支配する投資事業組合で集めた資金は、アスクレ社と親密な関係にある千代田区の建築コンサルティング会社を通じて病院に投資されるというスキームだった。」
3 月29 日の一連の報道について(PDFファイル)
このプレスリリースによると、丸紅側は「投資事業組合等との間で債権・債務は一切なく、また、提示を受けた当社名義の契約書類などは、すべて偽造されたものであることが判明いたしました。また、これらの書類の偽造について、会社として一切関与していないことも同時に確認致しております。」ということで、支払義務は一切ないと断言しています。
このプレスリリースによると、問題のスキームは「投資事業組合等が当社から受託したという架空の医療関係の業務について、投資事業組合等がこれを第三者に再委託した上で、その対価として数十億円もの巨額の金額をこの第三者に振り込み送金し、数ヶ月後に、当社の借入レートの数十倍を上回る非現実的な金利相当額を加えて、当社が投資事業組合等に支払うという契約構成」という不自然なものであり、たしかに、資金運用の専門家であるリーマンブラザーズなどがなぜ引っかかってしまったのか、不思議に感じます。
Lehman hit by fraud involving Marubeni employees
こちらのロイターの記事によれば、だまされたリーマンブラザーズの方は、「法的な請求権の存在を確信しており、丸紅から返済を受けるまでその権利を追及していく」といっています。
"We are confident in our legal claim which we will pursue until we receive repayment from Marubeni," said Matthew Russell, Lehman Brothers head of Corporate Communications, Asia-Pacific, in a statement sent to Reuters.
LTTバイオファーマについてもネットで少し調べてみました。
子会社の法的整理に関するお知らせ(LTTバイオファーマのプレスリリース)(PDFファイル)
問題の子会社は、3月19日に親会社から破産申立がおこなわれています。プレスリリースによると平成17年3月期の売上25百万円が、平成19年3月期には売上50億円になっています。そもそも子会社化した時点で実態のある会社だったのでしょうか。
平成20年3月期 第3四半期財務・業績の概況(PDFファイル)
のれんが38億円も計上されています。その他、前渡金が22億円、その他流動資産が24億円、長期貸付金が11億円計上されています(いずれも前期末はほとんどなかった)。
また、以下のような注記がなされています。
「平成19年5月25日、東京証券取引所は当社と株式会社アスクレピオスとの株式交換が実施され、同社を完全子会社とした場合、当社が実質的な存続会社ではないと認定され、本株式交換の効力が発生した日から平成23年3月31日まで、新規上場審査基準に準じた審査を受けるための猶予期間に入る可能性がある旨発表いたしました。」
詐欺師集団に東証上場企業が取り込まれてしまったのでしょうか。
ついでに監査人を調べてみると、前期はトーマツ、当期はプライム監査法人です。