週刊経営財務の9月7日号に、青山学院大学の福井教授による「会計研究の危機:IFRSと基準の統一」と題した米国会計学会年次総会のレポートが掲載されています。
この中のコンバージェンス反対論を紹介している箇所がおもしろかったので紹介します。
「実は、日本ではあまり知られていないようだけれども、・・・米国の会計研究者の間では、会計基準のコンバージェンスをめぐっては、意見が割れている。とくに学界のリーダーと目される研究者の間では、基準統一には懐疑的意見の方が主流だといってもよい位である。」
(ラシャド・アブデル・カリク教授の見解の紹介部分)
「まず、IFRSが米国GAAPよりも投資家に有用であるという確たる証拠は存在しない。IFRSが高品質であるというのは、今のところ
基準統一推進派の宣伝に過ぎない。IASBによるIFRSが原則主義のため簡明でわかりやすく、FASBによる米国基準が規則主義のため煩雑という主張も、前者に比べ後者の
歴史が長いという単純な事実を無視した意味のない議論である。FASBが利害関係者からの「明確化」要求に応えた、あるいは抗しきれなかった結果、米国GAAPの細則化が進んだように、今はまだ比較的簡潔な
IFRSもいずれ煩雑化必至である。
・・・経済的合理性を欠いた上からの強制的統一、コンバージェンスというよりコンバージョン(conversion)は望ましくない。」
「・・・学会重鎮の意見にも影響されてか、統一反対論は研究者のみならず実務家の間でも有力で、日本で喧伝されているのとは異なり、IFRSへ合流するか否かの決定は米国では先送りされているというのが実情に近い。」
といっても、日本は米国が方針を固めるまで待っているわけにもいかないでしょうから、どうすればよいのでしょうか。