旬刊経理情報の12月10日号に「IFRS適用に向けたアウトソーシングの着眼点」という解説が載っていました(44〜48ページ)。上場企業がIFRS導入に際して外部のサービスプロバイダー(監査法人やコンサル会社)の支援を受ける際の考え方を論じたものです。
よくまとまったわかりやすい解説だと思いますが、会計士の立場からは独立性に関してふれている部分が気になりました。
「自社の会計監査人にアウトソーシングを依頼する業務範囲については、実務的な会計処理に関するアドバイス、人材教育、現行のIFRSおよび改訂となるIFRSの適用に関するアドバイス、諸外国の事例紹介等が考えられる。
留意しておく必要があるのは、これらのアドバイスについてはあくまでアドバイスであり、基本的に
会社の意思決定にかかわることおよび会計監査人が
自ら会社の作業を代行することはできないということである。会計監査人はIFRSの強制適用後の会計監査を念頭にサービス提供をする必要があるため、その
独立性の観点からサービス提供範囲に制限が生じる。言い換えれば、ある業務範囲をすべて依頼するといった丸投げのような業務依頼はできない。
一方、前記の業務を自社の会計監査人以外に依頼するのであれば、当然のことながらそのような制限はなくなる。企業にとっての必要な部分を適宜、自社の会計監査人以外の外部のサービスプロバイダーに依頼することとなるが、ここで忘れてはいけないのが、会社側での理解と運用である。外部のサービスプロバイダーを利用した場合であっても、その運用主体はあくまで会社であり、自らが理解したうえでの業務となっていなければ監査上の問題となるであろう。・・・」
IFRS導入には、IFRS導入後に採用すべき会計処理基準、業務管理・業務フロー、システム対応、IFRSに対応可能な人材の確保・育成といった項目が必要となります(同稿45ページ)。これらへの監査人の関与は、あくまで、企業が主体となって決定・整備・運用し、監査人は側面から助言を行うというかたちにならざるを得ないということでしょう。
ただ、助言の範囲だといっても、客観的に問題点・要改善点を指摘するだけであとは会社の対応に任せるような場合もあれば、会社の導入プロジェクトに深く関与して手とり足とり指導する場合もあるでしょう。あまりいきすぎると、助言とはいえ実質的に「自ら会社の作業を代行する」ことになってしまいます。グレーゾーンが生じることはさけられません。
J−SOXの場合は、もちろん会社が行うべき内部統制の評価作業を代行するようなことは禁止されていましたが、会社のコストも考慮して、認められる助言・指導の範囲に関しては、あまり厳しいルールは定められなかったように思います。IFRS導入支援に関しては、どうなるのでしょうか。
また、経理情報の解説にもあるように、監査人以外に依頼したとしても、IFRS準拠の財務諸表とその作成のための内部統制の整備運用は、最終的に会社の責任ですから、すべて丸投げというわけにはいきません。
企業にとっては、監査人、監査人以外の外部の人材、企業の内部の人材をうまく組み合わせて活用することが、必要となるのでしょう。
倫理委員会報告第4号「職業倫理に関する解釈指針(その3)」の公表について(日本公認会計士協会)
協会の解釈指針では、一応、監査人が実施可能な業務が例示されています。