企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」及び関連する他の改正会計基準の公表
企業会計基準委員会は、企業会計基準第25号「
包括利益の表示に関する会計基準」の制定及びこれと関連する企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の改正を、2010年6月30日付で公表しました。
連結財務諸表について、税効果金額や組替調整額の注記を除き、2011年(平成23年)3 月31 日以後終了する連結会計年度の年度末から適用です(早期適用可)。
基準には個別財務諸表のことも書かれているのですが、報道されているように、「個別財務諸表への適用については、
本会計基準の公表から1 年後を目途に判断する」とされています。
基準の概要は以下のとおりです。
1.定義
「
包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいいます。
「
その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分をいいます。連結財務諸表においては、
包括利益と少数株主損益調整前当期純利益との間の差額になります。
2.包括利益の計算の表示
式で表すと以下のようになります。
(個別財務諸表の場合)
当期純利益±その他の包括利益の内訳項目=包括利益
(連結財務諸表の場合)
少数株主損益調整前当期純利益±その他の包括利益の内訳項目=包括利益
その他の包括利益の内訳は、税効果を控除した後の金額で表示します。ただし、税効果金額を一括して加減する方法で記載することもできます。
税効果の金額と、組替調整額は、その他の包括利益の内訳項目ごとに注記が必要です。
(組替調整額とは、当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分(リサイクリングされた部分)のことです。)
表示の方法は、2計算書方式(損益計算書と包括利益計算書を分ける方法)と、1計算書方式(損益および包括利益計算書という1つの計算書で表示する方法)があります。
(2計算書方式の例−ASBJ資料より−)

(損益計算書と包括利益計算書がつながっていないことに注意。1計算書方式では、当期純利益に少数株主利益を加算して、無理やりつなげています。)
3.その他
連結財務諸表上は、これまでに公表された会計基準等で使用されている「損益計算書」と純資産の部の「評価・換算差額等」という用語は、それぞれ、「損益計算書又は損益及び包括利益計算書」、および、「その他の包括利益累計額」と読み替えられます。
その他気になった点
公開草案では、株主資本等変動計算書に関する会計基準の改正案も併せて公表されていましたが、今回は含まれていません。ただし、関連基準として別途改正予定とされています(とりあえず上記読み替え規定で代用か)。個別への適用を延期したことと関係があるのかもしれません。
当サイトの関連記事(公開草案のときのもの)(包括利益を導入するというのに、株主資本等変動計算書に包括利益が全く表示されないのはおかしいという批判を書きました。)
(30日は、このほかにも会計基準の改正がいくつか公表されましたが、当サイトでは明日以降掲載予定です。)
包括利益関連本
包括利益表示が正式決定、単体については1年後に判断(@ITより)