「金融商品会計基準(金融負債の分類及び測定)の見直しに関する検討状況の整理」の公表
企業会計基準委員会は、「
金融商品会計基準(金融負債の分類及び測定)の見直しに関する検討状況の整理」を、2011年2月25日付で公表しました。
「金融商品に関する会計基準」の全面的見直しの一環として、昨年8月の「金融商品会計基準(金融資産の分類及び測定)の見直しに関する検討状況の整理」に引き続いて公表されたものであり、IFRS 第9号とのコンバージェンスを念頭において検討された結果がまとめられています。
なお、包括的な金融商品会計基準の見直しに関する公開草案は、2011年下期に公表予定です。
以下、「本検討状況の整理の概要」を参考にして要点をまとめました。
1.本検討状況の整理の目的
・金融商品会計の現行基準の見直しプロジェクトの一環として、主に金融負債の分類及び測定に関する部分について、必要な内容を整理することを目的とする。
2.金融負債の分類及び測定の基本的なモデル
・金融負債は、原則として、当初認識後、
償却原価で測定するものとして分類する。
・
売買目的の金融負債及び
デリバティブ(金融保証契約に該当するもの、指定された有効なヘッジ手段であるものを除く。)については、
公正価値で測定し、
評価差額を純損益に認識する。
・
金融保証契約及び市場金利よりも低い金利を貸出条件とする
貸出コミットメントについては、企業会計原則注解「注 18 引当金について」による金額、又は、前受収益として繰り延べられるべき残高のいずれか高い金額によって測定する。
3.公正価値オプション
・一定の要件を満たすことを条件として、
公正価値オプションの適用を許容する。(公正価値オプションとは、金融負債を公正価値で測定し評価差額を純損益に認識するとの指定を、当初認識時に限り行うこと)
・
デリバティブが組み込まれた複合商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まないもので、
主契約が金融負債に該当するもの)について、一定の場合を除き、その全体を公正価値で測定し、評価差額を純損益に認識するとの指定を、当初認識時に限り許容する。
4.払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合商品の取扱い
・払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない
複合商品について、
一体処理を原則とする。
・組込デリバティブの経済的性格及びリスクが主契約の経済的性格及びリスクと密接に関連していないこと等の要件を満たす場合、
組込デリバティブを主契約と区分して、独立したデリバティブと同様に処理する。
・管理上、組込デリバティブを区分している場合について、2つの案を提示
5.分類の変更
・金融負債について、分類の変更は認められない。
6.負債の信用リスクの変動に起因する公正価値の変動額の取扱い
・公正価値で測定し評価差額を純損益に認識するものとして当初認識時に指定された金融負債については、一定の場合を除き、金融負債の公正価値の変動のうち、当該負債の
信用リスクの変動に起因する金額をその他の包括利益に表示する一方、
それ以外の金額を純損益に表示する。
・負債の消滅が認識される場合に、その他の包括利益累計額のリサイクリングを行うかどうかについて、リサイクルする案としない案を提示
償却原価が原則とされているので、一般の事業会社にとっては、大きな変更にはならないと思われます。
負債の公正価値オプションについては、あまり評判がよくないようですが、時価会計の影響を緩和する効果はあります。例えば、信用危機が発生し金利が高くなると、資産の時価は下がって、(時価で評価する資産であれば)損失が発生しますが、その際に、負債側も時価評価できれば、金利上昇で利益が生じるので、損失を相殺することができます。しかし、自己の信用リスク増大→金融負債(自社が発行した社債など)利回り上昇→負債の評価益計上、というのはおかしいということで、信用リスク変動による時価変動は、純利益から外して、その他包括利益にもっていくようです。
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