企業会計審議会第29回監査部会 議事次第
9月25日に開催された企業会計審議会監査部会の資料が、金融庁のウェブサイトで公表されました。
すでに報じられているように、
「不正に対応した監査の基準の考え方(案)」(PDFファイル)というのが説明されたようです。
(感想)
・この「考え方」の付録1「不正リスク要因の例示」は、
監査基準委員会報告240の付録「不正リスク要因の例示」と非常に似ています。
・同じく付録2「不正による重要な虚偽表示の端緒を示す状況の例示」は、監査基準委員会報告240の「不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況の例示」と感じは似ていますが、より具体的になっているようです。
ただし、オリンパス粉飾事件で指摘されているような点が、そのまま入っているような項目もあります。例えば、「
資金還流取引等のオフバランス取引の可能性を示唆する状況」として「・企業のビジネスに直接関係の無い
高額な資産の取得、企業の買収、出資、費用計上など、経済的合理性が明らかではない重要な取引が存在する。・
経済的合理性が明らかではない重要な投資有価証券、有形・無形固定資産の取得及び減損処理が繰り返し行われている」など。
・付録2には「通常の事業活動以外のビジネス(特に、どのような活動により収益を計上しているのか分かりにくいもの)における重要な売上計上等、企業及び当該企業が属する産業を取り巻く環境に対する監査人の過去の経験に照らして
通例ではない重要な取引、又は、企業の関与の理由が不明瞭な重要な取引が存在する」という項目があります。
一方監査基準委員会報告240では、リスク対応のための必須の手続の一つとして「
企業の通常の取引過程から外れた重要な取引、又は企業及び企業環境に関する監査人の理解や、その他監査中に入手した情報を考慮すれば、
通例でないと判断される重要な取引について、
取引の事業上の合理性(又はその欠如)が、不正な財務報告を行うため又は資産の流用を隠蔽するために行われた可能性を示唆するものであるかどうかを評価すること」(31項)が挙げられています。かなり似ていますし、すでに必須の手続として挙げられているわけですから、付録で例示するまでもありません。(現行ルールで決まっているのになぜオリンパスの監査では不十分だったのかという問題はありますが・・・)
・「考え方」の(3)には、企業が想定しない要素の組み込みという項目がありますが、監査基準委員会報告書240では、不正への全般的な対応として「実施する監査手続の種類、時期及び範囲の選択に当たって、
企業が想定しない要素の組込み」(28項)がすでに挙げられています。
・「不正リスクに対応した監査のプロセス」という資料をみると、従来の監査の流れに追加して、「不正の端緒」の有無に従って、追加手続を行うことになっています。しかし、現行の「リスク評価手続(不正に関する評価を含む)」→「リスク対応手続」という流れでも、当然、不正による重要な虚偽表示の兆候があれば、それに応じて、リスク評価を変更し、変更されたリスク評価に基づいてリスク対応手続を実施するわけですから、わざわざ別のプロセスを追加するまでもないように思われます。
・全体として、現行のルールである監査基準委員会報告書240のどこが不足しているのかについての検討が足りないのではないでしょうか。新しいルールが必要というより、現行ルールの適用の問題が大きいと思われます。