日本郵政、グループ内で1.3兆円資本移動 上場準備で
日本郵政がグループ内で1兆3千億円分の資本を移動させるという記事。
「日本郵政が30日付で、傘下の
ゆうちょ銀行の株式を、ゆうちょ銀行自身に買い取らせる形で資金を受け取る。
7千億円は年金債務の処理に、6千億円は郵便局網への投資などに使う。年金債務は、1959年以前に勤めていた退職者や遺族ら約13万5千人の年金分。当時は共済年金制度がなかったために積立金がなく、日本郵政の大きな債務になっていた。・・・」
日本郵政は、その下にゆうちょ銀行や日本郵便などの子会社がぶら下がる形になっています。今回の取引は、ゆうちょ銀行が、自己株式の取得という形式で、その株主である日本郵政に資本の払い戻しを1兆3千億円分行うということになります。
日本郵政の単独決算では、もしかすると売却損益が生じるのかもしれませんが、連結では、連結グループ内の取引なので大きな影響は出ないはずです。
問題は、年金債務の方です。
日本郵政が年金債務7千億円処理 上場に向けて財務内容強化へ(産経)
「日本郵政が2015年秋が見込まれる株式上場に向けて、
国営の旧郵政省時代から積み増されてきた年金債務約7000億円を一括処理処理する方針を固めたことが29日、わかった。・・・
日本郵政は
郵政省時代の恩給を将来にわたって支払う義務がある。・・・」
日本郵政の決算公告(2014年3月期)をみると、退職給付引当金817,712百万円が計上されています。その会計方針の注記には以下のような記述がみられます。
「退職共済年金負担に要する費用のうち、逓信省及び郵政省(郵政事業に従事)に勤務し昭和34 年1月以降に退職した者の昭和33 年12 月以前の勤務期間に係る年金給付に要する費用(以下「整理資源」という。)の負担について、当該整理資源に係る負担額を算定し「退職給付引当金」に含めて計上しております。」
「退職共済年金負担に要する費用のうち、逓信省及び郵政省(郵政事業に従事)に勤務し昭和33 年12 月以前に退職した者の恩給給付に要する費用(以下「恩給負担金」という。)の負担について、当該恩給負担金に係る負担額を算定し「退職給付引当金」に含めて計上しております。」
「年金債務の処理」というときの「処理」の内容がはっきりしないのですが、引当金が正しく計上されていると仮定すると、ゆうちょ銀行から払い戻された資金を、年金支払いのための基金か何かに拠出して、引当金を取り崩すということなのかもしれません。
そうだとすると、損益にはあまり影響はなさそうですが、連結BS上では、ゆうちょ銀行の資産が減り、日本郵政の引当金が減るということで、恰好のよいBSに近づきます。(もっとも、両建て表示せずにうまく引当金を減らせるのかという疑問は感じますが)
自己株式取得に関するお知らせ(ゆうちょ銀行)
決算公告(日本郵政)(PDFファイル)