揺れる監査(下) なれ合い防ぐ決め手模索 監査法人の交代制も課題に
「揺れる監査」という連載の最終回。
監査報酬の問題、非監査業務制限・業務執行社員の交代制などこれまで行われてきた規制強化、監査人の交代制、監査法人の経営に外部の目を入れる話、などが取り上げられています。
監査報酬の具体例として、富士フイルムの監査人交代にふれています。
「「どうやら
かなり安い水準で受注したようだ」
6月に新日本監査法人との監査契約を打ち切った富士フイルムホールディングス。
新たに契約を結んだあずさ監査法人の監査報酬を巡るうわさが広がっている。
富士フイルムが前期、新日本に払った監査報酬は3億8400万円だった。今期のあずさへの支払いについて同社は詳細を語らないが「専門性や体制などを考慮して決めた」と説明する。」
うわさだけで議論はできないので、当期の有報(来年6月提出)でたしかめないと...。もし大幅にダンピングしているのであれば、問題でしょう。
監査報酬に関する全般的な状況は...
「業界内の顧客の奪い合いが影響して
監査報酬の伸びは頭打ちだ。上場企業約3600社の2015年度の監査報酬合計は2200億円強だった。前の年度より100億円ほど増えたのは
東芝が有価証券報告書の訂正などで40億円程度多く払った影響が大きい。
青山学院大学の矢沢憲一准教授は、
日本の監査報酬は主要31カ国中20位と試算している。「日本では監査が不正を防ぐ必要なコストだという意識が薄い」という。報酬引き上げへの機運が乏しいのは、監査法人自身が招いている側面がある。」
監査人の交代制については...
「金融庁は今年3月、監査制度について専門家が集まってまとめた
提言の中に監査法人の交代制を盛り込んだ。先例とした欧州では今年から
最長10年の監査法人の交代制を導入した。10年たってさらに監査を続けるためには公開入札が必要だ。」
住友商事CFOが交代制反対のコメントを寄せています。経済界だけでなく、会計士業界も反対論が強く、米国でも強制的交代制は導入の予定がないことなどを考えると、当面ないとは思いますが。
当サイトの関連記事(「会計監査の在り方に関する懇談会」提言について)
監査人交代制については、提言の中では両論併記のような書き方で、今後調査・分析が必要といっています。
「監査法人の独立性の確保を徹底する観点から、EU では、監査法人を一定期間毎に強制的に交代させるローテーション制度の導入が決定されており、
我が国においても有効な選択肢の一つであると考えられる。
他方、監査法人のローテーション制度については、監査人の知識・経験の蓄積が中断されることにより
監査品質が低下するおそれがある、あるいは、大手監査法人の数が限られている監査市場の現状を踏まえると、当該制度の円滑な導入・実施は
現時点では困難であるとの指摘もある。
このため、まずは諸外国の最近の動向も踏まえつつ、我が国における監査法人のローテーション制度の導入に伴うメリット・デメリットや、制度を導入した際に実効性を確保するための方策等について、金融庁において、
深度ある調査・分析がなされるべきである。」(提言より)