米WHの20億ドル請求、州最高裁が棄却 事業買収巡り
東芝の子会社だったWH社が2015年に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W社)の買収価格の調整をめぐって、WH社とCB&I社(S&Wの元親会社)が争っていた裁判で、CB&I社に有利な判決が出されたという記事。
「米デラウェア州の最高裁判所は27日、東芝(6502.T)傘下で破産手続き中の米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が原発建設事業の買収を巡り建設会社シカゴ・ブリッジ・アンド・アイロン(CB&I)(CBI.N)に
20億ドルの支払いを求めた訴訟で、
原告側の訴えを退ける判決を下した。
WHは2015年にCB&Iから同社の原発事業を買収。WHはその後、
CB&Iの過去の会計処理に問題があるとして、買収の最終合意額修正を要求した。
両社は
独立の監査人が合意額の修正について見直すことで合意しており、現在作業が続いている。
州最高裁はこの日の判決で、
過去の会計処理と監査の問題を結び付けるべきではないとして、WHの主張を認めなかった。」
この訴訟に関連すると思われる東芝の昨年のプレスリリースを見ると、昨年の7月には、WHは相手から訴訟を起こされており、遅くともその時点で、東芝巨額損失(2016年12月にそのおそれを公表)の原因となったS&W社の中身に問題があるということを、WHや東芝は把握していたものと思われます。20億ドルの支払いをいつから請求していたのかは、はっきりしませんが、たぶん、昨年7月以前から、WH社(当時は東芝子会社)側は、ひどい中身だから契約に基づき補填しろといって交渉していたのでしょう。
それなのになぜ昨年12月まで問題が明らかにならなかったのか不思議に感じます。タイミング的には、東芝の2016年3月期の決算作業中には、問題を把握していたのではないでしょうか。
もう一つ疑問に感じるのは、なぜWHは20億ドルしか請求しなかったのかという点です。東芝の巨額損失は、買収時点でS&W社の工事損失引当金が約6千億円分不足していた(その分のれんが過少計上だった)から生じたことになっていますが、それなら、6千億円を請求する必要があるように思われます(当初見積りが20億ドルでも、その後請求を増額すればよい)。
その差額は、S&W買収前からのWH側の損失だったのではないかという疑念が浮かびます。
なお、今回の判決は、WHによる買収前のS&W側の会計処理の問題を買収価格の調整に関わらせないというものであり、S&Wの会計処理に問題があったかなかったかについてはふれていないようです。
WH、原発建設の遅延コスト回収に痛手−州最高裁が下級審の決定破棄(ブルームバーグ)
東芝危機招いた買収巡る訴訟、WH敗訴 見通し甘さ認定(朝日)
Delaware top court rules for Chicago Bridge in Westinghouse dispute(ロイター)
Pittsburgh-based Westinghouse later sought an adjustment to the closing deal price by
questioning Chicago Bridge's historical accounting, which Chicago Bridge said amounted to an attempt to recut the deal.
Westinghouse and Chicago Bridge agreed that an independent auditor would review post-closing adjustments to the deal price, a process that is underway.
Tuesday's ruling will prevent Westinghouse from bringing to the auditor issues tied to historical accounting, which made up the bulk of Westinghouse's claim for $2 billion as a post-closing adjustment.
ウェスチングハウス社のCB&Iストーン&ウェブスター社買収完了プロセスに関するCB&I社からの訴訟提起について(2016年7月)(東芝)
この訴訟の件は、雑誌「世界」2017年3月号の「債務超過の悪夢−−東芝ウェスティングハウス原子炉の逆襲」という記事で会計評論家の細野氏が、比較的詳しくふれています。細野氏は、東芝の監査人が新日本・EYからあらた・PwCに交代した影響で、S&W社の正味資本が大きく毀損していると主張するようになったのではないかといっています。