「泥沼パワハラ」にフタをする大手監査法人と大手法律事務所の暗い結託
日本のPwCでパワハラ事件が起きていて、英経済紙フィナンシャル・タイムズでも取り上げられたという記事。
どのような事件か...
「問題はPwCグループの人事・総務・経理といったバックオフィス部門を統括するPwC Japan合同会社で起きた。PwCコンサルティング合同会社のパートナーである
堤裕次郎常務執行役らが2019年1月に米国へ出張した際の旅費精算に、部下が疑いを持ったことだった。
堤氏らは米金融機関が企業や投資家向けにサンフランシスコで開いたミーティングに参加したことになっていたが、このミーティングに参加資格がなく、実際に参加もしていなかったことが発覚。
週末バカンスを米国で楽しむための「出張旅行」だった疑いが持ち上がった。
これを指摘した女性社員のAさんに対して、堤氏は「会社が週末の経費を負担するかどうかは、どうでもいいことだ」と怒り、出張報告書の提出さえ拒んだ。PwCでの
Aさんに対する嫌がらせはここから始まった。人事評価の取りまとめ役として新しくAさんの上司となった永妻恭彦ディレクターは、Aさんが人事部から催促されていた業績目標設定に応じようとせず、昨年3月にAさんはPwCから退職勧奨を受けてしまう。」
事件は労働審判に持ち込まれ、昨年12月にAさんの訴えが認められたそうです。したがって、Aさんの主張は、いいがかりなどではなく、実体があったということでしょう。PwC側が審判結果に不服を申し立てたため、現在は裁判になっているそうです。
海外メディアの特集記事の中でもふれているそうです。
「6月1日のパワハラ防止法施行など、PwCはどこ吹く風で、同8日にAさんに対して解雇通知を突きつけ、「排除の論理」を貫こうとしている。この件は昨年11月20日付の英経済紙フィナンシャル・タイムズでも、「四大監査法人の隠れた不祥事」の事例のひとつとして報じられた(タイトルはBetrayed by the big four : whistleblowers speak out)。」
PwC元幹部のコメント。
「PwCの元幹部は筆者の取材に対し、こう言って眉をひそめる。
「近年PwCではグローバル・チェアマンのボブ・モリッツ氏や木村浩一郎 PwC Japan代表執行役のもとでESG、SDGsやD&Iなど、理念としては美しいメッセージをメディアに向けて活発に発信しているが、
対外的なメッセージと実態の乖離かいりが大きくなりすぎ、PwC社内では困惑の声が多く聞かれる。これでは監査法人としてガバナンス、内部統制や法令順守などの問題を、クライアントに対してけん制することが難しくなってしまう」」
この問題は、会計士協会や金融庁にも持ち込まれているそうです。
「PwCの
木村代表執行役についても
日本公認会計士協会が懲戒請求書を受理しており、5月にはAさんが自身に対するPwCの業績評価には問題が多いとして、
金融庁に公益通報を提出している。大手会計事務所と大手法律事務所が結託して問題にふたをするという構図にメスが入る可能性が高まってきたのだ。」
会計士協会や金融庁の監督対象は、会計士や監査法人ですから、グループ会社とはいえ、合同会社のパワハラ事件まで訴えられても、ややお門違いのような気もしますが...(監査法人と資本関係があれば別)。
Betrayed by the Big Four: whistleblowers speak out(FT)(読めない場合は、記事の見出しで検索すると、読めるページが出てくる可能性があります。)
日本のPwCの事件だけを取り上げているのではなく、世界各国のビッグ4事務所の事例を、20人の内部通報者へのインタビューなどにより書いています。
ビッグ4といえばきれいなイメージがありますが、組織構造的には、「経営者(パートナー)=所有者」で、株主など外部の監視がないという点では、中小企業と同じであり、また、報酬を多く稼いでいるパートナーが絶対的に偉い(パートナー未満とは身分差がある)という実力主義の意識も浸透しているので、どうしても、パートナーによるパワハラやセクハラは隠蔽する方向になるのでしょう。
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